妖達の密談
フィリア・ルーシッドは桃に水飴をぶっかけて台無しにしたような女だ。
砂糖菓子のような容姿は整っているのだろうが、媚びたような目とまとわりつくような言動が全てを台無しにしている。
白蓮はゆったりと腰掛け足を組む。
「アッシュ」
呼びかければ、彼とカナリアが現れる。
「カナリアも来たのか」
あら、お邪魔でした? と悪びれずにいうカナリアはいい性格をしている。
「客人が帰らないことについてどう思う?」
腕を組んで問いかけると彼女は口の端を曲げて言った。
「あの方、見たいものしか見ていないんですもの」
イオニアに話した通り、当初数日滞在させればこちらが幻惑を使っているのはバレるだろうと思っていた。種明かしをして、痛み分けをする。その予定だった。
しかし、フィリアは見たいものしか見ない。いまだに化かされているにもかかわらず、レンに会って交流を深め、それどころか愛されていると思い込んでいる。
このままでは、とてもまずい。
約束通りの1ヶ月が過ぎてしまったら、騙したのだと妖が一方的に責められかねない。
「アッシュ、何かいい案はないか?」
そうだね、と彼は顎に手を当てる。執事と言ってもこの100年だけの形式的なことだ。もとはただの友人である。
「フィリア嬢には悪いけれど、もう手段を選んではいられないかな。幻惑を解いて人化した姿でストレートに誘惑させたらどうだろうか」
妖は本来人に優しくはない、情はあり、義理も果たすが気に入った人間以外には容赦がない。
「上手くいくだろうか」
いくんじゃないかな。あの子物事を深く考えないから。
アッシュは息をするように毒を吐いた。
「レン兄様もその方がよろしいのではなくて?」
ころころとカナリアが笑う。
「悪巧みしていらっしゃるのでしょう?」
そうだね、欲しいものがある。というと愉快でたまらないという顔をされた。
「めずらしいこと。朝露のような方ですものね」
そう、彼女が欲しい。珊瑚色の髪、新緑の瞳、瑞々しく清々しい朝露のような少女。
真名を名乗った時点では、真面目で純粋そうで、堕ちてきたら楽しそうだと思ったから。
でも、今彼女の内面を知って、もっと心まで欲しいと思っている。
家族を愛し、けれど嫌いという言葉で虚しさを隠す姿は痛々しいがとても眩しい。
愛を求め、心を捨てられない彼女が愛しかった。
彼女の瞳が自分だけを見てくれたらと思うとゾクゾクする。
「____では、明日からそのように」
一族に聞こえるように声を放つと、どこからともなく是と響いて散った。
「忙しくなりますね」
アッシュが言うとカナリアは笑った。
「楽しくの間違いではなくて?」




