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絶望のシンクロニシティー  作者: 夜神 颯冶
アルヴァニア戦役
9/11

 

そのころ敵の別動隊(べつどうたい)濃霧(のうむ)(おお)われた森の中、

人の可聴領域(かちょうりょういき)を大きく()えたエルフに先導(せんどう)され、

視界(しかい)()かない森の小道を迷わず進んでいた。


人の身には自然現象に見えるこの(きり)も、

実は偶然(ぐうぜん)の産物ではなかった。


魔王の悪意と言う名の魔法。


この辺りが朝がった冷え込むと聞いた魔王(おれ)は、

前日に少し温めた水を森の中にまかせておいた。


こうする事で夕方(ゆうがた)蒸発(じょうはつ)した蒸気(じょうき)は、

夜間に冷やされ上空に上がる前に凝縮(ぎょうしゅく)し、

濃霧(のうむ)になるのだ。


森の中に霧が出来やすいのは、

そこが湿気(しっけ)ている(ため)であり、

朝方多いのは朝方森が冷え込むからだ。


(昼間温かく夜冷え込み安い日に、

特に濃霧は出来やすい )


冷えやすい森の中は特に。


そう、これは人為的(じんいてき)に作られた魔王の罠だった。


そんな悪意の中に敵(人間)は(とら)われていた。


濃霧(のうむ)の中、

それでも森に精通(せいつう)したエルフの案内で、

なんとか川上(かわかみ)辿(たど)()いた敵が、

そこで我が軍の別動隊を(とら)える事は無かった。


それでもここさえ(おさ)えれば、

魔王軍の戦法を封じ込める事になり、

人類がたが優位にたてる(はず)だった。


(すべ)ては魔王の人類に対するその悪意への誤算(ごさん)


そう、これは何重(いくえ)にも()(めぐ)らされた、

罠の蜘蛛(くも)()だった。


川の中で罠にかかった仲間を救おうとして、

さらなる罠にかかる。


人類はこの時、

魔王の希望を見させて絶望(ぜつぼう)に落とす、

最高の狂喜(きょうき)体感者(たいかんしゃ)となった。


無人の川上(かわかみ)奪取(だっしゅ)したと同時に人類(てき)の別動隊は、

森の中で火の手が上がるの見た。


濃霧の中でその火の手が確認出来た時点で、

山火事は手遅れなほどに森全体に広がり、

退路(たいろ)をたたれたのはあきらかだった。


前もって森の中に、

油を()()ませたロープを()(めぐ)らせ、

それに火をつけたのだ。


油の()み込んだロープの火は、

一瞬でロープが張り巡らされた森全体を、

業火(ごうか)の中に包み込んでいた。


そう敵を取り(かこ)(よう)に。


濃霧を作ったなのは、

(すべ)てこの罠の存在(そんざい)に気づかせないため。


そしてこちらの動きを隠し火の手に気づかせず、

逃走を困難(こんなん)にする(ため)


それでも濃霧が人工的に生み出せると、

分かってさえいれば、

一流の軍師なら見破(みやぶ)れたかも知れない。


だがまだ存在しない技を見破れるのは、

存在しない技を作り出し生み出せ、

そしてそんな妄想を敵が使うと想定する、

バカと紙一重(かみひとえ)の天才だけだ。


実はこの濃霧を生み出すのも、

実例(じつれい)があった(わけ)ではない。


これは魔王の人類を(ほろ)ぼしたいと言う妄執(もうしゅう)が、

その悪意を具現化(ぐげんか)させた呪いの策略(さくりゃく)だった。

 

 

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