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ド忘れ

「どちらにせよ。ライセンスをクレスさんに渡すだけはしないとね」


 そのためにここに来たんだから、そこだけは譲れない。


「ごめんね。オパール」


「ぎゃう~」


 しょぼんと項垂れるオパールをなでなでする。


 なんか私の方が悪いことをしてる気になってきた。


「オパールはここに残る?」


「……ぎゃう!」


 ぽんっという音と共に小さいサイズになるオパール。どうやら付いてきてくれるみたい。


「早めに帰ろっか」


 初めての王都だから色々と見て回りたかったけど、オパールの異様な拒否反応と今も震えている姿を見ると長居は無用。


 自分の好奇心よりも家族の意思の方が大事だからね!


「さてと、行きますか!」


 そう声を上げ、足を踏み出した瞬間。



「動くな」



「え?」


 鋭い声とひんやりとした感触を首にあたる。恐る恐る視線を下げた私の目に映ったのは、鈍く光る刃。


 どくんと心臓が大きな音を立てるのが嫌でも分かった。気付いたら、周りに背後と同じように刃を持った人が敵意をばんばん出しながら私たちを見ている。


 なにが起きたのか。なんでこうなってるのか全く分からない。


「あの……あなたたち、誰ですか?」


「怪しい奴に名乗る名などない」


「はい?」


 怪しい。確かに背後の人は怪しいと言ったよね?


 今さっき森に降り立ったばかりの私たちをとっ捕まえてあやしいってどういう事よ。


「あなたたちの方がよっぽど不審者じゃない!」


 顔にまで布まいて! 一般人を刃で脅して!


 ほら、やっぱり私たちよりもあやしい!


「私はただ、クレスさん……は愛称だ。えっと。本名は……」


 なんだっけ? なんだっけ!? ああもう! パニックになってるのか余計思い出せない。


「うんと、えっと……あ! そうそう! クレプクプクさんに冒険者ライセンスを届けに来ただけだもん!」


「……」


「……」


『それ、絶対に名前違うだろ』


「私も思った……!」


 思わず顔を手で覆う。


 なんであの人、あんなに名前長いのよ! 私横文字覚えるの得意じゃないのに!


「竜族に乗っていたという報告もある。この白いのが竜族……か?」


「記述で聞いた事はあるが……まさか、こいつ人間に化けた竜族なのか」


「え!」


 竜族が人に化けた云々より、なんでこの人たちは私がオパールに乗って来たって分かったのかの方が気になった。


 だって、オパールには視界妨害の魔法が掛かっていた筈。アルバさん曰く、並みの術者でも解くことは難しいって聞いていたのに。


「知らないのか? 王都からこの森までは異種族可視化の結界が貼ってある。阻害魔法など効く訳ないだろ」


「……うそ」


 もしかして、森に降りる間に感じた静電気って……魔法を無理矢理解除された証だったんじゃ。それをオパールは感じたから、帰ろうと必死に急かしてた。


 ばらばらだったパズルのピースが一気にはまっていくのを私は感じたけど、気付くのが遅かったのも感じていた。


「お前たちを拘束する。抵抗したら……分かってるな?」


「……」


 渋々と頷いた。


 まさか、こんなことになるなんて……。


 アルバさんの心配をつっぱねてた私も悪かったけど、一番の要因はライセンスなんて大切なものを忘れたクレスさんだ。


 八つ当たりに近いけど、どこかにあたらんと気が済まん!


 もう、クレスさんにさんなんていらない。呼び捨てにしてやる!


「クレスプクロのばかぁ!」


 叫んだ後に気付いた。


 クレスの本名言えたんじゃない?


「今更言えたって意味ないんだよ! 私もばかぁー‼」


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