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ファニー・キャロン


 勇者!?勇者がこの街にいるのか!?


 世界で100年に一人誕生すると言われている【SR勇者】がこの街にいる。僕も勇者を見てみたい。


 〈加護の儀〉を受ける前は僕も勇者に憧れたものだ。いや、僕だけじゃないだろう。


 各地に残る勇者の英雄譚。


 何処何処でこんなに凄いA級モンスターを倒しただとか、さらに凄いS級モンスターを倒したなんて、伝説や御伽噺、吟遊詩人の唄が世界中に蔓延っている。


 〈加護の儀〉を受ける前の子供なら、もしかしたら自分が………、なんて妄想は誰でもするはずだ。

 しかし、たいていがレアリティ【N】や【NH】の加護を授かり、まぁこんなものかと腑に落ちる。


 この王国だって170年前に勇者ビッグベニスが建国した国だ。そしてここスクワードは勇者ビッグベニスゆかりの地。

 彼の勇者はこの地にあるダンジョンで仲間達と共に何年もレベル上げをした。そうした彼の行動でこの地に人が集まり街ができた。


 そして勇者は『最高の仲間』を意味する言葉――、スクワードとこの街に名前を付けた。

 勇者バイブ・ビッグベニスはここスクワードで、最高の仲間達と共に数々の冒険をしたのだろう……。



 僕が想いに浸っていると――、


「おい!ボウズ!お前の加護はなんだ? その若さで、このレベルはありえない! 勇者でもそこまで強くならないぞ!」


 どうする。加護を明かすべきか……。


 この人はエルダードワーフ。 今後の武具調達を考慮するなら絶対に関係を築いておきたい。

 だけど僕の加護を知ったら僕を嫌うかもしれない……。かと言って嘘を付くにも、この高いレベルを誤魔化すことができない。


「大丈夫だよ。 ゼツ君の加護はかっこいい。だから絶対に大丈夫」


 ノエルは真摯に僕を見詰めている。その言葉で決心がついた。


「僕の名前はボウズではなくて、ゼツ・リンダナと言います。この子はノエル・ローターです。 それで……」


 僕は一度深呼吸をした。

 今まで加護をバカにされ続けたせいで加護を口に出すことを体が拒むが、それでも僕は僕を褒めてくれる子の前でかっこ悪い姿を見せたくなかった。


「僕の加護は【MR無責任種付おじさん】です!」


 少女の眼が点になる。


「へ? いやいや、嘘を付くな! だいたい【MR】なんてレアリティ存在しないだろ!」


「ほ、本当ですよ!」


「ならステータス光を見せてみろ!」


「ステータス光は他人に見せるものではない。それが常識だと思いますが……」


「えっ?そうなの?」


 横でノエルが驚いている。


「私いつもゼツ君に見てもらってたけど……、まぁでもゼツ君ならいいか」


「ふんっ! アタイは口が固い!それに誰がお前のステータスなんぞ知りたがるか!調子に乗るな!」


「いや、貴女が凄く知りたがってるじゃないですか……」


「むむむっ! もういい、帰れ! 見せてくれないならお前達に武器は売らん!」


 店主は頬を膨らませそっぽを向いてしまった。

 見た目は子供でも中身は大人だと思っていたが、そうではないようだ。


 エルダードワーフが住む島国は鎖国を行っていて外国と貿易をしないどころか、国内に入ることもできないと聞いたことがある。


 市場にエルダードワーフが作った武器が出回ることはないが、もし出回ったら先程のダマスカス鋼のナイフでも白金貨2枚はくだらないだろう。何故ならこういった特定の産地でしか作れない品は商会や商人の間を渡り歩くだけで、値がどんどん釣り上がるからだ。


 確かにこの子の言う通り、僕のステータスを知りたがる人なんてめったにいない。

 良い武具を安く手に入れる為だ。背に腹は代えられない。


「ああ、もう!わかりましたよ。ほら、これです。嘘じゃないでしょう?」


 僕はステータス光を顕現させ少女に見せる。


■■■■■■■■■■■■■■

【MR無責任種付おじさん】

Lv 201

⑤HP 16047

⑤MP 16047

⑤ストロングス 16047

⑤アジリティ 16047

⑤インテリジェンス 16047

〈アクティブスキル〉

*********

〈パッシブスキル〉

*********

■■■■■■■■■■■■■■


 少女は僕のステータス光を覗き込んだ。


「ほえええ!本当だよ……。 つか、成長率が全部⑤っておかしくない? 勇者でも④とか③もあるのに……」


 加護をバカにされると思ったけど、そんなことはなさそうだ。

 と言うかこの人、勇者のステータスを知っているのかな?


「勇者のステータス光を見たことがあるんですか?」


「まぁな……。 ボウズ、歳は?」


 少女は僕のステータス光に釘付けになりながら話す。

 勇者のステータス、どこで見たんだろう?


「17歳です。 あと、僕の名前はゼツです」


「えっ、17っ! くそガキじゃないか!?」


「そういう貴女は何歳なんですか?」


「ふんっ! 女性に歳を聞くなんて失礼な奴だ! 教えてやらん!」


 そうか、一応女性だった。まぁ別にそんなに興味ないし教えてくれなくてもいいですけど……。


「なんて嘘だ、教えてやる!」


 って、教えてくれるのか!


「聞いて驚け!アタイは198歳だ!」


「「えええええええっ!?」」


 僕とノエルは同時に驚いた。

 198歳!長寿の種族だとは聞いていたが、そこまでとは。


「お、驚きました」と僕。


「198歳は凄いですね。見た目はこんなに可愛いのに……」とノエル。


「そうだろう」と鼻の下を指で擦り口元を緩ませる少女。いや、女性?


「これで貴女の武具を売ってもらえますか?」


「ファニー・キャロン……、アタイの名前だ」


「ファニーさん、それでどうなんですか?」


「売ってやる! それとアダマンタイトかミスリルの武器が欲しいと言っていたな? ダンジョンの20層にいるミスリルゴーレムを倒せば、ミスリルをドロップする。アタイが取りに行ってもいいが、最近戦うのが億劫でな。 ボウズ、あっ、いやゼツ! お前のステータスなら倒せるはずだ。ミスリルを取って来たら、それで武器を作ってやるよ!」


 ミスリルの武器が手に入る!

 使うのはノエルだが、これからA級やS級のモンスターにとどめを刺す為には必要な装備だ。


 って、あれ? ミスリルゴーレムってA級モンスターだったような……。






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