『プロローグ――鮮血に芽吹く竹林』
久しぶりの投稿です。約1年かけて構想を練ってました。
よろしくお願いします。
足元に不気味な幾何学模様が浮かび上がったかと思えば、視界が凄まじい閃光に塗りつぶされた。俺たち六人は、抗う術もなくその輝きに飲み込まれた。
「――魔法陣?」
背後で靖が呟くのが聞こえた。
(魔法陣だと……?)
疑問を反芻する余裕なんてない。
脳内に濁流のごとく流れ込んできた情報の奔流に、激しい頭痛と吐き気が襲う。俺は膝をつき、必死に意識を繋ぎ止めるしかなかった。
どれほどの時間が経っただろうか。
苦痛が和らぎ、恐る恐る目を開ける。
そこは、荒れ果てた荒野の谷底だった。逃げ場はない。両側には切り立った崖がそびえ立ち、正面からは異形の群れが迫っていた。
その数、数十体。
先頭を駆けるのは、体高が俺の身長、百七十五センチほどもある超大型の「犬」だ。
だが、毛皮の代わりに毒々しい色の鱗をまとい、剥き出しの牙からは粘りつく唾液が滴っている。
他にも、地獄絵図から這い出してきたような餓鬼や、牛や豚の頭を持つ筋骨隆々の巨人たちがうようよとひしめいていた。
「ミノタウロスだ……!」
呆然と立ち尽くす清の声に応じるように、一際巨大な牛頭の巨影が、大地を揺らして歩を進めながら咆哮を上げた。
異形たちが狂乱し、速度を上げる。あと、数メートル――。
四つん這いの姿勢の俺に犬の爪が襲い掛かった。咄嗟に転がったがその爪は俺の右腕を掠り、皮膚が裂け、血が地面に滴り落ちた。
俺の中でどす黒い怒りが弾けた。
(さっきまで、俺たちは京都の「竹林の小径」を楽しんでいたはずだ。それが何で、こんな場所で化け物に殺されなきゃいけないんだ!)
叫びに似た願いが、脳裏に竹林のイメージを鮮明に描き出す。
次の瞬間、鮮血が散った地面から光の奔流が溢れ出した。
爆発的に成長する竹。あっという間に谷底を埋め尽くしたそれは、密集した鋭利な竹藪となり、異形たちを串刺しにして空へと突き上げた。
凄惨な光景だ。だが、不思議と恐怖はない。流れ込んできた「記憶」が、この血の匂いを過去に経験した、しかし二度と思い出したくない「日常」だと告げている。
竹藪という鉄格子に阻まれ、身動きの取れなくなったボス――ミノタウロスを前に、俺は迷わずリュックから「それ」を取り出した。
革の鞘から引き抜いたのは、鈍い銀色の刃紋を宿す両刃鉈。指先で刃先を撫でる。その感触を俺の指は、魂は確かに覚えていた。
(ついさっきまで、ただの高校生だったはずなんだがな……)
サンカと呼ばれた幻の漂泊民。その末裔として、異常な歴史を背負わされた人造の「作品」。 俺は、俺の中に目覚めたその殺戮の技を、受け入れるしかなかった。
◇ ◇ ◇
異世界ファンタジーに、古来より伝わる日本の知恵『サンカ』の技術を本気でぶつけてみました。
ただの竹が、最強の凶器に変わる瞬間のカタルシスをぜひ味わってください。
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