純粋な怒り
「お前ら! なにやってるんだ!」
『だってこのろくでなしが!』
『ろくでなしとはなんだ短足!』
『また私の事を短足って言ったわね‼』
「だからやめろミー! 陛下の前だぞ! お前も自分の従族を止めろ」
言われて思い出した。そうだ。ここ王様の目の前だった。
王様の機嫌悪くして、オパールが殺されたらそれこそ最悪だ。
「はい、ダリアそこまで!」
『離せ! カヤ! 俺様はあの短足に躾をしないといけないんだ!』
「はいはい。あとで思いっきりブラッシングしてあげるから落ち着いてね」
ブラッシング。その言葉に、暴れていたダリアがピタッと止まる。
知ってるんだぜ、ダリアが私のブラッシング好きなの。
「今回は特別サービスで喉元マッサージもつけますぜ、お客さん」
『……しょうがないな! 今回は特別に俺様が折れてやろう! 俺様の寛大な心に感謝しろよ。け、決してブラッシングをして欲しいからじゃないからな!』
「うんうん。ダリアは偉いね」
ダリアを撫でながら、私は内心細く笑む。
ふっ、勝ったぜ。
どうやらクレスの方のカワウソちゃん(たしかミーちゃんだっけ? 名前もキュートだな)を落ち着かせることに成功したみたい。今は王様に向かって片膝をついて頭を垂れていた。
「私の連れが大変失礼いたしました」
「良いぞ。久々に面白いものが見れたからな」
あれ? 思ったよりも王様寛大じゃない?
「えっと……王様」
「初めてだな。カヤ、我はエスイル第26代目国王、ボーデンだ」
「お初にお目に掛かります陛下! 私は狭山華夜と申します!」
気付いたら王様に向かって九十度直角に体を曲げて挨拶をしていた。
おおお、王様の迫力がヤバイ。自己紹介されただけなのに、威圧感が半端ないんだけど。
あれか、頂点に立つ者の威厳か。
「そんなにかしこまらなくていいぞ。他の世界から転移してきた者」
「え! なんで知って……まさか、クレス。喋った?」
「僕は数ヵ月ぶりに陛下と会っている」
なら、なんで余計に王様は知ってるんだ?
首を傾げてたら、笑い声と共に答えが返ってきた。
「我の部下に先を見通せる力を持つ者がいてな。その者は特に異世界から来たものに関しての未来を視るのが得意なのだ」
「成程」
ゲームで言う未来視みたいな特殊能力を持ってる人がいるんだな。
私も未来予知とか一回やってみたいんだよね。
「転移者も転生者も国にとっては宝。来られた際は丁重にもてなすのだが、まさか穢れを一緒に来るとは」
穢れという言葉に嫌な引っかかりを覚える。
「まさか、オパールの事を言ってますか?」
「あんな穢れに名前を付けているのか」
やっぱり、オパールの事だ。けどそれが分かった途端、こみ上げてくる何かがあった。
すぐに正体は分かった。純粋な怒りだ。
「穢れって、オパールは良い子だって言ってるじゃない!」
「竜族は崇める対象であって、共に過ごせる相手ではない。それに竜族が街に降り立つときは大抵厄災を招く。これを穢れと言わずなんという」
「オパールは違うんだってば!」
私は怒りに任せて叫んだ。
もう、なんで分かろうとしてくれないのよ!
「オパールを他の竜族と一緒にしないでよ! あの子は賢いし、優しいし、良い子だし、もふもふだし、もふもふだし‼」
「……もふもふが重要なのか」
「なに言ってるの超重要じゃないですか! むしろそれ無くしてなんと言う!」
どやっていしたら、なんか冷たい空気が流れた。
……辛い。




