脚本《ラスカー家リビングⅢ》
――そして夜は明け、次の日になる。舞踏会、武道会開催当日。
《継母》『それじゃあ、私たち二人は”武道会”に行ってくるわ!』
《子供》『なんとしてでも優勝賞金を勝ち取って帰ってきてください!!』
《義姉》『戯け。誰にものを言っとる。誰が負けると言うのじゃ』
《子供》『あ、すみません。しかし、ぎっくり腰には気をつけてくださいねジジさん』
《義姉》『分かっとる。心配は無用じゃ』
《子供》『何かあれば連絡して下さい』
《継母》『ああ、何かあれば連絡する』
《子供》『ええ、待っています。それでは気をつけてください御二方』
《義姉》『安心せい。賞金獲得して億万長者になっとるわい!』
《継母》『そうだな。勝てば一攫千金! 待ってろ王者!!』
《子供》『いってらっしゃいませ』
――継母、義姉退場。取り残されたシンデレラは、困った様に空を見上げた。物思いに耽るシンデレラの側に魔女が忍びよる。
《子供》『…………ああ、本番になってしまった。しかし、どうすればいいんだ』
《魔女》『何が心配なの?』
《子供》『それは勿論って、ま、マミィーさん!!』
《魔女》『はぁーい、昨日ぶりね!』
《子供》『どうもどうも……って、不法侵入者ですよね!!?』
《魔女》『あら、昨日の猥褻物が何か言ってる』
《子供》『俺が悪かった、すみませんでした。本当にごめんなさい』
《魔女》『あらあら、破廉恥野郎が何か言ってるわ。面白い』
《子供》『本当に俺が悪いかった! 許して下さい、女神様マミィーさん!!』
《魔女》『……まあ、茶番はこれぐらいにして』
《子供》『え、今の茶番だったの? 本気だったよねマミィーさんの目。マジな目だったよね?』
《魔女》『全裸で舞踏会に乗り込むのと私に今すぐ謝るのどっちが良い?』
《子供》『すみませんでした!!』
《魔女》『んじゃ、さっさと魔法かけて舞踏会行って来なさい”塵屑”』
《子供》『もはや役名でも言われなくなった!?』
《魔女》『んじゃ、ほら。さっさと魔法かけるわよ』
――魔女が杖を振り上げる中、焦ったような顔つきでシンデレラが魔女に尋ねた。
《子供》『そうだ、マミィーさん! 俺はとても大切なことを思い出してしまった!!』
《魔女》『あら何かしら? 南瓜なら昨日バーゲンで安く買ったし、鼠じゃなくても猫を使えば立派だし、なにか心配事でも?』
《子供》『ああ、これを聞かなかったら俺はとんでもない事になるんだ!』
《魔女》『それは大変なことね。いいわ、発言を許可します』
《子供》『許可云云に突っ込みを入れたいが時間が無い。ここは単刀直入に申し上げます、マミィーさん!』
《魔女》『堅苦しい言い回しありがとう。で、肝心の要件は?』
《子供》『そう! それはズバリ!!』
――ここで言おうとするシンデレラ。しかし言うのを躊躇う素振りを見せる。首を傾げる魔女を余所に、やっとシンデレラは喉につっかえていた言葉を出した。
《子供》『……本当にガラスの靴って履くの?』
《魔女》『本当に履きたい?』
《子供》『穿かなくてもいいのか!?』
《魔女》『まあ、普通に考えてガラス製なんて履いたら足死ぬわよ、足の骨が』
《子供》『そうだよな。うん。良かった。本当に』
《魔女》『でもガラスの靴は”灰かぶり”には必要な物だから代用品を使います』
《子供》『代用品?』
《魔女》『透明なプラスチック製です』
《子供》『重そうだったのが、一気に軽くなりましたね』
《魔女》『だけど、輝きが足りなさそうなのでイルミネーションを靴に配置します』
《子供》『現代的ですね。そして一気に見栄えが酷くなった』
《魔女》『それに託けて、これ見よがしに住所と名前を書いておきます』
《子供》『ちょっと待って、なんていう出来レース!?』
《魔女》『だって、私の出番なんてコレで終りだもの。早く終わらせたいし』
《子供》『本音が漏れたね今』
《魔女》『それが人間よ』
《子供》『でも、今は魔女ですよね?』
《魔女》『屁理屈言うんじゃない、塵屑』




