覚醒
鶏がけたたましく鳴いていた。しかし、とても静かだ。ぱちぱちと何かが燃える音があちこちで木霊している。煙と血の臭いが鼻をつく。そして、死の臭いもそこらじゅうにあふれていた。村のあちこちで煙が上がっているのだ。地面には、まるでそこにあるのが当然というように、いくつかの死体が転がっている。そんな中で血に濡れたナイフを握っている男がいた。この惨劇を作りだした男。血はぬるりと光り、ナイフから滴って赤い水たまりを作っている。男は地獄のような村の情景を見ても泣きもせず、叫びもせず、ただ哀しげな表情を浮かべていた。どこかで銃声が聞こえる。とても静かなそれは、どこか哀しげにジャングルに響いていた。とても暑い。
小銃、拳銃、ナイフ。日本にいては現実感がないその単語が現実感を帯びていた。それらの単語とは遠いところにある介護施設で。健太は何も考えずにテロリストを眺めていた。
否、本当は考えたくなかったのだ。屈強な体を様々な装備が包んでいる、人間の皮をかぶった殺戮機械。その実物を前にして、そんなものに本当に立ち向かえるとは思えなかった。
それなのに、健太の弟の隼人や介護士の結城はテロリストに立ち向かおうとしている。
映画の観すぎだ、そう聞こえるように言っても彼らの決心は固いらしく、密に有志を集めている。
だいいちこいつらは本当にアルカイダ系のテロ集団なのか、健太は疑問でならない。
ニュースに出るアラブ系テロリストや反政府軍等の装備しているのはお決まりのAKだと相場が決まっている。AKというのは丈夫な小銃だ。健太もゲームでその名前は知っていた。泥に浸しても壊れず、そのまま撃てると言われていて、実際それは本当でそれくらい丈夫だ。しかもとても廉価で、どこにでも手に入る、と健太は聞いたことがある。しかし、フロア内が打ち解けた雰囲気になっても警戒の目を光らせているテロリスト達が持っているのは、健太の記憶が正しければMP5やM4と呼ばれる銃だ。映画ではどちらも「マシンガン」と呼ばれる事が多いが、MP5は拳銃弾を使用する近接戦闘に特化した短機関銃であり、M4は米軍の正式採用の小銃だ。健太は一時期銃の知識を鼻にかけていて知っていた。知っているからこそ、健太は首をかしげたくなる。MP5にしてもM4にしても廉価とは言えない銃であり、よく見ているとさまざまなオプションがついているのだ。装着すると銃声を小さくする装置を全員が付けており、これは使用回数があるためとて貧乏人には手が届かないし、遠くを見るためのスコープや軽量化のカスタムを行っている者もいる。これも貧乏なテロリストとは無縁だ。また大半が光学サイドと呼ばれる照準装置をつけている。そして、全員が赤外線ゴーグルを頭の上につけている。赤外線ゴーグルとは暗闇や視界が悪い場所でも周囲の状況を視覚できる装置で、やはり安くない。
健太はおかしさを感じずにはいられなかった。仮にも自爆を目的としたテロリストだとして、自爆を目的とする組織がこれほど装備に金をかけるものだろうか。テロリストは全員、防弾ジョッキを着ているし、とても自爆目的の連中には見えない。中にはヘルメットまでかぶっている。強盗にしても行動に説明がつかない。強盗とは素早く手っ取り早く行うものだし、第一なぜ銀行でも資産家の家でもなく老人ホームなのだろうか。こいつには何か裏がある。健太はそう感じずにはいられなかった。だからこそ健太は隼人たちの作戦には同意しかねた。だからこそ、このことを言って必死に説得しようと試みた。しかし、彼らは耳を貸そうとはしない。
「俺はどうすればいいんだろう……」
健太の口からふと弱音が漏れてしまう。自分も何かできるのでは、そう思っていたし、何より圭織に何もしなかったというのを責められるのが嫌だった。しかし、健太は自分には何もできないことにうすうす気が付いていた。
差をつけられたのは小学生からだろうか。健太は何となく隼人が苦手だった。嫌いでさえあった。スポーツ万能、学業優秀、物知りで聡明で母似の甘いマスクそんなステータスを持つ弟にいつも劣等感を感じ続けてきたせいもあるのだろう。隼人を陽とすれば、自分は陰の存在だと健太は感じ続けてきた。隼人が地元で頭がいいと言われた高校に入ったのに対して健太は中の下程度だったのが、最後の一押しだった。それが原因で健太堕ちるところまで堕ちてしまった。自信を無くした健太は自発的に何かをすることも何か目立つことするのも避けてきた。それが隼人のせいではないとわかっていても健太はそれにすがっていた。そして、今この瞬間もすがり続けている。
「どうすればいいんだろうな」
いきなり隣から聞こえた声に健太は驚いて顔を上げる。そこにはずっと沈黙を守り続けていた祖父の姿があった。
「ああ、そうだな」
ふたたび、虚空を眺め始めた祖父に健太はぶっきらぼうに言った。今この瞬間にも隼人たちがテロリストに襲撃をかけようとしているのに俺は何をやっているんだ……健太は小さくため息をついた。うなだれて現実から目を背けようとする、しかし現実はなくなってくれない。今まで隼人に対して感じてきた劣等感と同じく。
「兄貴。これをよろしく」
声が聞こえ、頭を上げると、隼人が少し疲れた顔で目の前に立っていた。隼人は無理やり健太に紙のようなものを握らせてきた。
「何するんだ」
健太は手のひらを開き、つぶれたそれを見た。乱雑に書かれていたが、それは確実に遺書だった。
「ばかやろう!」
震える声で健太が言った。健太はそれを地面にたたきつけると、思わず隼人の頬を殴っていた。それは隼人を思ってのことではない。隼人が死んで、健太が生き残ればどうなるか、それはわかりきったことだった。俺は皆に後ろ指をさされたくない……そんなのはもう嫌だ。健太は強く唇をかんだ。
「ごめん、それは無理だ」
隼人は鋭いジャブを健太の頬に叩き込んだ。一瞬健太の意識が飛ぶ。かたい畳。強い照明。意識が戻っても、景色は何も変わらない。やはりこれは夢ではない。
「ま、まて」
起き上がろうとした時にすでに隼人は消えていた。しかし、あきらめきれず健太は祖父を連れて立ち上がった。頬をさすりながら、必死に人ごみをかき分けて隼人を探す。しかし祖父を連れているのでうまく歩けず、健太はすぐに立ち止まってしまう。
「ちくしょう……」
健太は振り返り、足手まといな祖父を見た。相変わらず視線は虚空を漂っていて、健太は思わず手を挙げたくなった。殴られた頬はまだ熱を発していた。しかし、軽く握りしめられた拳は祖父に達することはなく、拳はゆっくりと垂れ下がる。
「ちくしょう……」
健太は小さく喘いだ。
健太はゆっくりと足を崩し、その場に座り込んだ。目を閉じて大きくため息をつく。まだ少ししか時間がたっていないのに、いろいろなことが起こりすぎていた。健太は楽な体勢を取り、疲れた体を少しでも癒そうと試みる。まぁどうにかなるさ。目を閉じたまま、何も考えないように努める。そうしているうちに激しい睡魔が襲ってきた。健太はそれに抗うこともなく、そのまま眠りについてしまった。指に強い痛みを感じて、健太はいやでも睡眠が中断されてしまう。健太は大きく体を揺らして目覚めた。フラッシュをたかれたように真に強い光が差し込み、思わず目を細める。
「ん……?」
慌てて周囲を見渡すが、さっきと状況はほとんど変わらない。やはり妄想じみた状況は現実だったのだ。健太が慌ててフロアの時計を見ると、数分しかたっていないことがわかる。妙に体の節々が痛い。鼻で深呼吸をしながら健太は瞬きをしながら周囲を眺めた。さっきの痛みは何だったのだろうか。ぼんやりと床を眺めていると、聞き覚えのある声が聞こえた。隼人の声だった。
「トイレに連れて行って下さい」
声のほうを見ると、テロリストに身体検査を行われている隼人の姿が目に入った。愛想笑いをしながら、おとなしく身体検査に従っている。検査が終わり、ぱん、と肩を叩かれ隼人はテロリストとトイレへと向かった。木で縁どられたガラスでできたドアが音を立てて閉じていく。健太にはその間がとても長く感じられた。何も起こらないでくれ……。ただそう願うばかりであった。しかし、二人がトイレに消えて数分、くぐもった銃声が聞こえた。健太はやれる限りドアを見つめた。しかしそこに映っていたのはガラスで曇った暗闇だけだった。フロア内が再びざわつく。健太の背中を冷たい汗が伝う。テロリストたちは素早く話し合うと数人でトイレへと向かった。残った3人が目だし帽から鋭い目で皆を睥睨する。素人目から見てもかなり統率がとれていた。しかし、再び銃声がすると、一人が無線で呼ばれて出て言った。続けてサイレンサーに抑えられた情けない銃声が聞こえる。叫び声、どたどたと駆ける音。そして、やけに近くで誰かが倒れる音がした。健太はそれらをぼんやりと聞いていたが、もみ合う声があまりにも近いので周囲を見渡すと、それはこのフロア内で起きていた。結城を先頭に数人が一人のテロリストを押し倒し、暴行を加えていた。テロリストは英語で何か乱暴に叫んだ。しかし、すぐに一人が駆け寄ってくる。
「今すぐにそいつから離れろ!」
テロリストは神がかった速さで腿のホルスターから拳銃を抜くと、天井に向かって一発発砲した。それにはサプレッサーがついていなく、乾いた銃声がフロアに響き渡った。一瞬にしてフロアは悲鳴や走る音であふれた。健太は何もできず、ただ祖父の手を離さぬようにしていた。中には何が起こっているかわからず、ただおびえている老人もいた。テロリストを取り囲んでいた者たちは、人ごみにまぎれた。襲われたテロリストは英語で乱暴に何か言うと、自分の体をまさぐり始めた。ぱすぱす、とサイレンサー付の銃声がどこか遠くで聞こえた。健太のすぐそばに静かに結城が来て、肩を叩いた。健太はテロリストに夢中で近くに来たのが結城であることしか意識しなかった。襲われたテロリストは、すぐに異変に気が付き仲間に何か早口で言った。健太はテロリストたちに夢中で結城には目もくれない。健太もすぐに襲われたテロリストの持っていたMP5短機関銃がない事に気が付いた。しかし、そこで初めて結城がテロリストのMP5を持っていることに気が付き、思わず健太はぽかんと口を開けた。襲われたテロリストは無線で仲間を呼び、もう一人は、
「無駄な反抗はよせ、今すぐ銃を返すんだ!」
とフロア中に響き渡る声で叫んだ。
「やばい……」
結城が小声で言うのを健太はただ唖然として眺めていた。結城は見るからに青ざめて、震えていた。今頃になって自分のした事を客観的に見ることができたのだろう。しかし、もう遅い。震える結城を見て、健太は非常に恐ろしいことを考え付いた。
「結城さん、それ俺が持ちますよ」
「ええ……!」
小声ながらも結城が驚いたのは十分感じ取れる声だった。そんなことをしている間にもテロリストはフロア内を散策している。プリーズ、そう言われて皆が手を挙げる。銃口を見せられて、手を上げない者はここにいないだろう。重い沈黙の中、わけを知らず喋る老人の声が響いていた。
「そんなことを言ったって、君はどうするつもりなんだ」
結城が周りを見渡して言った。瞳が揺れていた。相当恐れているらしい。頬が汗で濡れて油っぽく輝いていた。
あんたこそどうするつもりだったんだ、とは健太は言えなかった。
「大丈夫。ちゃんと考えています」
と言いながらも、健太は何も考えていなかった。テロリストの対応やフロアの状況から殺されたりはしないだろうと思ったのだ。健太は、テロリストたちが頭のいい連中だと考えていた。それに自分だけ無傷で生き延びたりしたら……そう考えるだけでやるしかなかった。じりじりとテロリストは近づいてくる。軍靴の音がだんだんと近づいてくる。装備が揺れる音が次第に大きくなっていく。健太のシャツはあせでぐっしょり濡れていた。汗のにおいと正接の独特のにおいが鼻をつんとつく。それくらいに感覚が鋭くなっていく。のどがからからだった。
「……おれ、おれがやりました!」
健太は意を決し結城の手からMP5を奪い取ると情けない声で叫んだ。無意識にぐっと目を閉じる。フロア中の視線が健太に集まった。結城が下で、あわあわと口を動かしていた。
「動くな。片手は頭の後ろにやるんだ。動くな」
テロリストは健太に言うとハンドサインで片方と連絡を取り、ゆっくりと健太に近づいていく。もう一人は健太や他の反逆者を狙撃できるように静かに動く。健太は自分の動機が聞こえるほど緊張していた。パン、パン。ぱす、ぱす。どこか遠いところから情けない銃声が聞こえる。
「大丈夫だ、動くんじゃないぞ」
大丈夫だ、なだめるように手を前に突き出してテロリストは静かに近づいてきた。もちろん拳銃の銃口はしっかり健太をとらえている。健太は片手を頭の上にやるとMP5を撃てないように持った。テロリストは健太を刺激しないようにゆっくりと近づき銃を受け取ろうとした。しかし次の刹那、
「動くな!動くと撃つぞ!」
片方のテロリストが叫び、もう片方も伏せながらも拳銃を向けた。フロアが大きくざわついた。健太には何が起こったかわからず、震えが止まらなかった。助けを求めるように健太が周囲を見渡すと、健太の持っていたMP5を祖父が掴んでいることに気が付いた。祖父はMP5の銃身を掴んで微笑んでいた。
「なっなにをやって……」
驚いて叫ぶ健太を遮って、
「動くな!手を後ろに!お前は銃をおけ!」
今にも二人を狙撃しようとしているテロリストの一人が叫ぶ。
「大丈夫だ。銃を置け」
健太の近くにいたテロリストはゆっくりと立ち上がり、祖父に言った。
MP5が震えていた。怯えているのではなく力がないのだろうと健太は思った。テロリストは静かに祖父にゆっくり近づいてきてMP5をつかんで取り上げた。祖父は力が抜けたように倒れ、二人のテロリストは即座に反応した。しかし祖父は本当に倒れただけだった。二人は英語で何かを言い、笑った。しかし二人はすぐ無表情に戻り、
「お前ら、後で俺たちについてこい」
と健太と祖父に命じた。健太たちは一人にぴったりと照準をつけられていて身動きが取れなかった。
それからすぐドアが乱暴にあけられた。二人のテロリストが負傷した一人を丁寧にかつ素早く運んでいく。他のテロリストでも怪我をしている者がいた。包帯やガーゼににじんだ血が生々しい。激しい戦闘だったようで、テロリストたちは傷の手当てをしたり、水を飲んだり携帯食料をかじって疲れを癒していた。警備担当の者たち以外は何か乱暴に言っていていた。健一は足を震わせながら自分が連行されるのを待っていた。何をされるのだろう。そう思うと不安で仕方がない。祖父のほうも緊張で顔をこわばらせている。
「おい、行くぞ」
テロリストが三人、健太に銃口を向け近づいてきた。一人がドアを開けて下品にほほ笑んだ。健太の頬を冷たい汗が伝う。
「わかりました」
健太は震える声で言い、祖父の手を握って歩き出した。テロリスト四人に囲まれて健太たちはフロアを出た。廊下は暗くて静かだった。まるでこの世界から隔離されたかのような現実感のわかない静けさ。健太はテロリストたちの眼光に気おされて前を向くことができない。
テロリストたちは日本語でも英語でもない言語で会話をしながら静かに進んでいった。火薬とむさくるしい男の汗の香りに健太は倒れそうだった。何回か角を曲がると二人一組でテロリストは二つに別れた。何か言葉を交わして二人のテロリストたちは去って行った。
それから少し経った頃、英語で一回放送が入った。健太には何を言っているかわからなかったし、状況が状況で気にすることが出来なかった。放送の声が明らかに最初の放送とは違う事だけはわかった。放送からすぐ、二人は小さな個室に入れられた。健太を連れてきたテロリストの片割れが警備につき、一人は去って行った。テロリストはプラスチックの手錠を取り出すと健太と祖父にはめた。柔らかく冷たい感触が少しだけ健太を落ち着かせた。警備を務めるテロリストは、健太たちの拘束を確認すると部屋から出て行ってしまった。健太は大きく安堵のため息をついた。また遠くで銃声がした。ここの連中は本当に銃撃戦が好きなんだな……。祖父は疲れたようにうなだれていた。手錠は窮屈で体の節々が痛かった。体を少しでもほぐそうと窮屈に体を動かしていると、テロリストが戻ってきた。ドアが音を立てて閉じられる。テロリストの息は荒く、腕が血で濡れていた。健太の体は一瞬で緊張した。テロリストは予備動作なく健太を殴った。とても固く、威力のある拳だった。健太は抵抗できずに吹き飛ばされてしまう。一瞬にして口の中に血の味が広がる。テロリストの腕から血がぽたぽたと落ちた。
「ぐぅう……」
意識を失いかけながらも健太はテロリストを見た。息が荒く、さっきまでの冷静さはなくなっている。
「悔しいか……ハハハ、くあしいだろう」
さっきの連中とは違い、このテロリストは日本語が達者ではないらしい。健太は最初の放送の声と同じだと気が付いた。テロリストは腰の鞘からナイフを抜き、見せつけるように健太たちの前に突き出した。ナイフは照明を浴びてギラギラ輝いていた。テロリストはナイフを健太に突きつけると、小さく笑った。健太の体中から汗が噴き出した。鉄の冷たさに、テロリストの息づかいに震えが止まらない。健太は放尿してしまうかと思った。勢いよくナイフがきらめき、健太の頬を切った。
「うっ」
痛みはなかったが、流れ出る血の生暖かい感触に今にも気絶してしまいそうだった。健太は確かめるように何度も目を閉じ、何度も手のひらを開いては閉じ、自分の生を実感した。健太に飽きたのか、テロリストは楽しむようにゆっくりと靴音を響かせて祖父のもとに向かった。健太はゆっくりと唾を飲み込んだ。テロリストはナイフの血を振り払い、祖父に浴びせた。それから、がりがりという音が個室に響き始めた。何をしているのだろう、そう考える前に、おぅっ、という悲鳴に思考はかき消されてしまった。どさ、と誰かが倒れる重い音がした。体中の汗が冷たくて健太は震えた。殴られて吹き飛んだせいで健太からは祖父のほうが見えず、何が起きているかわからなかった。音がしてすぐ、足音は立ち上がると、ゆっくりと健太の方へ向かってきた。
「やめてくれ……」
健太は見えないテロリストに懇願した。しかし、足音は確実に健太に近づいてくる。
「頼む、やめて……」
健太の手に冷たいものが当たった。これから始まることを想像して健太は寒気を覚えた。
恐怖でのどがつぶれ、叫ぶことさえできない。もうだめだ……。誰にも知られず、こんなところでこの人生が終わると思うと悲しくてたまらなかった。恐怖に押し潰されて健太の意識は消え去ってしまった。




