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辺境の廃塔で水とリンゴだけの生活→気づけば獣人美女が集まり、小さな町に!? 〜異世界スローライフ&街づくり〜  作者: 星海凡夫


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第13章 ~最初の焼き上がり~


匂いで目が覚めた。


昨日の湿った土の匂いじゃない。冷たい灰でもない。リンゴでもない。何か新しいものだった——甘くて青い香りが、まるで朝そのものが俺を訪ねてきたみたいに、寝室の窓から入ってくる。


裸足で立ち上がり、温室へ向かった。


カブの芽は大きくなっていた。タマネギはもう針には見えない——今や、据え付けられたばかりのガラスの天井を指す小さな緑の槍だ。でも、注目を引いたのはそれじゃなかった。


鉢だ。


古代の種の鉢。


一本の緑の茎が、夜のあいだに土を突き破っていた。細くて青白く、虫の翅のような二枚の小さな葉をつけている。かすかに輝いていた——塔の青い光じゃなく、それ自身の緑で、まるで自分自身の発光を持っているかのように。


記録がそばに浮かんでいた。


『塔の記録』

未知の種子:発芽を確認

種族を分析中…照合可能なデータがありません

仮称:「光り草」として登録しますか?


「光り草——か」と俺は膝をついて呟いた。「お前、芽を出したな」


小さな植物が、風もないのに揺れた。たぶん、温室の中の空気が動いただけだ。でも、挨拶だと信じたかった。


レナが戸口に現れた。


「変な匂い」と彼女。

「謎の植物だ。芽が出た」


彼女は近づき、小さな茎を見つめた。


「光ってる」

「そう」

「それ、普通じゃない」

「ここは何もかも普通じゃない」


レナは指先で鉢の縁に触れた。植物は少しだけ輝きを増した。


「これ、何?」

「塔にもわからない。でも『光り草』として登録したがってる——ヒカリグサ、だいたいそんな意味だ」

「伝説の名前みたい」

「たぶん、そうなんだろう」


二人で植物を見つめた。それは小さく、脆かった。でも生きていた。そしてそれは、当面のあいだ、十分だった。


「パンを作る」と俺は宣言した。


レナは片眉を上げた。


「あなたが?」

「お前が料理するのを見てた。角度を学んだ」

「パンに角度はない」

「何かあるはずだ。見つける」


厨房は中庭からの光で明るかった。ミリが持ってきた小麦粉は陶器の壺にしまってあり、植物油がその隣にある。俺たちには酵母がなかった——ミリは次回の訪問で約束してくれた——でもレナが、辺境の民の中には無発酵の平たいパンを作る者がいると言っていた。小麦粉と水と油と塩だけで。


「膨らまないわよ」と彼女は警告した。

「膨らまなくていい。食えればいい」

「それは悲しい目標」

「現実的な目標だ」


小麦粉を泉の水と一つまみの塩と一筋の油で混ぜた。生地を捏ねるのは見かけよりずっと難しかった。粉は指にくっつき、水は逃げ、油は水たまりを作る。レナは腰掛けから見ていて、耳は面白がると苛立ちのあいだを行ったり来たり。


「やり方がまちがってる」

「なんでみんな、いつもそう言うんだ?」

「本当だから」

「今回の失敗は何だ?」

「レンガの生地みたいに捏ねてる」

「どう捏ねるべきなんだ?」


彼女は立ち上がり、ごくわずかに跛を引き——脚はほぼ癒えていた——俺の隣に陣取った。断りもなく、生地に両手を突っ込み、作業を始めた。しっかりとしたリズミカルな動き。折っては押し、折っては押し。


「こう。落ち着いて。生地は応える」

「生地が応える?」

「厨房にあるものは全部応える。火も、水も、生地も。無理に扱うと、焦げたり、水浸しになったり、硬くなったりする」


彼女の手が生地の上で動くのを見つめた。森で生き延びてきた者の手だった——指の節に小さな傷跡、手のひらにタコ——でも動きは繊細で、ほとんど優しかった。


「お前、料理が好きなんだな」と俺。

「『好き』が言葉かどうか、わからない」

「じゃあ何だ?」

「厨房は、私が与えられないものを何も求めない。序列がない。期待がない。ただ……作るだけ」

「それは好きってことだ」

「たぶん」彼女は俺を見なかった。「考えたことなかった」


彼女と一緒に捏ねた。粉まみれの手が時折触れた。どちらも何も言わなかった。


捏ね終えたあと、生地を小さな平たい円盤に伸ばし、暖炉の熱した石の上に置いた——塔のオーブン機能は部分的だが、直接の熱は使えた。立ち上った匂いはシンプルだった。小麦粉が焼ける匂い。塩。ほんの少しの油。


でも、それはパンの匂いだった。

本物のパン。


最初の円盤が焼き上がると——金色で、石の熱による黒い斑点がついている——俺はそれを聖なる工芸品みたいに両手で持った。


「試してみろ」とレナに。


彼女は一片をちぎった。息を吹きかけ、食べた。


「まともよ」

「まとも?」

「パンを作ったことない誰かが作った、酵母なしのパンにしては」

「それはほとんど褒め言葉だ」

「そう」


一片食べた。乾いていて、少し硬かったが、小麦粉と塩と火の味がした。リンゴじゃなかった。スープじゃなかった。パンだった。


「やったな」と俺。

「不細工なパンをやった」

「世界で一番美しいパンだ」


レナは目を回した。でも、あと二つ食べた。


記録が台の上に灯った。


『塔の記録』

調理を確認:パン(無発酵)

厨房機能:焼成機能の安定を確認

新規レシピとして記録しますか?


「塔がパンを新しいレシピとして登録したがってる」

「登録して」とレナ。「でも『不細工なパン』って入れて」

「それは塔がもう独力で察してる」


表示板に触れた。記録は瞬いて消えた。


パンのあと、階段へ向かった。


第二階層へのアクセスは第一階層の北端、土壌保管室の先、俺がまだ完全には探索していない壁にあった。他の扉と違い、これは木製ではなかった。巨大な一枚岩で、中央に円形の彫刻——管理ツールで見たのと同じシンボル。様式化された塔。


「ここだ」と俺。

「確か?」とレナ。

「いや。でも塔は三つの施設が稼働すればアクセスが解放されるって言った。厨房が部分稼働、温室が稼働、居住区。三つだ」

「なら、なんで扉は閉まったままなの?」


石に触れる。冷たかったが、震えていた——ごくかすかな震え。遠くで鼓動する心臓のように。


記録が現れた。


『塔の記録』

第二階層へのアクセス:部分的に解放可能

現在の状態:

第一階層の施設:3/3が機能中(条件満たしています)

塔のエネルギー:不足

居住者数:2名(推奨:3名以上)

推奨:エネルギー備蓄の増加、または居住者の追加登録


「三施設が稼働してるが、塔のエネルギーが低い」と訳した。「それと、登録された居住者の数がまだ少ない。塔はエネルギーの蓄えを増やすか、もっと居住者を登録することを推奨してる」

「もっと居住者」とレナは繰り返した。

「そう」

「どこでそれを見つけるの?」

「さあな。ミリが誰か知ってるかもしれない。彼女が言ってた、あの謎の狩人とか」

「あるいは、追跡者が私たちを捕まえて、問題を解決してくれるとか」

「それは少しも心強くない」

「そのつもりで言ったんじゃない」


石の床に座り、背中を壁に預けた。第二階層の扉は相変わらず閉ざされたままだったが、理由はもうわかっていた。塔は準備ができていなかった。というより、塔は準備ができていたが、その管理者はまだ十分な人を集めていなかったのだ。


「塔は人を欲しがってる」と俺。「施設だけじゃない。居住者を欲しがってる」

「なぜ?」

「わからない。でも最初から『登録』『居住者』『居住区』と言ってる。まるで、その目的が住まわれることであるみたいに」

レナは俺の隣に座った。

「それは理にかなってる。生きた塔はただの要塞じゃない。……共同体なのよ」

「お前、口に出すより多くを知ってるな」

「いつも」


微笑んだ。彼女は微笑み返さなかったが、尾は動いた。


「明日」と俺は言った。「周辺を確認しよう。追跡者が近くにいるなら、知る必要がある」

「もし、いなければ?」

「誰かを受け入れるために塔を準備する。第三の部屋を整える。準備万端にしておく」

「誰のために?」

「現れる誰かのために」


レナは俺を見た。


「あなた、世界を信じてるの?」

「いいや」

「なら、なんで他人を受け入れる気なの?」


少し考えた。


「そうやってお前が来たから」


彼女は答えなかった。石の扉を見つめ続けた。塔のシンボルが中央で静かに輝いている。どこか遠くで、泉が滴る音。中庭でリンゴの樹がそよいでいる。温室で謎の小さな植物が光っている。


塔は目覚めつつあった。

そしてゆっくりと、俺もそうだと気づいた。

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