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追放先は辺境の廃塔でした   作者: 星海凡夫


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第115章 〜風の朝〜


目が覚めると、枕の上に一枚の羽根があった。藍色で、縁が銀色に輝き、かすかに風の匂いが残っていた。隣ではシルフィーがまだ眠っていて、翼は半ば開いたまま毛布の上に広がり、朝日を受けて虹色に瞬いていた。その寝顔はどこか幼く、昨夜の決意に満ちた顔とはまた違っていた。


俺はしばらく起き上がらずに彼女の寝顔を眺めていた。長い睫毛、少し開いた唇、かすかな寝息。外ではもうゴルンの金槌が響き始め、子供たちの笑い声も聞こえていたが、この部屋の中だけはまだ夜の静けさが残っているようだった。


「起きてるのか」と彼女が目を閉じたまま言った。


「起きてる。今、起きた」


「嘘。ずっと見てた」


「気づいてたのか」


「空の民は気配に敏感なの」彼女は目を開け、菫色の瞳をこちらに向けた。昨夜の熱はもうなかったが、その代わりに穏やかな温もりがそこにあった。「よく眠れたか」


「ああ。お前は」


「久しぶりに、誰かの隣で眠った。風の音だけじゃなくて、誰かの呼吸が聞こえる夜は、やっぱりいい」


彼女は翼を伸ばし、羽根を数枚ぱらぱらと落とした。


「あとで掃除する」


「気にするな。羽根くらい、この塔には魔法の花も生えてるんだ。羽根の一枚や二枚、驚かない」


彼女は笑い、寝台の縁に腰かけた。それから俺の手を取って、自分の頬に当てた。


「温かい。まだ夢じゃないんだな」


「夢じゃない」


「よかった」


居間に下りると、すでに朝食が始まっていた。長いテーブルにはレナ、アルテア、リサンドラ、マリス、ミリ、ライラ、ヴァエリス、カエレン、ゴルン、セラ、ヴェラス、双子、エリオン、そしてヒカリとカイとテオが並んでいた。


「おはよう」と俺が声をかけると、数人がちらりと顔を上げ、それからまた食事に戻った。特別な反応はなかったが、レナだけがほんの一瞬俺の目を見つめ、それからシルフィーのほうを見て、かすかにうなずいた。


「やったな」とそのうなずきは言っていた。


「やった」と俺の目は返した。


シルフィーは少しだけ照れながら、空いている席に座った。すると隣にいたリサンドラが、無言でパンの籠を差し出した。


「ありがとう」


「気にするな」


それだけのやりとりだったが、その短さにこそ、この塔の空気が表れていた。順番も、嫉妬も、仰々しい祝福もない。ただ、いつも通りの朝だった。


「羽根が落ちてるぞ」とゴルンが床を指さした。


「あ、すみません」


「別にいい。羽根は燃えないが、掃除の邪魔にはなる」


「燃やそうとするなよ」と俺が言うと、彼は肩をすくめてパンをかじった。


朝食のあと、シルフィーは子供たちにせがまれて中庭で短い飛行を披露した。彼女がヒカリを抱えて低く飛ぶと、ヒカリは歓声を上げ、カイは静かにそれを見守り、テオは「ぼくも!」と小さな拳を振り回した。


「次はテオの番だ」とシルフィーは笑いながら彼を抱き上げた。その腕つきはすでに母親のそれだった。


俺はその光景をリンゴの木の下で眺めながら、この三年でどれほど多くのことが変わったかを考えていた。三年前、ここには俺とレナしかいなかった。今は八人の女性がいて、三人の子供がいて、さらに多くの命がこれから生まれようとしている。塔は生きていた。村は成長していた。そして俺は、その中心で、ただ立ち尽くしていた。


「考えすぎだ」とレナが隣に来て言った。


「いつものことだ」


「今日は何を考えてる」


「シルフィーのこと。リサンドラのこと。これからのこと」


「全部か」


「全部は無理だ。一つずつだ」


「成長したな」


「少しだけな」


彼女は鼻を鳴らし、それから俺の肩に凭れかかった。ヒカリが空から手を振り、シルフィーがもう一周だけ飛んでから降りてきた。


夕方、俺はカエレンと図書館で話し込んでいた。彼は未完の者から届いた最新の手紙を訳し終えたところで、その顔には静かな喜びが浮かんでいた。


「彼はもうすぐここに来られる。体はまだ完全じゃないが、私がついていけば数日の旅には耐えられる」


「いつ頃になる」


「早ければ次の満月までには」


「それまでに、迎え入れる準備をしよう。子供たちも楽しみにしてる」


「ああ、伝えるよ」彼は手紙をそっと机の上に置き、顔を上げた。「シン、あなたは多くのものをこの塔に集めた。人、命、未来。私はその一部になれて誇りに思う」


「まだまだこれからだ」


「そうだな。まだまだ、これからだ」


その夜、俺は久しぶりに一人で屋上に立った。村の灯りが増え、市場の新しい建物が月明かりに照らされていた。遠くで光り草の防護帯が瞬き、守護者たちが静かに巡回していた。


誰かが階段を上がってくる気配がした。振り返ると、シルフィーが翼をたたんで立っていた。


「やっぱりここにいた。一人になりたいときはいつも屋上だものね」


「邪魔しに来たのか」


「ううん、隣にいたくて」彼女は欄干に並んで立ち、翼をそっと俺の肩に掛けた。「寒くない?」


「お前の翼があったかい」


「空の民は体温が低いはずなんだけど、今夜はなぜか温かいの」


「それはよかった」


彼女は微笑み、それから村の灯りを見下ろした。


「ねえ、シン。私、この塔に来て本当によかった。飛ぶだけだった私に、帰る場所をくれてありがとう」


「礼はいい」


「でも言いたいの」


彼女は翼でそっと俺を包み込み、そのまま肩に頭を凭せかけた。月が静かに昇り、明日はまた新しい日。新しい飛行、新しい笑顔、新しい命の約束。でも今夜は、この屋上に、二人だけの時間があった。それで十分だった。

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