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ティッシュ加わる


 ティッシュと一緒に後詰ごずめでギルドから出て行こうしていた大きな荷物を背負ったポーターの男達が一連のやり取りを見て助言してきた。


「ティッシュさん、栄光ある勇者様のパーティーを抜けるなんてもったいないよ」

「そうだぞ。これからダンジョンで大成果を上げられるというのに。こんなチャンスは滅多に無い」

「しかも、彼等……、木プレートの冒険者ですよ。アナル様に謝りましょうよ」


 このパーティーは全部で40人くらいいるようで、荷物持ち専用のポーターと思われる人だけで10人くらいいる。


「ほんとニャン。お客、木プレートニャン。アッチは鉄プレートだからアッチより下ニャンねぇ。にひひひ。 でも……、アッチのパッシブスキル〈勝負の勘〉がこの人に付いて行った方が数倍良いおもいができるって教えてくれるニャン。アッチどんなにあり得ない状況でも、自分の”勘”には逆らわないようにしてるニャンよ」


 確かにあり得ない状況だ。勇者パーティーと木プレート冒険者パーティー、どっちに入りたいか聞かれたら、普通なら誰もが前者を選ぶ。


 しかし彼女が【HNギャンブラー】ならこれから行くダンジョンでかなり役立つな。


「アナル、ダンジョンに行くなら彼女が抜けると困るんじゃないのか? 彼女の加護は重宝する。 うちのパーティーに入ってくれるなら入れたいが……」


「いえ、問題ありませんよ。こちらには空間探知に長けた加護持ちが2名おりますから。そちらの方はその2名が戦死した場合の保険で雇いました」


 アナルは抜けたいなら抜ければ、といった様子だ。ティッシュのことを重要視していないのだろう。


「う〜〜〜ん、でもアッチ、金貨5枚持ってないニャン。どうしよう……チラッ、チラッ」


 ティッシュは腕を組んで唸ったあと、困り顔で僕をチラチラ見てくる。


「ねぇ、ゼツ君。 お金、払ってあげようよ。冒険から帰ってきた後で、今回の報酬から引けばいいんじゃない?」


 横からノエルがニコニコしながら朗らかに言う。


 金貨5枚はかなり大金だが、今回の冒険で金貨1000枚くらいは余裕で稼げるとノエルに言ってあるから、彼女の心のふところは大きくなっている。


 うーん。確かにそうだなぁ……。


 さらにノエルが――、


「ティッシュさんから色々聞きたいし、昨夜のこととか、……ね?」


 あれ?よく見たら、ニコニコしているけど目が笑っていない?

 ギルドの奥から「修羅場Lv7ですッッ!!」と叫び声が聞こえたような気がしたが気のせいだろう。


「ティッシュ、僕はゼツだ。金に関してはこの子が言った条件でいいか?」


「私はノエルです」


 ノエルは笑顔で首を傾げた。しかしよく見ると目が笑っていないようにも見えるが……、気のせいだろう。


「それでいいニャン!ゼツ、ノエル、宜しくね♪」


 ティッシュは笑顔で答える。



 僕はアナルに金貨5枚を手渡す。

 金を受け取りながらアナルが僕の耳元で囁いた。


「5年前、リンダナ侯爵閣下は坊ちゃんが賊に襲われ死亡したとおおやけに発表されました。あたくし一存で内密に貴方を奴隷商に売ったのです。……これからどうされるかは坊ちゃんにお任せします。クスクス」


 アナルは金を受け取るとすぐに身を翻す。


「遅れるわけにはいきません。さぁ皆様、行きますよ」


 アナルの号令で後詰ごずめのポーター達はぞろぞろとギルドを出て行く。


 アナル……、どういう意味だ? 父上は僕が死亡したと発表した。つまり僕を始末しようとしていたってことか? なら何故お前は内密に僕を奴隷商に売った?






 これから僕達はダンジョンへ向かう為、冒険者ギルドで登録を済ませる。

 ダンジョン〈渇きの砦〉は街中にあり、この冒険者ギルドから徒歩2、3分の所に入り口がある。


 僕は150キロくらい荷物が入った自分の体よりも大きなリュックを背負っている。ダンジョン探索は長くて20日を想定していたからその分の食料や水、消耗品、キャンプ道具が入っているのだ。


 ただティッシュが加わったことで日数は大幅に短縮されはず。



「「はぁああああ? に、20層ッ(ニャンッ)!?」」


 そう大声を上げたのは僕達の受付をした陰湿なギルド嬢とティッシュ。


 20層に行くと聞かされた受付嬢は早口で捲し立てる。


「昨日大金を換金したからって調子に乗りすぎですよ。これだから素人は。ダンジョンは階層を進むごとにモンスターが強くなるんです。レベル40の冒険者だって、3層からはC級モンスターがちらほら出現するから、それより先に行かないのに、つか4層に行く冒険者なんてここ何年もいなんですよ。そんなことも知らないんですか?はぁー、たく勝手に死ぬのは自由ですから止めないですけど、まぁどうせ行けないだろうし………………。って話し聞いてます?」


 早口過ぎて半分くらいしか聞き取れなかった。


「安全には十分気を付けます」


「まぁ、精々気を付けてください」


 呆れた顔で手をヒラヒラさせる受付嬢に一礼して僕達はダンジョンへ向かった。


「アッチ、やっぱり抜けようかなぁ」と呟くティッシュをノエルが「ゼツ君がいるから大丈夫だよ」と言ってなだめていた。





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 パーティーメンバーの装備。



【ゼツ・リンダナ 17歳】


〈服装〉

 焦茶のズボンとベスト、白いYシャツ。パコウシの皮でできた茶色いブーツ(ノエルとお揃い)。木プレートのネックレス(ノエルとお揃い)。


〈武器〉

 腰に革ベルトで”刀”を装備。バイブ武具店で購入、金貨2枚。


※ファニー・キャロンは東倭国とうわこくで長い間、刀鍛冶の修行をしていた為、そこで学んだ技術で作られている。



【ノエル・ローター 15歳】


〈服装〉

 マラシルクの白いブラウス、グレーのミニスカート、黒のニーハイソックス、ベレー帽。パコウシのブーツ。合計金貨27枚


〈防具〉

 皮をなめして作られた軽鎧、胸の部分は金属。籠手と膝当て(革製)。

 バイブ武具店で購入、金貨2枚。


〈武器〉

 ダマスカス鋼のナイフ〈斬鉄Lv14付与〉を革ベルトで腰に装備。バイブ武具店で購入、金貨20枚。

 ”クナイ”〈斬鉄Lv10付与〉太腿に革ベルトで固定、両足に2本ずつ装備。スカートの下に隠れている為、抜くときにパンツが見えそうになるのがポイント。

 バイブ武具店で購入、4本で金貨20枚。



【ティッシュ・ポケット】


〈見た目、服装、防具、武器〉

 ショートパンツに引き締まりくびれたウエストとヘソを出した長袖のシャツの上から軽装の皮鎧を着ている。褐色の肌と獣人だけあって猫耳と猫尻尾が特徴的。武器は短剣を腰に装備している。



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