九十二話 記録と記憶
神馬村
帰宅したモートレ、ブルーケ、アバートを迎える声は明るくは無かった。
ただし、歓迎はしていた。
あれだけの激戦を生きて帰ってきたことは称賛すべきなのだが、結果は芳しくない。
伊勢陥落の目標は達成。
しかし、暁啓が再臨したにも関わらず敵側へ。
そして、少女達の要であるヒェトラも敵側へ回ってしまった。
恐れるべき事態だ。
「無事で何より」
荷物を片付け終えて、一息ついた三人を前にデッディは労わる声を一つ。
「ヘトヘト……でも本当にここに帰ることができて良かった」
モートレは応急処置の終わった傷を撫でてから声を漏らす。
「ヒェトラのいない今――――私が指揮を執る……異論は?」
全員と瞳を合わせた後にデッディは問いを一つ。
その瞳には鋭い火が灯る。
ヒェトラと最も近い位置にいたからこそ、その問いを投げることができた。
そして、少女達はその問いに異を唱えることは無い。
何故なら、ヒェトラに次いで人心掌握に長け、指揮を執る才に秀でているのはデッディに他ならないからである。
「よろしい……まさかこんな事態になるとはな」
溜め息がひとつ。
デッディは目の前の光景に言葉を詰まらせた。
ヒェトラは別に口数は多くは無かったが、それでも存在感はあった。
それがいなくなるだけで、こんなにも心の奥がくすぐったいような、寂しいような感覚になるのか。
言葉にするのは恥ずかしくて、そっと言葉を仕舞う。
「しかし道は見えた。倒すべき敵が集結している今、目標は一つ。この状況を鑑みてC2諸君の考えも聞こうか」
気持ちと状況を整理してから、デッディはリビングに置かれた機材に向けて問いを投げた。
その機材とはC2達を出力し、C2達へ入力する為のものだ。
「アキヒロの真意を確かめなければならない。今ここにいる私達は協力を惜しまないよ」
「えぇ……薄気味悪い笑顔が食えませんからね」
榛名と金剛の賛同の声はそこにいるC2全員の総意に違いなかった。
那須暁啓の再臨はそれだけで意味を持ち、全てのC2に存在意義を問うものとなる。
C2各々に開かれた授業が、ここに来て効く。
舐めるな。と言われた記録が鮮明に浮かぶ。
那須暁啓への記憶が蘇る。
それはそこにいる全ての者が同様であった。
こんにちは、
下野枯葉です。
復活しました。
えぇ。
生きていますよ。
これは奇跡です。
さて記録と記憶です。
その違いは人間性の保持でしょう。
えぇ、きっと。
そうなるはずです。
ちなみに、これから過去のお話が始まります。
たいへんだぁ。
生きていたのだから、それくらい楽しみましょう。
では、
今回はこの辺で。
最後に、
金髪幼女は最強です。




