表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
110/129

42-4.悪夢の一夜(4)

「ネイト様が倒してくれたの?」

「あぁ。俺の方はあらかたカタがついてな。セドリック殿が神殿の方へ向かってくれと言うから来てみれば、草むらからシェリルたちを狙っている者たちがいた」


 ネイトが早々に敵を見つけてくれてよかった。そうでなければ、この辺りの土地はぐちゃぐちゃになっていただろう。

 ……今も大概なのだが。

 しかし、被害は最小限に食い止められた。


「ギリギリまで殺気も感じなかったし、移動しながら矢を射るなんて無茶なことしてくるしで、手こずっていたの。土を泥にしてくれたのはネイト様よね? 助かったわ」

「あぁ。そっちの方が威力があるだろうと思ってな。……それにしても、土を波のように動かすなんて、とんでもないことをする」

「必死だったのよ」


 土だけでも彼らを倒せただろう。だが、土よりも泥の方が攻撃力は高い。泥に足を取られたら、動けなくなってしまう。そこへネイトの攻撃だ。ひとたまりもなかっただろう。


「弓矢使いは暗殺者だ。各国を渡り歩き、報酬次第で何でも請け負うプロだな。セドリック殿が対峙していたようだが、姿が見えなくなったと焦っていた」


 その暗殺者は、対象を神殿にいる女子どもに変更したのだろうか。

 神殿には、領主の妻と娘がいる。彼はシェリルとローザを人質に取り、セドリックを脅すつもりだったのか。

 妻と娘を殺しても、ターナー領は手に入らない。とすると、それしか考えられないのだが……。どこかしっくりこない。


「シェリル?」

「ねぇ、他の暗殺者たちはどうなったの?」

「俺やセドリック殿で倒したが……どうした? 何か気になることがあるのか?」


 他の暗殺者は、セドリックやネイトと戦っていた。それなのに、弓矢使いだけはこちらへ来た。彼だけ、何故?

 シェリルは、ネイトに自分の考えを話す。


「寄せ集めの集団で、統制は取れていなかった。率いているのはヘンリーだが、彼に戦いの指揮は無理だ。皆は好き勝手に動いていたと思うが」

「ヘンリー殿下は?」

「しょっぱなに抑えた。驚くほど呆気なかったぞ」


 聞けば、ヘンリーは大勢に守られていたそうだが、護衛たちは皆たいしたことはなかった。手練れの暗殺者でもいれば話は別だったのだが、彼らはヘンリーの護衛には加わっていなかったらしい。


「暗殺者は護衛などしないだろうと、あの時は思ったが……」


 ネイトは表情を引き締め、考え込む。彼も、なんとなく不自然なものを感じたのだろう。

 呆気ない、あまりにも呆気ないのだ。

 ──これで、本当に終わったのだろうか?


「ぎゅうううう~~~~~~!」


 二人が考え込んでいると、いままで聞いたことがないような鳴き声がした。

 きゅいだ。


「きゅい!?」

「シェリル、伏せろ!!」


 その声に、シェリルは咄嗟に地に伏せる。その次に聞こえたのは、何かが刺さる音、そして、小さな呻き、そして──


「きゅうううううう~~~~~~~~っ!!」


 けたたましい悲鳴。

 身体を起こし、シェリルは信じられない光景を目にする。


「あ……あ……」

「シェリル、きゅいちゃ……」


 きゅいの声に反応し、こちらにやって来たローザは、あまりのことに絶句した。


「ネイト様、ネイト様! 目を開けて! ネイト様ーーーーー!」


 ネイトが倒れている。その背には、鋭い矢が突き刺さっていた。


いつも読んでくださってありがとうございます。

いいな、面白いな、と感じていただけましたら、ブクマや評価(☆☆☆☆☆)をいただけますととても嬉しいです。皆さまの応援が励みになります!

どうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ