カワウソ
石肌がむき出しの壁。じめじめと湿った空気。かび臭い硬いベッド。天井近くにある小さな窓。男の人の腕位ありそうな鉄格子。
ザ・牢屋。そんな所に私はいるぜ!
「だせやこのやろー!」
鉄格子を掴んで叫ぶ。
実は一回やってみたかったりする。なんかさ、時代劇とかでよく見るからさ。ちょっと興味本位で。
けどさ。そういうのはフリで一回やる位がちょうどいいんだよね。
「本当に入れられるのは流石にないよ……」
全く反応ない警備隊の人に肩透かしを食らいながら、床にしゃがみ込む。
ダリアもオパールも別室に連れて行かれちゃったし。 私一人じゃ、徹夜と社畜は出来ても外に出る事は出来ない。
後に分かったんだけど、さっきの人たちは王都の警備隊の人たちだった。変な気配がしてその場所に行ったら、厄災って言われる竜族に乗った私が見えてびっくり仰天で少し手荒な方法で拘束しちゃったとか。
ちなみにクレスの冒険者ライセンスは取り上げられてしまった。おつかいも出来ないなんて、幼稚園児以下じゃん私。
「ど~しよ」
ふと見上げると、茜色に輝く光が見えた。どうやらもう夕暮れ時みたい。
アルバさん、心配してるかな。ダリアとオパールは無事かな。
「なんか寒いな……」
抱きしめるように両腕で自分を抱きしめる。
こっちに来てから常に誰かが近くにいたから、久々の一人は結構クるものがあった。元の世界じゃ当たり前だったはずなのにね。人肌恋しくなっちゃう。
「誰でも良いから来てくれないかな……」
できればもふもふ毛の子希望で!
『クレス、いたわよ。この子でしょ』
「ん?」
体育座りしながら顔を埋めてると、聞いたことのない声がして顔を上げる。
なんか凛とした女の子みたいだったな……。
『ちょっと、なにしょげてるのよ。レディは常に胸を張っていなきゃダメでしょ』
「……」
『な、なによ』
「カ」
『か?』
「カワウソだぁぁっぁぁぁあああああああああああああ‼」
『な! なによいきなり大声出して!』
ほわぁ~! カワウソ! カワウソ! 水族館でしか見たことなかったけど、とてつもなくかわいい!
もふもふかは触ったことないから分からないけど、触らずに判断するのはもふり隊隊長としてあってはならぬ事!
では、いざ尋常に。
「もふもふの刑じゃああああああああああああああああああ‼」
『ちょっ! きゃあぁぁ!』
「思ったよりもふかふか! おお! おお‼」
『ちょっと! レディならもう少しおしとやかにしなさい!』
「こんな可愛い子を前にして無理!」
『かかか、可愛いって! なに言ってるのお馬鹿さん‼』
けしけしと足蹴りされるけど、人肌ならぬモフ肌恋しい私にはただのじゃれ合いにしか感じない。
神は私を見捨ててはいなかった――。




