転生聖女、教会の話を聞く
薙刀捌きと回復魔法、貴族っぽい仕草が板につき始めたハルノス・ヴェルナー 4歳。
「魔札の儀?」
朝食後、父の執務室へ呼ばれたため行くと、今週末に魔札の儀があると言われた。
「大層な名前が付いてはいるが、簡単に言えば教会で身分証明書を作ってもらうだけだ。」
お父様は、私達が成長すると共に威厳のある口調で話すようになった。お父様も威厳を付けたいお年頃なようです。ちょいちょい残念な所があるのがお父様クオリティ。
話を戻し、異世界では身分証明書は冒険者カードを作ってもらうイメージだっただけに、以外だ。
でも、4歳らしく聞いておこう。
「お父様、身分証明書ってなんですか?」
「自分の名前とかを他の人に教えるカードだよ。皆、4歳になると教会で作ってもらう事になってるんだ。」
そう言って、お父様は自分のカードを見せてくれた。
アストン・ヴェルナー 男 人族 30歳
職業:宰相
身分:公爵
魔法属性:水 雷 無
称号:海王神の祝福 国王の親友 ……… 恋煩い 意外としつこいアプローチ 妻思い 子煩悩 娘は渡さん
…。一部称号については見なかった事にしよう。
「海王神の祝福?」
思わず呟いた言葉に、お父様が教えてくれる。
「水神とも呼ばれてる神様だ。水魔法の威力が増すし、ある程度耐性も出来る。私は祝福だけど、加護であれば更に強くなる。どちらも珍しい。」
「お父様凄いっ!」
そう言ってお父様の方を見ると、締まりの無い顔をしていたため、従者兼友人のビークに頭を軽くぺしんっと叩かれる。
「公爵だろあんた…。」
…長く話していたため、ボロが出た。
その後、お父様は仕事へ行った。
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「カードを見せて欲しい?」
昼食の後、母と兄に魔札の儀の事について聞いて、カードを見せて欲しいと言った。
「構わないけれど…。」
そう言って母はカードを出した。
ミルフィー・ヴェルナー 女 ハイエルフ 1042歳
職業:公爵夫人
身分:公爵夫人
魔法属性:水 木
称号:世界樹の加護 氷神の祝福 エルフの王族 ……… 言い寄る公爵 折れて結婚 夫スキー 子供スキー
「…。」
「…。」
私だけでなく、一緒に見ていた兄も絶句。年齢が1桁違うのはさすがエルフ…かな?
「お母様、私達はハーフハイエルフですが、寿命ってどれ位になるのですか?」
これは、聞いてみたいけど聞いてみたくない。友達や結婚相手が人間であれば、寿命の関係で確実に私達は取り残される。下手すれば、子供よりも長く生きる可能性がある。
だから、聞いた途端に1人になりそうで怖くて聞けなかった。
「うーん…難しい質問ね。婚約中に世界樹の樹液から作った薬を飲めば、相手の寿命に合わせられるの。ほかの種族より寿命が長いエルフへの救済処置らしいわ。私はそれを飲んだけれど、2人は普通の人よりも長く生きることは確実だけど、それを飲めば合わせられるし本人次第って所かなー。」
「そうですか…。」
「お母様、その場合はボク達の子供、お母様の孫はどうなるのですか?」
と、近くで話を聞いていた兄様が質問をする。
「相手が人族であれば、他の人よりは長いけどせいぜい10年20年とかだから問題ないわ。獣人であれば種族に寄っても変わるし…。」
「…そうですか。」