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気ままに。  作者: 咲坂 美織
種族戦争編
40/48

約束

これから一気に投稿します。

2年越しの完結となります。よろしくお願いします。

「リア、一つ聞いてもいいかしら」

 視線で問うと何も反応をしなかったのでそれを肯定と受け取り、口を開く。

「妹を守るってどういうことかしら。それと花が何の関係があるっていうの?」

 リアはしばらく迷うようなそぶりを見せていたが、私が黙って答えを待っていると口を開いた。

「リノは、妹は、病気なんです」

 リアのその言葉と同時に目を伏せるリノ。その謀ったようなタイミングに嫌気がさす。私の考えすぎだろうか。

 それからリアはゆっくりと語り始めた。

「僕が戻ったのはリノが病気になったからでした。原因不明でもうどうすることもできなくて。最後に記憶に微かに残っていた僕に会いたいと言ったリノの願いを叶えるために僕は連れ戻されました。もう起きることも出来なくなったリノは僕にある花の存在を教えてくれました。それが血を吸うと咲くという花です。僕は藁にもすがる思いで花を探し、自分の血を与えました。その花を持ち帰り、リノに見せるとその花が光って……」

「その子が動けるようになった、ってこと」

 リアが首を縦に振った。

「その後リュウセイさん、"三毛ネコ族"の族長の血を与えた花の力によってリノはここまで動けるようになりました。この花の力は本物です。僕はリノのためならなんだってします」

 私は頭の中に各部族の勢力図を思い浮かべた。"白ネコ族"、"黒ネコ族"、"三毛ネコ族"、"虎ネコ族"の血を手に入れたとしたら残るは……。

「次は"(ぶち)ネコ族"、ってとこか」

 目を逸らすリア。当たりってことね。

「それで、血を手に入れたらどうするの? 各部族長の血だけで完全に回復するとは限らないんでしょ?」

「それは……。いえ、きっと回復するはずです」

 駄目だ。リアは完全に血だけに囚われてる。よしんば妹が回復したとしてその後はどうするのだ。各部族に対して一部族だけで大々的に喧嘩を売ったこの状況を。

「妹が助かったってその後は……」

 私は続きを口にしようとして止めた。リアは聡い。きっと理解している。理解したうえで妹を取ったのだろう。言いかけた言葉の代わりに、私は1つの問いを口にした。

「リア、あなたは本気なのね?」

「……はい」

「それが私や道場の子供たちと敵対することだとしても?」

「覚悟は、しています」

 リアはまるで自分に言い聞かせるように、しかしはっきりとそう答えた。なら私の答えは1つしかない。

「リア、3日後よ。3日後に西で会いましょう」

「師匠! いいのかよ!!」

「トーマうるさい。リアの本気は分かったでしょう? なら私たちも本気で潰すまでよ」

 私の本気の言葉に黙りこむトーマ。

「……分かりました。今日のところはここで引きます。さようなら、師匠」

 しばらく考え事をするように顔を伏せていたリアだったが、意外とあっさり引いた。私にあっさりと背中を向けると妹を促し、仲間を連れて去っていった。

「師匠、ほんとにいいのか」

「くどい。いいのよ」

 私もくるりとリアたちに背中を向けて、後ろにいたフィアとソーマさんの顔を見つめた。

「ソーマさん、申し訳ありません。部外者である私が勝手に逃がしてしまいました」

 そう言いつつ頭を下げる。

「いえ、構いませんよ。そちらにも事情というものがあるのでしょう。それよりも3日後に西というのは……」

「ええ。リアたちは3日後に"斑ネコ族"の集落に現れるでしょう。もちろん、私たちも行きます」

 私の言葉を聞くと、ソーマさんは何か思案するように顎に手を当てた。

「そのリア君とやらが3日後に現れる確証は?」

「ありません」

「なら何故」

「あの子がリアだからです」

 知らず知らずのうちに私の口元には笑みが浮かんでいたらしい、ソーマさんが目を細めた。

「……なら私も力を貸しましょう。少しくらいは力になれるはずです」

 いや、私の拳をいとも簡単に止めたあなたなら十分すぎるほど力になるはずです。……なんてことは言えずに私は頭を下げた。

「ありがとうございます。ですが……」

「私は部外者だと。それは承知しております。しかし私もトーマの身内であり族長の家系の出でもあります。どうかご一緒させてください」

 そういうとソーマさんは私に頭を下げた。

「そんな、頭をあげてください」

 私の言葉にも頑なに頭を下げ続けるソーマさん。私は困ったとばかりにトーマをみる。

「こっち見んなよ、師匠。まあ、俺の身内っていうのも事実だし、実際叔父さんの戦力は俺なんかより頼りになるし」

「それもそうね」

「そこは嘘でも否定してくれよ師匠……」

 ぶつくさ言うトーマは放っておいて、私はソーマさんに向き直った。

「分かりました。ご協力感謝します」

「こちらこそ。よろしくお願いします」

 そう言ってもう一度深く頭を下げてから顔を上げたソーマさんは、とても素敵な笑みを浮かべていた。……私何か早まった?




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