暗器の話 化物の話
最初の攻撃は投げナイフだった。ほとんどノーモーションスロー、それでいて速度は充分。
投擲動作があまりにも自然すぎて気づくのが遅れる。頬を少し切る。連投されたナイフを紙一重で回避、ここで『鉛筆』を晒したくはない。かわしているうちに今度は廢縞十鬼自身が迅雷か颶風じみた速度で間合いを詰めてくる。
俺も前に出る。
颶風から閃光に変わる初太刀を俺は左手首を掴んで止めた。廢縞は逆の手で時間差のナイフを閃かせつつ腕を捻って俺の拘束を解く。
(チャンス……!)
俺は『鉛筆』でナイフを弾き飛ばした。手からナイフが溢れる。連続して足を振り上げ爪先で顎を狙う。が、廢縞は異様な反射神経で無理矢理下がりそれをかわした。右手を弾き飛ばして隙まで作ったのに回避どころか再び左手のナイフで反撃まで繰り出しやがる。俺は振り上げた足を今度は振り下ろし腕を叩き落とす。
俺は直後に足を戻し逆の足でバックステップし塀に背をつけるまで後退する。右手で新しいナイフを抜いた廢縞が寸前まで俺が居た空を切っていた。続く投擲、『鉛筆』で弾く。
「寸鉄か。味な武器を使うじゃないか」
(いまので『鉛筆』を見破るかよ……)
『鉛筆』は握り込めるサイズの鉄の棒で正確には寸鉄と呼ばれる暗器だ。本来は小さい刃がついているが『芯』があるからそれはなく主に防御用。
それをいつも巻いている衝撃吸収能力の高い『テープ』で固定しナイフを防いだんだが『テープ』に邪魔をされて『鉛筆』はほとんど見えない。
素人目には俺が素手でナイフを払ったように見えたはずだ。
「んー、投げナイフは通じない、接近戦はやれなくはないけど足技が面倒か。どうやって殺そうかなぁ」
「諦めて帰る、って選択はないのか?」
「あははっ、おもしろい冗談を言うね君は。ボクの視界に君みたいな美味しそうな獲物がいるのに、この『捕食者』が涎を抑えれるはずがないじゃないか」
……化け物め。
「あ、そうだ。君を殺す方法を思いついた」




