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23話

 戦車はどんな場所でも走行出来ると言う妄想は一体何処から来たのか?それは多分、歩兵から見た戦車への畏敬の念、恐怖から現れた妄想なのだろう。

 装輪車にとっての悪路は戦車にとっても悪路なのは変わりない。泥濘地は装輪車じゃとてもじゃないが進めないのに対し、装軌車は悠々と走っていく。

 確かにこれは間違いじゃない。だが、正しくも無い。


「雪上戦において最も重要なのは、地形の観察だ。

 雪溜まり、凹地、その他地形の差異に気を払え」


 シマダはマップを開きながら無線で会話していた。

 2両が会敵する場所は丁度林端と畑の間で、開けている土地だった。

 畑なので道以外は余り除雪されておらず、偵察隊からの情報では積雪が既に50センチは有るらしい。

 下手をすれば亀になりかねない場所もあるだろう。


「それと、積雪地は特に履帯外れやすい。

 操縦手達は知ってるかも知れんが、再度その事を考えて操縦してくれ。止まったら死ぬからな!」


 シマダの言葉にシマズは返事をした。時速40キロ。雪道を行く速さではない。

 しかし、その速さで走らなければ追い付けないのだ。

 シマダはバラクラバで顔を守り、傍から見れば完全に強盗だ。車体の上には何時もならグリーズガンを置いているが、車体に凍り付くので、自分の首に下げて居る。

 

「偵察隊との合流まで地図をよく読んでおけよ」


 シマダはそう言うと車内に引っ込む。道はほぼ一本道。迷う事はない。

 たまに野生の動物が居るが、エンジン音にビックリして逃げていく。

 そこから1時間後、偵察隊と合流し詳しい情報を集めた。


「つまり、敵はロシア戦車とドイツ戦車が多いわけだな?」

「ああ、国防相2と筆ヒゲシリーズもいる」

「筆ヒゲを詳しく」

「確認したのはT-10までの全シリーズだ。2が一番多い。

 ノンナ様万歳だ」


 偵察隊のプレイヤーが告げるとシマダは一笑に付し、礼を言ってから自身の小隊に向き直った。


「聞いたな?

 デカイ戦車が居る。足狙われたら一発だ。キューマルならスカート付いてるが、信用するな。フェンダーなんかちょっとした事で一瞬で曲がる。125mm食らったら履帯を一発でやられるぞ」


 シマダはシマズとサナダを見た。

 2人は手元の端末を使って戦車を調べている様だ。


「なんだ?国防相と筆ヒゲが分からねぇの?」

「は、はい。すいません……」


 シマズが頭を下げるのでシマダはそれを気にすんなと告げ、KV2とISシリーズで検索してみと告げる。

 何方もロシアツリーだからと笑う。


「俺等よりも一個下、二個下位の雑魚だがそれでもやられる時はヤラれる。気を抜かずに全力でやれ。遠慮は要らねぇ」


 シマダはそう告げると全員乗車用意!と叫ぶ。全員が戦車やヘリの前に駆け足で並ぶと、シマダが叫んだ。


「報告!

 車長!」

「砲手!」

「操縦手!」

「装填手!」

「乗車用意!」


 シマダの号令に各単車ごとの人員が駆け足の体勢をとった。


「乗車!」


 そして、此処に一方的な虐殺を行う準備が完全に整った。

 2両の戦車は偵察隊との合流地点から前進して、林端から少し出た盆地にハルダウンさせる。

 砲塔だけを出して、未だ見えぬ敵を視察している。


《フッ!エミヤ、アーチャー。

 これよりアーチャーは威力偵察に入る。LDはPL6と想定》

「バーサーカー了!

敵AA装備を優先で狙え。」

《フッ!セイバー了解。

 気を付けてね》

《フッ!アーチャーりょ!

 行ってきます!》


 森の中から一機の攻撃ヘリ、アパッチロングボウが飛び立っていく。匍匐飛行、地形随伴飛行を開始した。

 シマダは無線を開く。


「あー……エミヤ、バーサーカー。

 アーチャーの攻撃を持って小隊系を全系、開戦記念日にて通信を行う。

 返答の要無し」


 そして、隣のシマズに顔を向ける。シマズはシマダを見ていたらしく、手を挙げた。シマダもそれに手を挙げて答え、車内に引っ込んだ。

 すると、アキヤマがスッと紙コップにコーヒーを注いで差し出して来た。

 魔法瓶三本に作り置きしているのだ。砂糖とクリープをふんだんに放り込んだそれは実に甘い。シマダはそれを受け取る為に手を差し出すと、手が震えていた。

 アキヤマはそれを見ても何も言わず、ソっと手をにぎる様に紙コップを渡す。


「すまんな」

《いえ、寒いですから》

「ああ、寒いもんな。

 すまんが、全員分配ってくれ」

《分かりました》


 シマダはマップに目を落とす。

 マップはシマダの小隊や味方として無線の系に入れた戦車や航空機が表示される。味方は青、小隊は緑だ。そして緑の航空機を表すブリップが速い速度でシマダとシマズの前方を飛んでいく。

 コーヒーを飲みながらジッとマップを見詰めていると不意に無線が入る。


《フッ!エミヤ、アーチャー。前方凡そ……10、10キロ。あー雪煙を確認!雪煙を確認!

 レーダー捜査を開始する!》


 次の瞬間、シマダ達の現在地より凡そ50キロの地点が真っ赤に染まる。


「アーチャー、こちらバーサーカー。敵をマップ上に確認した。

 お前のタイミングでやってくれ」

《フッ!アーチャー、こちらセイバー!

 せ、セイバーも確認しました!頑張って!》

《バーサーカー、セイバー了解。

 これより攻撃を開始する。以後の通信は全系に切替える》


 無線が切れ、そして、オープン回線と名付けられた開戦記念日の周波数からアーチャーの発射と言う声が聞こえた。

 オープン回線は基本的に雑多な会話が流れている。そんな中で突然発射等という単語が流れた為に回線は一瞬で静かになった。


《フッ!エミヤ、アーチャー。

 敵対空戦車と思しき車両を1両撃破。敵の対空砲火が凄い。退避し、事後所定の行動に移る》

「バーサーカー了!

 ナイス拳!」

《セイバー了解!

 気を付けてね!》


 シマダはマップを拡大し、アーチャーことサナダが解明した敵情を詳細に把握する。行軍の形としては前方笠形に機甲部隊が展開し、後方に歩兵部隊や騎馬部隊が続いている。

 また、軽戦車や豆戦車は歩兵部隊の列中におり、移動速度等から馬車、或いはソリを牽引し、そこに歩兵や物資を積載していると思われた。


「セイバー、バーサーカー」

《こ、此方セイバー》

「敵の機甲部隊の形はパックフロントを破る為のパンツァーカイルって陣形だ。

 見ての通り、重戦車を中心に添えて敵の対戦車陣を切り崩す陣形だ。最先頭のT-10を討ち取る栄誉をお前にやろう。

 一番槍の誉れはアーチャーに譲った。ならば敵の中で最も強い武将の首を討ち取る誉れをお前が取るのだ」

《フッ!バーサーカー、此方セイバー。

 バーサーカーは要らないのですか?》


 セイバー、シマズの言葉にバーサーカー、シマダはニヤッと笑う。


「セイバー、バーサーカー。

 バーサーカーは小隊長車であり大将旗掲示車両であり、御召戦車である。

 アーチャーやセイバーよりも名誉を受けている。故に、気にするな」

《せ、セイバー了解》


 シマダは双眼鏡を覗き、敵を監視する。敵としてはもうこちらに攻めてくるしか無いのだ。そして、航空機部隊は戦闘ヘリと壮絶な戦いを繰り広げるだろう。

 地面を高速で這うようにして飛ぶロングボウを撃つのだ。低空で飛ぶと雪を巻き上げて他の航空機の妨害になり、高所から撃ち下ろす形にすると雪からの光の反射と真っ白な背景により距離感がわからなくなり地面にキスをしかけるのだ。

 シマダはその視界に雪煙を確かに認めた。


《ば、バーサーカー。こ、こちらアーチャー。敵を目視に捉えた》

「バーサーカー了解。

 お前のタイミングで撃て。暫くは鴨撃ちだ。目をつぶってても当たるぞ」


 シマダはサイカにレーザー測距と告げる、


《5千18です》

「あと2キロか。

 キューマルは確か走行間射撃で3km当てやがったよな」

《申し訳ありません。存じ上げません》


 シマダは気にするなと告げると90が撃ってからなら撃っていいぞと告げた。

74式戦車の搭載ている93式装弾筒付翼安定徹甲弾の有効射距離は3kmで414mmだ。つまり、当たれば4km5kmでも十分にソ連軍重戦車達を貫通せしめるだろう。しかし今回は90式戦車へ先制攻撃を譲った。90式の砲手たる上富良野には最近でも3kmで撃てと言ってある。

 そうしないと100両もの装甲車両相手に漸減邀撃出来ないのだ。


《砲手、先頭を走るえっとT-10?だっけ?それを撃って下さい。

 当てれますか?》


 シマズはあえてオープンチャンネルで車内への指示を出した。シマダの目には明らかに動揺した様に少しばかり左右に動いたT-10が映った。


《撃て》


 ドッ!と車内に居ても聞こえる砲声が轟く。T-10は完全に横滑りした。舵を切って逃げようとしたのだろう。しかし、もう遅い。車体側面を晒したせいで弾薬庫に直撃したらしい。砲塔が吹き上がった。その直後、サイカが砲撃をする。

 園となりを走っていたIS-2後期型に直撃しエンジンルームから火を吹き上げた。


《フッ!こちらセイバー。T-10撃破》

「バーサーカー。IS-2撃破。

 ほら、勝手に撃て。距離はまだ5kmだ。今のうちに削って削って削りまくるぞ」

《フッ!セイバー了解》


 そこからは一方的に敵機甲部隊を攻撃していく。敵は確実に動揺していた。敵も発発を炊くが、焚いた所でまた別の姿が見える敵を撃つ。また、世代が第一世代が限界の戦車には第3世代クラスのサーマルサイトを保有する74式や90式には何の効果もない。

 つまり、自分たちの目も奪ってしまうのだ。

 一時間ほどで部隊は壊滅した。航空機も二両を狙おうとするが、一機でも二両の方へ向かおうとすれば機関砲とロケットが機甲部隊や歩兵部隊に向く。

 つまり、ヘリを全力で止めないと戦車二両ではなくヘリ一機にやられてしまうのだ。

 増援部隊にはワイバーン部隊も居たが、ワイバーン部隊の攻撃はIEDと魔術師による魔術攻撃、騎士の持つロングランスによる刺突のみだ。なんちゃって攻撃ヘリが世界最強の攻撃ヘリに勝てる訳もなく、チェーンガンで殺された。

 一時間もすれば航空部隊はほぼ全滅し、残るは歩兵部隊や騎馬部隊、取るに足らない軽戦車豆戦車と言った所謂雑魚だけになる。

 そして、獲物が無くなって来たことで二両の戦車は前に出ていた。歩兵を逃がすため軽戦車や豆戦車も前に出るが、まるで歯が立たない。


「セイバー、バーサーカー」

《フッ!こちらセイバー》

「軽戦車はしょうがねーけど、豆なんぞに砲弾使うな。もったいねぇだろうが。

 キューマルは軽と対空潰してくれ。豆は俺が引き受ける」

《フッ!セイバー了!》


 豆戦車にHEAT弾を撃ち込んでいた90式は狙いを軽戦車や対空戦車に変えた。豆戦車は90式に対して機関砲を撃つが貫通せず、砲塔に付いている砲塔雑具箱を吹き飛ばしただけだ。

 シマダは無線の送信ボタンを開く。


「操縦手!ブレードそのままで豆戦車に衝角アタック!」

《操縦手了解》


 74式戦車は近くの豆戦車に狙いを定める。豆戦車は近付いてくる74式戦車を認めると搭乗員達は大慌てで戦車を放棄した。直後、豆戦車は74式戦車の排土板の爪によって側面が大きく凹み、履帯や誘導輪、転輪が吹き飛び、銃身も折れて砲座から落脱した。

 74式戦車はその場に一旦止まり、逃げ出したプレイヤーに対して砲口を向けた。


「バカ!

 プレイヤー殺したって復活するんだから復活しねー方を殺せよ!弾撃つなよ!もったいねーから轢き殺せ!」


 シマダは顔を出すとプレイヤーに手を振る。


「ナイス拳!」


 そして、74式は少し下がると超信地をしてプレイヤーの隣でプレイヤーと同じ様に尻餅をつき、恐怖で小便やら涙やら何やらを漏らしていた現地人を轢き殺す。

 90式は軽戦車と対空戦車を破壊してき、74式はもう砲塔すら動かさず豆戦車や騎馬隊、歩兵を次々と轢き殺していた。プレイヤー意外の現地人が全員轢き殺された所でシマダが号令をかけた。


「エミヤ、バーサーカー。

 今宵の地獄、ここまで!」

装軌道ギリギリに有線敷設する普通科って割と真面目にナニ考えてんの?


ドラムロール5本分ぐらいの有線盛大に引きちぎっちゃったけどしょうがないよね

林端あるのにそこに置かずに楽した結果がそれだもの


軌道輪にぐるぐる巻きついてて笑うしかなかったよ

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