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へんたいでいこう  作者: まあ
第1章 バラ色の出会い?
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第14話

「ご、ごめんなさい」

「どうしたの?」

「あれ……」


 急きょ入った依頼は先生からの教材の移動だった。クラス委員に頼めよと思いながらも先生達からの依頼は内申点に影響しそうだから成績があまり良くない俺としてはむしろ大歓迎だ。

 ガクが予想していた10分よりは時間がかかってしまったけど、部室に戻ると突然、浅見さんが慌てた様子で頭を下げてきた。


 何かあったのかと思い聞くと彼女は申し訳なさそうに禍々しい妖気を封印していた一画を指差した。


「な、何だって!? 封印が解かれている? ま、まさか、浅見さんが早まっちゃいけない。すぐに封印し直すんだ。あれは世に出てはいけないものだ」

「わ、私じゃないです。あ、あの……」


 あれは女の子が見て良いものじゃない。興味本位で封印を解いてしまったなら、元に戻した方が良い。

 考え直してくれと説得を試みるけど、彼女は大きく首を振っている……何か言いにくい事でもあるのかな?


「……席を外していたと言う事か?」

「う、うん。手伝うね」


 俺が首を傾げている間にガクは彼女の言いたい事を理解したようだ。

 ガクは浅見さんに興味がないのか破かれたお札を片付け始め、彼女は申し訳なさそうに頷いた後に片付けを手伝い出す。


「席を外していたって、どこに痛い!? ガク、何すんだよ?」

「少し考えればわかるだろ。言うな」

「おっけ、今日はもう何もないんだよな。片付けて帰ろう」


 浅見さんがどこに行っていたか考えていたところ、丸められたお札が鼻先にぶつかった。

 文句を言いたくなってガクへと視線を向ける向けられる視線はとても冷たく、触れない方が良いものなんだなと考え直す。

 ここに集まった理由はあの禍々しい手帳だった事もあり、今日はもうここにいても仕方ない。


「変な事に巻き込んで悪かったな」

「そ、そんな、悪いのは私なんですから」

「いやいや、浅見さんは何も悪くないよ。あの禍々しいものはあの程度の封印では抑えきれなかっただけだよ。だから、浅見さんは悪くない」


 後片付けを終えたガクは浅見さんに気を使ったようで頭を下げる。

 浅見さんは申し訳なさそうに頭を下げてくれる。その姿が可愛らしく、こんな場面に遭遇できるならあの禍々しい手帳を拾った事も悪くなかったのではないかと思ってしまう……その考えはきっと間違いなんだろうけど、今はそんな気持ちなんだ。


「2人ともありがとう……」

「お、お礼なんて良いよ。それより、ここを手伝ってくれるって言っていた事だけどさ。ガク、手伝って貰っても問題ないよね。手は足りてないわけだし」

「そうだな……」


 浅見さんの表情は優れない。このままでは良くないと思い、無理やり話を変える。

 彼女がここにきた手伝いの件を聞く、ガクは少しだけ考えるような素振りをすると浅見さんへと視線を向けた。

 

 ……なぜ、そこで即答しない? 女の子が手伝ってくれるんだ。もの凄くプラスの出来事じゃないか?


「……料理部の手伝いに行っているくせにラブイベント1つ起こせない人間が何を言っている?」

「……泣いても良いですか?」


 まるで俺の考えている事をすべて見透かしているようにガクの言葉が胸を刺してくる。

 それも的確に急所を撃ち抜いて塩を塗り込んでくるのだ。

 あまりのダメージの大きさに膝から崩れ落ちるがガクはまったく気にする様子はない。


「そ、それなんだけど、ごめんなさい。その話は忘れてください」

「な、なんで!? ガク、何するの!?」

「……おかしな動きをするな。浅見が引いているぞ」


 傷心で立ち上がれないでいると浅見さんが申し訳なさそうに口を開いた。

 その言葉に彼女が運んできてくれるであろう女の子とのきゃははうふふのラブイベントが無くなってしまうという絶望が付加されているのだ。

 黙っておけないその言葉にどうして断ろうとしているのか駆け寄って聞こうとするんだけど、先ほどのガクの攻撃が予想以上に効いていたようでおかしな動きになってしまう。

 そのせいか少しだけ微妙な動きになっていたようでガクの拳が頭に落ちてきてしまう。

 痛みに耐えながら、浅見さんへと視線を向けると若干、頬が引きつっているのがわかる。


「ち、違うんだ。これは」

「は、はい。わかっています。あの……」

「置いてあったものが盗まれたから、自分に手伝う資格はないと言う事か?」

「うん。迷惑をかけてごめんなさい」


 弁明のために出た言葉が途中で遮られてしまうのだけど、言葉を遮った浅見さんは言い出しにくそうに目を伏せた。

 彼女の様子にガクは何を考えていたかを察していたのかため息交じりで聞き返す。

 その言葉に彼女は申し訳なさそうに頭を下げるとここにいるのが居たたまれないのか逃げだすように部室を出ていってしまった。


「ガ、ガク、何やっているんだよ。追いかけようよ」

「ああ。そうだな。追いかけはする。ただ、もう少し待て」

「もう少し? っておかしな事を考えてないよね?」


 せっかくの女の子と仲良くなれる可能性が潰えてしまうわけにはいかない。

 ガクをその気にさせて浅見さんを追いかけようとするがなぜか、ガクの口元は小さく緩んでいる。

 その表情は明らかに何かを企んでいるようにしか見えない……ただ、余計な事を言うと矛先がこっちに向かってきそうなのでここは従っておく事にしよう。

 

 け、けっしてへたれたわけではないぞ。


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