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第24話〜潔い決断〜

前話から5ヶ月も空いてしまいましてすいませんでした。


「カルトさん、シーナさん、もう一度ファルーを僕に預けてくれませんか?」


思いついた一つのアイデアを言うためにフィロスは口を開いた。


「‥‥理由を教えてもらえるか?」


カルトはすぐに、戻っていた獣人語を普人語へと変え、真剣な表情になる。


「私も聞きたいわ。」


座らずにお茶を入れていたシーナがお茶を入れ終わり、自分のカップを持ってカルトの横に座る。


「僕がファルーをさらった人たちを見つけ出し、ファルーの紋を消させます。」

「いや、そこまでは頼めない。君もまだ未成年だろう?」

「確かに未成年ではありますが、乗りかかった船と言いますでしょう?」


この世界の成年は20歳付近なのか。


「しかし、商人ギルドの商人を敵に回せば街中では何も買えなくなる可能性があるのだぞ?」

「東の港町に向かった仲間がいると言ったでしょう?それが商人の子なんです。隠れて生活する分には大丈夫でしょうし、そこら辺は上手くやりますよ。あなた達が許すのであればファルーの紋を消させに行きます。」

「‥‥ふぅむ。」


カルトは腕を組み、イスの背もたれにもたれかかると目を閉じて思考に入った。

フィロスも急かしたりすることはせず背もたれにもたれかかり二人の返事を待つ。


『あなた、わたしはファルーの紋を消してあげたいわ。』


少し考えて口を開けたシーナはファルーの紋を消したいという意見だった。


『私も消してあげたいと思っている。しかし、これ以上この子に迷惑をかけるわけにはいかない。消すなら消すで私たちが行こう。』

『確かに、そうよね。動揺しちゃってたみたい。ごめんなさい。』

『いや、いいんだ。』

『カルトさん、シーナさん、嫌なところを突くようですがその方法はあるんですか?』


フィロスは口を挟んだ。


『‥‥ないことはない。』

『参考までに教えてもらえませんか?』

『本当かはわからないが、王都の商人にお金を払えば奴隷紋を消してくれる者がいるらしい。』

『その情報はどこから?』

『村の者が、どこかの行商人に聞いたらしい。』

『‥‥そうですか。』


そこでフィロスは質問をやめると再度背もたれにもたれかかり鼻から深く息を吐いた。


「おそらくそこが裏の奥深くで奴隷商をやっているところなのでしょうね。」

「あぁ、それは十分承知だ。しかし、金さえ用意すれば紋は消してくれると聞く。」

「その金額もものすごい額だということはわかっているかとは思いますが。それ以前に、なぜ悪くもないこちらがお金を払わなければいけないのでしょうか?」

「それは、私たちも感じている。しかし、それ以外に方法がない。」

「タダで消してもらえるように交渉してきましょう。」


フィロスの言葉にカルトとシーナは黙り込む。

ファルーも空気を察してかさっきからカルトの隣で大人しく座っていた。


『ファルー、外に遊びに行こうか?』

『え?』


目を丸めてファルーがフィロスの方を向く。


「カルトさん、子どもにこの空気はあまり良くないですから、少し外で遊んできます。誑かそうとしているわけではないですよ。」

「わかった、頼む。」

「はい。」


カルトはフィロスが言外に言おうとしていることを察したのか難しい顔で頷いた。


フィロスはファルーを連れ立って家を出ると、しゃがみこんで話しかけた。


『さあファルー、何して遊ぼうか?』


言われてファルーは考え込む。

しかしちょっと前までここに住んでいたわけだからすぐに思いついたようだ。


『お花畑行こ。』

『よし、案内頼めるか?』

『うん、ファルー覚えてるよ。』

『偉いな、さあ行こう。』


フィロスは、ちょっと無理やり気味にファルーの気を遊びに向ける。

今回はそれに上手くファルーは乗ってくれたようだ。


ファルーに案内されてカルト宅の裏の森へと入って行く。


『森に入って行って大丈夫なのか?』

『うん、ここはまだ大丈夫だよ。』


振り返り答えたファルーはそのままフィロスの先を歩いて行く。

そして、少し歩くとかなり広く開けた場所に出た。

そこは、たくさんの獣耳の子どもたちで賑わう広場だった。

端の方には奥さん方が談笑している様子も見て取れる。

これなら大丈夫だろう。


『お花畑はもうちょっと奥にあるの。』


そう言って、さらに木々をかき分けて入って行くファルーについて行くとやがて花畑に着いた。

先ほどの広場同様木が無く開けており、そこにいろんな色の花がたくさん咲いていた。

所々に獣人族の女の子たちの集団が見える。

ここは女の子たちの遊び場になっているようだ。


『友達はいるか?いるなら行っておいで。』

『うん、遊んでくるね。』


そう答えるとファルーは女の子たちの集団の1つに走って行った。


それからフィロスは近くの切り株に腰掛け、これからのことをぼーっと考えることにした。




『フィロス?フィロス?起きて。』


誰かに呼ばれた気がする。


『フィロス、もう帰らないと陽が沈んじゃう。』

『ん?あっ、あぁ、ごめんごめん。』


自分を呼んでいたのがファルーだと気付いたフィロスは慌てて立ち上がる。

その動作に、ファルーの後ろにいた2人の女の子が顔を見合わせてクスクスと笑った。


『フィロス、ファルーの友達。クレナとスカーレ。』

『クレナです。こっちが妹のスカーレ。炎狐の家系なの。』


クレナと呼ばれた方が纏めて自己紹介をしてくれた。

2人とも橙色の毛色で、尻尾と耳の先が少し赤くなっている。

フィロスには炎狐なるものが何なのかよくわかってはいないが、確かに火を扱うのが得意そうだと思った。


『どうも。普人種のフィロスと言います。よろしく。』


フィロスもしゃがみ込み自己紹介に答える。


『お兄さんがファルーを助けてくれた人なんだよね?』

『ん?そうか、結果的には、そうなるな。』

『すごい!悪い狼さんを追い払ったんだよね?』


今度は妹のスカーレが聞いてくる。

しかし、追い払ったというほどでもない。

あの時は慌てて帰れと言ったら帰ってくれただけなのだ。

この子たちにそんな夢のないことを言うのもどうかと思うが。


『あー、そうだな。狼たちを追い払った。』

『ママに聞いたの。昔は狼さんたちもここにいたんだって。だけど、狼さんたちだけ乱暴だから追い出されちゃったんだって。』


子どもにそこまで教えているのか。

いや、あえてそれを教えていい子にしてないと追い出されるぞ、と言った感じで子育てをしてきたのかもしれない。


『そうなのか、それは知らなかったな。さて、そろそろ帰ろうか。本当に陽が隠れちゃいそうだ。お話は帰りながらにしよう。』

『じゃあ、抱っこ。』

『え?』

『私も。』

『ファルーも。』


3人して両手を広げる姿は可愛らしいものではあるのだが、その全員が抱っこを希望している、さらにその対象が自分となると苦笑いが浮かぶ。


『あー、1人おんぶでいいかな?』


フィロスにはこう言うことしか出来なかった。



『あら、クレナもスカーレも。ごめんなさい、2人ともまだまだ甘えんぼさんで。』


クレナとスカーレを家に届けに行ったら2人の母親に苦笑いしながら謝られてしまった。


『いえいえ、大丈夫ですよ。子どもは好きですから。』


結局、ファルーに背中にしがみついてもらいクレナとスカーレを前に抱っこして運んで来た。

しかし、クレナとスカーレを降ろすとすぐにファルーは抱っこを所望され、今ではフィロスの腕に収まっている。


『クレナ、スカーレ、ありがとうは?』

『お兄さん、ありがとう。』

『ありがとう。』

『あぁ、またな。2人とも。』


母親に言われて軽く頭を下げる2人にファルーと一緒に手を振って別れた。


あの後、カルトとシーナは結論が出ただろうか。

心配ではあるが、十分時間も空いたし帰らないわけにもいかないのでカルト宅へと向かうことにした。


『ただいま戻りました。』

『ただいま。』

『おかえり、2人とも。』


フィロスとファルーが帰ると奥からシーナのいつも通りの声が聞こえてくる。

とりあえず荒れてはいないようで安心できる。

そのままリビングまでファルーを抱っこしながら行くとソファにカルトが座っていた。


『お帰り、2人とも。ファルー、パパはフィロス君とちょっとお話がある。呼びに行くまでお部屋で遊んでいてくれるかい?』

『…うん、わかった。』


ファルーは、一瞬不安そうな表情になったがすぐに頷くとテーブルに鎮座していたスライムを持って廊下へと出て行った。


『フィロス君、時間をくれてありがとう。あの後、シーナと2人で話し合った。』

『はい。』


やはり、話し合う時間を設けたのは良かったのかもしれない。

フィロスは一言頷くとカルトの言葉を待つ。


『結論から言おう。ファルーを君に預ける可能性が高い。』

『はい。』


拒否されるかもしれないと考えていたが、ファルーを預けてくれるらしい。

かなり悩んだ結果だとは思うが。


『ファルーにこの事を話す。それであの子に判断させたい。確かに酷かもしれないし、まだよくわからないかもしれない。それならそれでいい。しかし、大切なのはあの子がどうしたいかだと思ったのだ。』

『……わかりました。お二人がそう答えを出したならそうしましょう。』

『ありがとう。』


キッチンではシーナがフィロスに頭を下げていた。




『ファルー、居るかい?』

『いるよ、パパ。』


その後、フィロスとカルトはすぐにファルーの部屋に向かった。


『入るよ?』

『うん、いいよ。』


カルトが扉を開けるとファルーはベッドの上でスライムを抱きかかえていた。

少し表情に不安が見える。


『フィロス君との話が終わったよ。それで、ファルーに話さないといけないことがあってね。』


カルトは、ベッド脇のイスに腰掛ける。

フィロスは逆側のイスに浅く腰掛けた。


『うん。』


カルトは、ファルーが頷いたのを見ると奴隷紋について話し始めた。







『うん、知ってた。』


それが、カルトの話を聞いたファルーの第一声だった。


『ルナから聞いたの。ルナは、フィロスはお人好しっぽいから奴隷紋のことをある程度知ったら消しに行こうとするかもって言ってた。』

『全部お見通しだったわけか。』


カルトは渇き気味な笑いを浮かべる。


『まぁ、知っていたのなら早いだろう。それで、ファルーがどうしたいのか聞こうと思ってな。何も今すぐじゃなくてもいい。決まったら教えて欲しい。』


カルトがそう言うと、ファルーは首を横に振って答えた。


『ううん、ファルーもう決めてるの。ファルー、フィロスと王都に行ってみたい!』


その言葉にカルトは驚くでもなく、静かに答えた。


『そうか、じゃあ旅の準備をしないとな。』


そこには少し寂しそうに笑うカルトと目をキラキラとさせたファルーがいた。


それからすぐにカルトとシーナによる荷造りが始まった。


これからは不定期ではありますが、1ヶ月に2、3話程度ずつ更新して行こうと思っております。

更新は作者プロフィールのtwitterアカウントを見てもらえればわかりますのでフォローお願い致します。

※小説に関係のないことも呟いております。

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