キャラたちの座談会
出版記念として番外編を書かせていただきました。
全てセリフから構成されているうえネタばれを含みますので本編を先にお読みいただくか、本のほうをお読みいただいてからご覧になることをお勧めします。
師「ねえねえ! 私たちの話が本になるらしいわよ」
リ「え、でももともとこれ、小説ですよね」
ミ「ほら、貴女の説明が悪いからリアが混乱していますよ」
師「(かちん)誰の説明が悪いっていうのよ! リアの理解力の無さが悪いんでしょう!?」
リ「え、それ酷い責任転嫁じゃないですか」
フィ×2「喧嘩はダメです~」
――――フィアとフィイ、間に入る。
ミ「……まったく、いい歳した大人が何やってるんですか」
師「もとはと言えばあんたのせいでしょうが……」
リ「と、とりあえず、話を先に進めましょう! フィア、フィイ。作者からカンペもらってたよね」
フィア「はいです!」
フィイ「読むです!」
師・ミ・リ「(かわいい……!)」
フィア「『この番外編では作者から登場人物たちへ各シーンごとに質問します』」
フィイ「『キャラたちは裏話を大暴露してね!』……だそうです。えっと……」
フィア「最初はカランさんです! これどうぞです」
師「はい、MCご苦労様。最初は私ね。『まずは第一部から。このとき師匠はミカゲとの再会を嫌がってますけど、実は内心すごく喜んでますよね』……はい、なんでいきなり質問じゃなくて確認が来たんでしょうね!」
ミ「あのころの師匠は頑なに僕のことを『黒いの』って呼んでましたからね」
リ「たしかにあちこち逃げ回ってたわりにはほいほいついていってましたし。実際のところはどうなんですか?」
師「あんたたち……。まあ、たしかに言われてみればそうね。ついていったのは兄様のことがあったからだし、ミカゲを名前で呼ばなかったのは自分の中で一種のけじめをつけていたから、ってところかしら」
フィア「カランさんありがとうございました!」
フィイ「次はミカゲさんです。『第十三部から。ここで一人ルーパスのもとへ行こうとする師匠を引き止めていますが、この時の心境は?』だそうです」
ミ「ああ、あのシーンですか。僕が珍しく真剣に引き止めたというのに置いていきやがったあのときですね。ええ、それはもう胸が引き裂かれるような思いでしたよ」
師・リ「(嘘だ。……絶対ウソだ)」
フィア「え、えっと、次いくです。次は第二十部からリアさんにです」
フィイ「『ここで年上組から散々いじられていますが、言いたいことをどうぞ」
リ「……覚えてろ(ぼそっ」
師「リ、リア?」
ト「師匠があの時やりすぎたから!」
師「あんたいつの間に!? というかあんたも同罪!」
ミ「……どっちもどっちでしょう。リア、あの時は言い過ぎました。申し訳ありあません」
リ「いえ、ミカゲさんは悪くありません。悪いのはいい年して謝罪も出来ない人たちですから」
師・ト「ギクッ」
フィア「次行きます、ですよ?」
ミ「(スルー上手になったな)」
フィイ「次は第二十二部から僕たちに、です。『ここで裏切る行動をとっていますが、このときの記憶はあるんですか?』」
フィア「うう、あまり思い出したくはないですけど、ちゃんと覚えてます」
フィイ「だから対リュウセイさんの時カランさんたちを庇えたんです」
師「フィア、フィイ……!!」
ト「フィアとフィイには辛かったかもしれないが、おかげで俺たちも助かったんだな」
師「フィア、フィイ、ありがとう」
リ「さて、師匠がフィアとフィイを抱きしめているので次は僕が読みます。第二十七部、一章の最終話から師匠へ。『対ルーパス戦後、目が覚めたときの気持ちは?』」
師「そうね、びっくり、が一番しっくり来るかしら。まさか兄様が、ねえ。それに神様に勝てるかなんて正直自信なかったし」
リ「え、そうだったんですか!?」
ミ「たしかに、神様と対峙して自信満々でいろっていうのは酷ですよね」
師「何はともあれ、無事解決して良かったわ。まあ、あれは兄様たちのおかげでもあったし、みんなには感謝してもしきれないわね」
フィア「カランさん、ありがとうでした!」
フィイ「第一章の質問が終わったので、次は第二章にいくです」
リュ「というわけで、二章からは俺がゲストで加わるよ」
ミ・リ「リュウセイさん!」
師「あんたたち、ホントに兄様のこと好きよね……」
フィア「では早速、質問いくですよー」
フィイ「第三十三部からリアさんにです。『ここで初めてはっきりと師匠たちと対立しているわけですが、このときの気持ちは?』」
リ「ああ、この時ですか」
師「覚悟していたとはいえ、なかなかきつかったわね」
リ「実はこのとき、あまり意識がはっきりしてなかったんですよね。夢見心地だったというか、薄い膜を通して見ていたというか……」
リュ「妹を守りたいという気持ちに付け込まれて半分催眠状態だったみたいだしね。兄として妹を守りたいという気持ちはよく分かるよ」
ト「リュウセイさんもそうやって妹を想う気持ちでルーパスから妹を庇ったわけだからな。そういえばこの中で兄妹がいないのは俺だけだな。ミカゲは師匠たちと義兄弟みたいなものだし」
師「何言ってんの。私たちはみんな家族よ」
ト「師匠……!」
フィア「……次行ってもいいです?」
フィイ「つ、次は第四十一部からトーマさんにです。『このとき置いていった師匠へ一言どうぞ』」
ト「まあ、あの時は腹立ったしなんでって思ったけど、今は感謝している。師匠がああして無理やりにでも親父と話す機会をくれたから今の俺があるわけだし」
師「あんたは普段へらへらしてるくせにへたれなところがあるからね。一時はどうなるかと思ったけどきちんと向き合って話もつけて。さすが私の弟子よ」
ト「……(照)」
フィア「カランさんはいつもフィアたちのためにいろんなこと考えてますよね」
フィイ「フィイもカランさんに救われたこといっぱいあるです」
師「そりゃあ、私の弟子たちのためだもの。師匠は弟子のために何かするのが仕事なの!」
リュ「カラン、いい出会いをしたんだなぁ」
ミ「みんながしんみりしているので次は僕が読みます。第四十六部からリアに。『妹と別れを告げ、逃げ延びた子どもたちと出会った時の気持ちをどうぞ』」
リ「リノとの別れは辛くて正直今でも思い出したくありません。一緒に遊んだ記憶もあまりない妹だけど、大切な家族だったことに変わりないですから。でも子どもたちと出会って僕、族長としてこの子たちのために頑張らなくちゃって思ったんです」
リュ「リアはいきなり族長っていう責任ある立場に立たされるわけだけど、俺やトーマだってこれから族長やっていくんだ。何かあったら周りを頼ればいいさ。頑張るのもいいけど、周りには俺たちがいることを忘れるなよ」
師「さすが兄様。最年長で族長歴が一番長いだけのことはあるわね」
ミ「リュウセイさんはみんなのお兄さんというよりも、お父さんっていう感じがしますよね」
ト「そうか、俺も族長になるんだよな。リュウセイさんがいれば心強いや」
師「(こいつが族長で大丈夫なのか……!?)」
フィア「次が最後の質問です!」
フィイ「『最後はみなさんで答えてください』らしいです」
師「もうそんな時間なのね。最後は私が読むわ。『第四十七部から。いよいよ完結しましたが、最後のエピローグではみんなの未来が少しだけ出てきます。未来への想いと最後のコメントをどうぞ』」
ト「もう完結か。早かったな」
ミ「とか言いつつ完結まで二年かかってますからね」
リ「途中いろいろありましたしね。じゃあ、順番はじゃんけんで決めましょう」
リュ「……っと、俺が一番か。最終話では俺が一番最初に結婚してることになってるんだよな。まあ、最年長だから当然だが。どんな未来だとしても黒ネコ族族長として誇りを持って生きていくことを誓うよ。俺は敵として対立したり怪我して役に立たなかったりあんまりいい役どころじゃなかったけど、こうしてお前たちと出会えて戦って、とてもいい一生だったと思う。ホントに感謝してるよ」
師「兄様、今にも死にそうなコメントね」
リュ「真面目なコメントをからかうんじゃありません」
フィア「つ、次はフィアとフィイですー!」
フィイ「フィイたちはカランさんたちとは種族も違うし、一度は裏切ったし、ホントは一緒にいちゃいけなかったのかもしれない」
フィア「でも仲間にいれてくれて、ホントの家族みたいに接してくれてホントに嬉しかったの」
フィ×2「本当にありがとうでした!」
師「本当にいい子たちよね。例え種族が違ったとしても、フィアとフィイは本物の私たちの家族よ」
ト「次は俺だな。師匠には俺が族長になる前もなった後も、本当に世話になったよな。俺の子どもも師匠の世話になるみたいだし、よく考えるとすごい縁だな。部族も違うのに。出会ったその時から俺は師匠にずっと感謝してる。これからもよろしく頼むぜ、師匠!」
リ「……もしかして、さりげなく師匠のこと一番好きなのってトーマさんなんですかね」
ミ「そうかもしれませんね。師弟の関係としてならトーマさんが一番師匠と長く付き合ってるわけですし」
リ「次は僕ですね。最終話では白ネコ族ともども師匠にはもの凄くお世話になりました。危うく絶滅しかけた白ネコ族も師匠たちのおかげで今は落ち着いています。それもこれも不甲斐ない族長である僕の責任ですけど……。神狼編から種族戦争編にかけて一番成長を促されたのは僕だったように思います。師匠をはじめとする年長組にはからかわれながらもずっと見守ってもらえて、いろんなことを教えてももらえました。本当にありがとうございました」
師「リアは真面目よねぇ。そんな感謝なんかしちゃったらますます私たちにからかわれるでしょうに」
ト「そこがリアの良いところなんじゃねえか」
ミ「リアは僕たちの最後の良心ですからね。……次は僕です。最終話では一番最初に子どもを師匠に預けたのが僕でした。あれをきっかけにまた師匠が道場を再開してくれるんですよね。全話を通して一番謎な位置づけだったのが僕なのではないでしょうか。黒ネコ族と師匠の間に立って情報流すの、けっこう大変だったんですよ。なまじ族長兄妹と距離が近かったためにいろんなしがらみもありましたし」
リュ「ミカゲにはいろいろ苦労かけたよな」
リ「よく考えると神狼編って壮大な兄妹喧嘩ですよね……。ミカゲさん、お疲れさまでした」
ミ「まあ、僕もこの兄妹に振り回されるのは嫌ではないのでこれからも付き合いますよ」
師「最後は私ね。……正直、生きた心地がしないような経験もたくさんしたわ。それでもあの最終話で私が言った通り満ち足りた日々を送っていたし、思い残すことなんて何もない、そんな一生だった。何よりもあんたたちに出会えたからこそ辛いことも乗り越えてこれたし、こうして今幸せだったって言える。本当にありがとう」
リ「……なんか師匠が素直だと気持ち悪いです」
ミ「嵐でもくるんじゃないかと疑いますね……」
師「あ、あんたたちねぇ……!!」
ト「まあまあ、どう見てもその二人の目が笑ってるだろ。照れ隠しだよ、照れ隠し」
リュ「カランは本当に仲間に恵まれたんだな。お兄ちゃん、嬉しいよ」
師「~~ッ! もう、今日はこれで解散! 最後に作者から一言!」
美「ここまでお読みいただきありがとうございました。正直、一番思い入れが深い作品だったのでこのように出版という機会をいただけてとても嬉しいです。これからも精進していきますので楽しみにしていただけたら幸いです。最後にまた別の作品でお会いできることを願って」