これはもう逃げられないかもしれない
「ゼツの〈ガンシャ〉より注目されるって……、ノエルのパンツは〈ガンシャ〉より破壊力あるニャンね……w」
ノエルは恥ずかしそうにもじもじしてから――。
「ゼツ君も見たい? ……パ、パンツ」
「うん!」
「真顔で即答ニャン!!w」
ノエルは頬を染めて、僕の耳元で囁く。
「や、野営のときまで我慢してね」
……ゴクリ。
「アッチ耳がいいから聞こえたニャン! アッチのも見せるから安心してねw」
「ティッシュは見せる必要ないでしょッ!」
最近いつも3人でやってるから見慣れてるけどな……。
ティッシュを仲間外れにするのは可哀相だとノエルが言うから3Pになってしまう。
「それじゃ僕はアナル達と話してくるから出発の準備をしておいて。 面倒くさいことになったけど、予定通り三人で20層を目指そう」
「うん!」「ニャン!」
◇
僕、アナル、アターシャ、パンティーは四人で話しをすることにした。
「つまり、私達を助けたのは自分だから、今回の件は見逃せ、ということですか……」
「はい。その通りです」
アターシャにそう答えると、アナルは冷たい目で僕を睨む。
「アターシャ様に無礼を働いた件とあたくし達を助けた件は別件なのに――、恩着せがましい人ですねぇ。坊っちゃんがそこまで器の小さい男だとは思っていませんでしたよ。 はぁー、残念ですねぇ」
くっそ、アナルめ。これは僕とアターシャの問題なのに。
「アナル様の意見は最もですわね。先程のように逃げたりしたら王都の警ら隊に依頼して、犯罪者として指名手配しますわよ?」
澄ました顔で言うアターシャ。 ……完全にマウントを取られている。
そんなことになったら、ビッグベニス王国で冒険者を続けることができなくなるな。
アターシャは続けて、
「お聞きしたいのですが、あなた方は何故この13層にいるのですか? 冒険者ギルドの情報では4層より先へ行く者はいないとのことでしが……」
「ミスリルを取りに行くからです」
「ッ!? ゼツ様は20層のミスリルゴーレムを倒せると?」
驚いたパンティーが僕を見詰めながら聞いてきた。アターシャも強い視線で僕を見詰める。
二人の表情には期待が込められているようにも見える。
そう言えばパンティー達はファニーさんを知っているんだよな……。
「僕ならミスリルゴーレムを倒せるとバイブ武具店のファニーさんに言われたので……」
「「「…………ッ!」」」
「それ、本当ですの?」
「はい」
「あたくし達は10層より先へは行くなと言われましたねぇ。クスクス」
「あの方ができると言うのなら、できるのでしょうね……、信じ難いですが……」
アターシャは顎に手を当て思いに耽る。
ファニーさんってそんなに発言力があるのか……、見た目も中身も子供だと思っていたが。
「あの、ファニーさんって何者なんですか?」
そう言うと、パンティーは眉間に皺を寄せた。
「ゼツ様、そんなことも知らないんですか!?あのお方は勇者ビッグベニスのパーティーメンバー、〈聖剣ポルチオクラッシュ〉の生みの親、
――――世界最高の刀匠、ファニー・キャロン様です」
「あっ!……そうだよ。思い出した!」
ファニー・キャロンとは世界最高の刀匠の名前だ!あんなに質素で寂れた店にいたから気付かなかった。
実は滅茶苦茶凄い人だったのか……ッ!
ファニーさんにミスリルで武器を作ってもらったら伝説級の武器になるんじゃ……。
僕がそんなことを考えている間、三人は顔を合わせ、コソコソと話し合っている。その声が僕にも聞こえてくる。
「この方を連れて行けばミスリルゴーレム討伐の実績を積めますわね。王都に大手を振って帰れますわ。ニヤリ」アターシャ。
「こき使いましょう。扱かれ苦しむ坊っちゃんの姿は興が乗りますよ。クスクス」アナル。
「欲情して私のことを襲うかもしれませんね」真顔でパンティー。
これはもう逃げられないかもしれない……。
「ところでゼツ様、先程ロックワームの核だけを破壊していたように見えましたが、どうやって核の位置を見極めているのですか?」
「それは――――、」
ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!
僕がパンティーに答えようとしたとき、岩が擦れる音が聞こえた。
誰かが叫ぶ。
「ロックワームだぁああああッ!」
【ティッシュ視点】
ティッシュは顔馴染みのポーター仲間と集まり雑談をしていた。
若いポーターの男が嘆く。
「経験値も金も全く稼げない!最悪だよ。騙された。こんなんじゃ1層で狩りをしていた方がましだった」
「ああ、全くだ。金貨一枚貰えればいいが、難しいだろう。何が勇者パーティーだ。ふざけやがって」
ポーター達の顔は暗く疲労が見て取れた。
「はぁー、ティッシュさん、街に戻ったら銀貨2枚でやらせてくれませんか?」
ティッシュは冷めた目でそっぽを向く。
「んー、無理ニャンね。アッチ今回の冒険が終わったら娼館辞めるニャン」
「どうして? いつもお金に困ってるいのに?」
「今回の冒険で暫く働かなくてもいいくらい稼いだニャン」
男はティッシュをバカにしたようにクスクスと笑う。
「それは流石に嘘ですよね?そんなに稼げるわけないじゃないですか」
さらに他の男も。
「お前は嘘を付くようなヤツじゃなかったが、それは信じられんな」
「うーん、………ほら、これ見るニャン」
ノエルを引き取ったときに出張風俗店のおばちゃんからもらった肩掛けバッグをティッシュが持っている。
ティッシュはその中身をポーターの男達に見せた。
中には親指程の金塊がゴロゴロと大量に入っていた。男達はそれを見て絶句する。
「「「……ッ!!」」」
「これ換金したら金貨650枚くらいになるニャン」
「凄い……、でも、あの人が倒したんだろうから、ティッシュさんの取分は少ないでしょ?」
「アッチの取分は3割だから金貨200枚くらいかな」
「「「ええええええッ!」」」
「これで実家にもたくさんお金送れるし、当分働かなくても生活できるニャンね」
男達は驚愕しながらバッグの中身とティッシュを交互に見ている。
「何でモンスターを倒してもいないのに、そんなに貰えるんですか!?あり得ないでしょッ!」
ティッシュを誘った若い男が顔を赤くして強い口調で言う。
「これ全部ロックワームにゃんけど、アッチも100体くらい倒したニャン。 レベルも32になったし」
「そんな話し、信じられませんよ!ティッシュさんがロックワームを倒せるわけないじゃないですかッ! それに1年頑張ってもレベル5から上がらないって言ってたのに、それが僅か数日で32ッ!? バカバカしい!」
「そうだぞ。こいつはレベル8、俺だって12だ。そんなに急に上がるはずがない」
「わかりました。じゃぁ銀貨3枚払いますから、やらせてくださいよ!」
その時――――。
ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!
「ロックワームだぁああああッ!」
【ゼツ視点】
パンティーが不安気に言う。
「どうしましょう。もうMPも殆ど無いのに……」
ロックワームは一体。さっき撃ち漏らした個体が時間を掛けて再生したのか。
「丁度いい。パンティー姫、先程の答えだが、僕はスキルでロックワームの核が見えるんだ」
そう言いながら立ち上がる。
「アクティブスキル〈ガンシャ〉ッ!
――――種転送〈種強化Lv5〉ッ!
――――アクティブスキル〈Gスポット〉ッ!」
僕の手に〈ガンシャ〉が顕現し右目の瞳には”G”の文字が浮んだ。
「ゼ〜ツ〜〜ッ! あのロックワーム、アッチが倒していいかニャン!?」
少し離れたところでティッシュが僕に手を振っている。横にいるポーター仲間が「ティッシュさん危ないですよ」とか言ってるな。
「ティッシュ!頼んだッ!」
「わかったニャン」
僕は透けて見えるロックワームの核に”種”を当てないよう狙いを定めて撃つ!
ドピッ!ドピッ!ドピッ!ドピッ!ドピッ!
胴体を残すと、ティッシュに攻撃してくる可能性があるから、5発撃ち込んでロックワームを粉々にした。
そして無傷の核が地面をコロコロと転がる。
ティッシュはのんびり歩いて核に近付くと、ノエルのナイフで核を真っ二つ割った。
ロックワームは黒い霧になって四散し、親指程の金塊が落ちる。
「やったッ!またレベルが上がったニャン!w」
ポーター仲間からは驚きの歓声が起こった。
「「「「えええええええッ!」」」」
「アッチ、好きな人ができたから他の人とは、もうそういうことしないって決めたニャン」
ティッシュが若いポーターに何か言っているようだったが、僕には聞き取れなかった。




