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第13話〜商売〜

青年が黒剣士と会っている時、ルナはいくつかの取引先を回っていた。


馬車小屋で青年と別れたルナは、袋に入れた鉄鉱石や魔鉱石を持って街の東の外れにある鍛冶屋に顔を出した。


「おじさーん、こんにちはー!」


中のカウンターに人がいないのを確認すると、ルナはカンカンと音の聞こえる奥に向かって声をかけた。


「あぁ!?誰だ?」


カンカンとうるさい音以上の声量で返事が返ってきた。


「ルナです!仕入れに来ました!」


ルナも負けじと声を出すと金属同士がぶつかる音が止まり、奥から1人の男が出てきた。

男は身長がルナより少し低いぐらいで、少し赤みがかった茶色の肌を持っていて、鼻が高く耳が尖っている。

小人種と呼ばれる、ルナたち獣人族とは違う亜人族に含まれる種族の者だ。

もちろん、この国は獣人族でも亜人族でも変わらずに受け入れている。

それなのに、敵国の間者は一切受け付けないと言われているからすごい国なのだろう。


「おぅ、ルナ嬢か。いつもすまないな。」

「いえ、こちらも商売させてもらってますから。」

「そうか、そう言ってもらえるとありがてぇよ。それで、今回はどんな感じだ?」


男が用意したイスに軽く礼をしてから座ると、ルナは話し始めた。


「一ヶ月ぐらい前から魔石が増えてるみたいで、今回は魔石が少し多いですね。原石は比較的安価なので多めに仕入れてきました。」

「そうか、また魔石が増えだしたのか。」

「何か心当たりが?」

「200年ほど前にも魔石が増えた時期があってな。」

「おじさん、200年前から生きてるの!?」

「いや、ジジイから聞いた話だよ。」


立ち上がり驚くルナに男は笑って言い返した。


「あ、そっか。私たちや小人種の人たちはそんなに寿命が長くないですもんね。」


思い出し再度座るルナ。


この世界の人型の生物は大きく獣人族と亜人族に分けられる。

平均寿命が75年未満の族種が種族名として獣人族を与えられ、それ以上の寿命を持つ者たちに亜人族という種族名が与えられる。

最初は長寿人族と短寿人族に分けられていたらしいが、差別のようだという意見により今の名前となった。

そして、亜人族の中でも最も短命な小人種は、ほかの族種が数百年生きるのに対し、平均寿命が100年ほどとなっている。

これを理由に最近は小人種も獣人族に入れて仕舞えばいいのではという意見も出ているという。


「まぁ、生きてた生きてないの話はいいとして、話を戻すが、代金はどうなる?」

「多く出て値段も下がってたのでいつもと同じ金額で大丈夫です。」

「そうか、それならもう用意してあるぞ。」


鍛冶屋の男は立ち上がるとカウンターの中から硬貨のたくさん入った袋を取り出してルナに手渡した。


「金貨18枚と銀貨40枚だ。大貨はないから全部小貨になっちまうがな。」

「それはいいんですけど、金貨は15枚のはずです。」

「いつもわざわざここまで来てもらってる礼だ。受け取っておきな。」

「分かりました。ありがとうございます。」


ルナが袋を少し開けると金と銀の硬貨が数十枚入ってるのが分かった。

あまり信用していない相手だとすぐに数を数える動作に入るのだが、この鍛冶屋とは1年半ほどの付き合いで、信用がおけている。

ルナはすぐに袋の口を閉じた。


この国で4年ほど前に導入された小貨10枚ごとに大貨を大貨制度だが、導入されてまだあまり時間が経っていないこともあり、規模の大きな商店やギルドなどでしかあまり見ない。

そのため、ギルドに行けば交換してもらえたりもするが、わざわざ交換しに行くようなことはあまりしない。


「こんな暑い中疲れただろう。女房にお茶でも用意させよう。飲んでいくかね。」

「ありがとうございます。でも、他にも回るところがあるので遠慮させてもらいます。」

「そうか、じゃあ頑張れよ、ルナ嬢。」

「はい。では、また来ます。」


男に挨拶をして鍛冶屋を出るとルナは次の取引先に持っていくものを持ってくるために馬車小屋へと戻っていった。



その後、幾つかの取引先を回り終わり、最後の場所を出ると外は暗くなり始めていた。


「ん〜、終わった〜。さて、帰りますか。」


一度大きく伸びをしてから歩き出す。

昼ほどではないが、まだ賑わいを見せる大通りの市場を眺めながら宿への道を歩いていく。

途中で糖玉を買い、口に入れて舐めながら歩いているとファルーに似合いそうな服や髪飾りを見つけた。

明日、1日ファルーちゃんを借りて服屋や装飾屋でも回ろうか。


そんなことを考えながらのんびりと歩いていると気付けば宿屋についていた。


「女将さん、ただいま〜。」


ルナは扉をくぐるとかうんたーにすわっていたおかみさんに話しかけた。


「お帰り、ルナちゃん。お疲れさま。あの子たちはもう帰ってきてるよ。」

「ありがとう。」


階段を上がり、部屋の前まで来るとルナは部屋の扉を叩いた。



宿の部屋でファルーと本を読んでいると、部屋の扉がコンコンと叩かれた。

ファルーは耳をぴくりと反応させ、俺は普通に音に反応して2人同時に扉の方を見やる。


「私だよ。開けてくれる?」

「今行くよ、待って。」


ルナの声に俺はファルーを膝から降ろしすぐに扉を開けに向かった。


「ただいま。」

「お帰り、ルナ。お疲れさま。」

『おかえり。』

『ありがと、2人とも。』


部屋の隅に鞄を置いたルナはすぐにファルーのいるベッドへ向かいファルーの頭を撫でにかかる。

その気持ち、大いに分かるぞ。


「あっ、この髪飾り。」

「さっき大通りの装飾屋の屋台で買ってやったんだ。」

「私もさっき見かけてさ、ファルーちゃんに似合うと思ったんだよね。あっ、明日ファルーちゃんを1日借りてもいいかな?」

「そうか、ちょうどよかった。少し話があるから先に2人で大浴場にでも行って来なよ。少し話が長くなると思うから汗かいたままだと気持ちが悪いだろう?」

『そうね、分かった。じゃあ、ファルーちゃん、お風呂行こうか。』


それに、ファルーが頷くと2人はタオルを持って部屋を出て行った。


少しして、お風呂に入ってさっぱりした3人は部屋の小さな円形テーブルの周りに用意された3つの1人掛けソファに座っていた。

小さな円卓会議のようだ。


そこで、俺は黒剣士と自警団に会ってきたことを話し、明日以降作戦に参加するからファルーを預かって欲しいと、ファルーにも聞かせるために獣人語で話した。


『そんな危ないことしないくていいよ。確かに切り掛かって後には引けないとかあるかもしれないけど、未だに衛兵が来てないってことはあっちも問題にはしないってことだからもうこれ以上手を出すのは良くないよ。』

『個人的にも嫌悪はある。でも、さっき言った通りグランベル商会は奴隷売買に関わってるかもしれないんだ。それは放っておけない。それに、俺は人種、もとい種族差別は大嫌いなんだ。』

『でも‥‥。』

『大丈夫、ルナとファルーは1週間自由に過ごしてくれればいいから。』

『わかった、でも、無茶はしないで。言ってもするんだろうけど、ファルーちゃんが待ってるからね。』

『まってる!』

『あぁ、勿論だ。』


俺が答えるとルナは小さいため息を吐いた。


「男の子ってみんなそうなの?」

「いや、男にも女にも色々いるだろう。俺なんかより戦闘を好む奴もいれば、血も見れない奴もいる。ただ俺は、理不尽と差別が嫌いなだけだよ。」

「普通といえば普通だけど。」

「自分から見れば自分以外は全て異常で、自分は普通なんだよ。これは、ある先生の言葉だ。」

「物は考えようってことね。」

「そうとも言うかもな。」

「‥‥‥‥はぁ。」


ルナは、また小さなため息を吐いた。


「見つけたらどうするつもりなの?」

「いや、俺の予想では見つからないと思っている。」

「え、なんで?」

「たぶんルナは今、俺がすぐに殴り込むだとか、捕まえに行くって答えたところに相手は大商会だから、用心棒も相当の強さだ、あの鎧の男もいると言おうと思っていただろう?」

「う、うん。確かに言おうとしてた。」

「そんな大商会なら1町の自警団に見つかることさえないと俺は思っている。一応自警団たちに付いて何かあれば助けに入るが、出発予定日までは何もないだろう。」

「そっか、じゃあ出発予定日前日まではゆっくりしてられるの?」

「あぁ、早めに抜けて宿に帰ってくるさ。ファルーのために午前だけにして戻ってきてもいいかもな。とりあえず、明日は1日頼んじゃうけど。」

「うん、任せて。ファルーちゃんといろんなとこ回ってくるから。」


そう言ってルナはファルーの頭を撫でる。

何日かぶりにしっかりと洗ったファルーの髪からは撫でただけで甘い香りが広がった。


「ファルーちゃん、ほんといい匂いする。」

「男の俺が簡単に言えない言葉を簡単に言ってくれるなよ。」

「でも、キミもそう思ってるんでしょ?」

「まぁな。」


俺も微笑みファルーの頭を撫でる。

疑問符はずっと浮かべているが嬉しそうに笑顔を浮かべるファルーは最高に愛らしかった。


糖玉・・いわゆる飴玉のことです。

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