10(完)
「ご機嫌ですね」
アッシュに指摘されて思わず白蓮は口元を緩めた。
「そうだね。イオの実家は苦労したほうがいい」
先月白蓮とイオニアは結婚した。
今ルーシッド伯爵家は大変なことになっていると報告が上がっている。
ルーシッド伯爵は交渉の手紙が上手く書けず、商人の方が力を持ち始めている。オフィーリア夫人はイミテーションの宝石を買わされ、それを社交場につけて行ったフィリアは笑いものになってしまった。
それだけで済めば良かったのだが、フィリアのイミテーションを笑いものにした令嬢と揉めて障害事件もどきになり、花の妖精のようと言われた評判に陰りが見えているらしい。
「イオニア様には言わないのでしょう?」
「もちろん」
彼女はとても傷ついていた。これを聞けば何の責もないのに自分を責めるかもしれない。
イオニアは紛れもなく家族を愛していたのだし、非情にはなりきれないだろうし、それでいいと思っている。
「イオは優しいからね」
それで、こっそり援助していると? アッシュが皮肉るように言うので、口端を歪めて笑った。
「没落はさせない」
生かさず、殺さず、じわじわと。
今までどんなにイオニアに頼り切っていたのかを知らしめる。
ああ、怖い、とアッシュが肩をすくめるのに、笑って返した。
「妖は優しくないと言うことを身を持って知ってもらわないとね」
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