とある鴉の悟り(男視点)
如何すればいいのだろうか。いったい。俺は一体コレから先、何をすればいいのだろうか。男たちのピチピチとした引き締まった筋肉を見てなんの楽しみを覚えればいいのだろうか。おぞましくて吐き気が出てくる。別に年寄りの裸を見て何を楽しんだらいいのだろうか。若くても男はお断りである。
しかし、俺はどうすればいいのだ。本当に。前方には目の前のふざけた劇。後方には腕を組み前方の劇を見ないように俺を壁代わりにする人間。その目はまさに氷のように冷たいもの。怖すぎて何も言えなくなる。けれど逃れる道は他には無い。負けるな俺! 立ち向かうのだ俺!! 俺は根気強く自分を奮い立たせた。そこで産まれた少しの湧き上がる勇気を糧に、人間の元へと近寄る。
「なにか?」
鋭い言葉が投げかけられる。しかし俺は歯を食いしばり、年端もいかぬ人間に尋ねた。
「その……、どうかなこの劇?」
その時の人間の目は本気で恐ろしいものだった。目は据わり、雰囲気が殺伐とする。しまった、話す単語を間違えた。後悔しても遅く。詫びも懺悔もする前に、人間が蔑むようにして俺を見て言ってきた。
「本気で言っているならばこの場で八つ裂きにします」
硬く作り出す右手の拳に俺は戦慄した。俺はなりふり構わず、勢いよく頭を垂れた。これは一種の自己防衛行動の一つだと俺は後に語る。
「嘘です!
馬鹿なこと言って、すみませんでした!!」
「宜しい。
……ほら、次の日になったわよ」
「あ、はい」
「しっかり見ておきなさい。
どちらにしてもコレから先が地獄なんですから」
静かに言う人間はそれっきり口を閉ざして前を見据えた。その姿があまりにも堂々としていて男の俺としては悲しくて仕方が無かった。本当、なんでこの人間こんなに大人なの。餓鬼なのに。




