転生聖女、誕生日を迎える
何だかんだで適当に情報収集をし、時間は流れていく。
転生から1年。今日、誕生日を迎える。
こちらの世界でも1歳の誕生日は特別視されている。その上、白銀の髪の子-―聖女になるであろう存在――がヴェルナー公爵家に誕生したということで、各所からお祝いの品や手紙が届き、領地内でもお祝いムードが流れていた。
その主役のハルノスは、領民への初お披露目やその後の家族や使用人たちでの誕生日パーティーの準備に追われていた。
(まぁ、わたしは座っているだけでいいんだけど。)
そもそも1歳児に自分でパーティの準備をしろという様な人物この公爵家にはいない。
高級感のある白いドレッサーの鏡が開けられ、自分の姿を世界で初めて確認する。
(うわー…。チートって容姿にも反映されるのか…。)
白銀の髪、アメジストの瞳、耳は通常より細長く、子猫を連想させるぱっちりとした目。1歳児ながら将来は美人になるだろうとわかる顔立ち。どちらかと言うと母に似ているもののこの世界では髪の色は遺伝ではなく、魔力により変わるので髪の色や瞳の色などが違う。
「ハルノス様、髪を結わえて行きますね。」
そう言ってメイドさんが髪を整えて、編んでいく。あっという間に仕上がり、普段用とは違うドレスも相まってとても可愛い。
満足そうに笑う私を見て、周りの人達はほよーんとした顔をしていた。可愛い子供の笑顔は最強というのは全世界共通だ。
「ハルノスっ!!」と、一番に入ってきたのは兄。「にいに〜!」と私も兄にギュッと抱きついた。
兄は予想以上にシスコンだった。習い事以外はずっと私に張り付いている。母や父よりも私の事を知っているのではと思う。お陰で、一番に喋った言葉は「にーに」だ。
「2人とも、そろそろ行こうか。」
兄の後ろから話しかけた美丈夫は父。あぁ、そうだ。兄の襲撃で抜け落ちていたけど今日はお披露目があるんだ。
前世では一般市民どころか底辺中の底辺だったので、こういった「貴族」な習慣は慣れないし緊張する。
アイバーソン王国は、大陸の南西部に位置し、ヴェルナー領の領都は真ん中にある王都から馬車で1日半ほどの場所にある。
また、王都にある別邸から領都の邸宅へは転移の魔法陣が繋げられており、ヴェルナー家の人物やヴェルナー家の承認を受けた者以外は転移できない上に、勝手に転移使用とすればゴーレムが動き出して侵入者を追い回す。
ヴェルナー家は代々宰相を務めており、現在は父が宰相であり、兄は次期宰相であり次期当主だ。
…ここの世界の事を何も知らない為、アバターに聞きまくった結果である。
勿論、子供だから何も知らないのは当然だ。だが、この世界には「魔法」がある。早く使いたい一心で聴き続けていた。
取り敢えず他の人の平均的な実力も知りたいし魔法を使って何をやりたいのかも将来は何になりたいのかも決まっていない。
まだ1歳。もう1歳。どう取るべきかは分からないが、何をするにしても早い方がいい。
前世みたいに手遅れになる前に。
公爵令嬢の地位や白銀の髪で誘拐などに巻き込まれる可能性が高い私を外に見せる事に両親や兄は勿論、使用人一同も不安と心配を滲ませていた。
公爵邸に閉じ込めて守ることは簡単だ。だが、本人の為になるかと問えば揃えて首を横に振るだろう。そのため、1歳の節目にお披露目となった。
外に出ると、ハルノスにとって初めての光景が広がっていた。