76【条件】
「もしエレナが俺のお願いを聞いてくれるなら俺が父上の説得をしてもいいよ?」
「「え?」」
アドニス様の存在を完全に忘れて言い合っていた私達親子は、突然のアドニス様の言葉に驚き素っ頓狂な声を出してしまった。
「おい、もしかして親子揃って俺の存在を忘れてたなんて言わないよな?」
「や、やだなぁ〜アドニス様ったら。
わ、私達がアドニス様を忘れることなんてあるわけないじゃないですか。
で、ですよね、お父様?」
「そ、そうですよ、殿下。
私は公爵家の当主ですよ。
殿下を忘れるなんてあるわけないじゃないですか。
エレナも自分の婚約者候補を忘れたりしませんよ」
私とお父様は必死に誤魔化す。
「まあ、いい。
で、どうする?」
「え?
何がですか?」
「おい、話聞いてなかったのか?」
「そ、そんなことないですよ?
あ〜、えっと〜」
私は必死に記憶の中を探る。
何言ってたんだったか?
今日の晩御飯の事だったかな?
それともこの後のデートのお誘いとか?
「はぁ〜。
もういいよ。
もう一度言うぞ?」
「ま、まぁ、私はちゃんと聞いてましたけど?アドニス様がもう一回言いたいのでしたら聞きますよ?」
私は、余程焦っていたのかどこぞのツンデレだとツッコミたくなるような言い方になった。
「おい、いい加減にしないと怒るぞ?」
「も、申し訳ありません!」
私は机に額を叩きつけながら言う。
「はぁ〜。
お前は本当に。
じゃあ、もう一回言うから次はちゃんと聞いておけよ」
「は、はい!」
「もしエレナが俺のお願いを聞いてくれるなら俺が父上の説得をしてもいいぞ?」
「よろしくお願いします!」
私は即答する。
「わかった。
俺に任せろ」
「それでアドニス様、お願いとはなんですか?」
「普通はそれを聞いてからお願いするんだけどな」
「大丈夫です。
私はアドニス様を信じてます」
私はニッコリ笑顔で言う。
「まあ、いいか。
俺のお願いは、エレナと正式な婚約者になること、そして学校卒業と同時に結婚することだよ」
「はぁ〜」
アドニス様の答えに思わずため息が出てしまった。
「え!?
なんでため息!?」
「アドニス様。
私は貴方のこと好きですし、このまま貴方と婚約して結婚まで行くんだろうな、行けばいいなとは思っていました。
しかし、そういうことはこういった交換条件の材料みたいに使うのではなく、もっと綺麗な景色が見える場所で美味しいディナーを食べている時などロマンチックにしてください」
「そ、そうだな。
悪かった。
じゃあ、条件を変えようか」
「いえ、それはいいです」
「え?」
「私は元々アドニス様と結婚する予定でしたから実質私には何も損害がない取引なのでこのままお願いします」
「はははっ!
本当に君は面白いな!」
「そうですか?」
「ああ、もう最高!
じゃあ、条件はこのままで行こう!
でも、プロポーズはまたちゃんとするよ」
「はい、よろしくお願いします」
「あ、でも、父上からの許可が出るまでこの家で軟禁のままで頼むよ。
あと、俺も頑張ってみるけど父上から何か条件が出るかもしれないよ」
「はい、わかりました。
お父様。
王様からの返事が貰えるまで兵をそのまま貸してもらってもいいですか?」
「ああ、いいぞ」
そんなこんなでフォンセのことについての話し合いが終わった。




