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涙
嘘八百つく父親を目にし、わたしはいったいどうすればいいのだろうか。見習えばいいのだろうか。親の背を見て子は育つと言うが如何なものだろうか。難しい。実に難しい。それに、あそこまで堂々した嘘八百の方便を呆れるべきか褒めるべきか。わたしの脳裏では大会議の審問中である。しかし答えなど出る事など無いので早々に考える事を止める。疲れる事はしたくない。
いつしか腰に巻き付いていた塊が漸く復活したのかゆっくりとまるで蛹が蝶になるかのように離れていった。そして当たりを見渡し、少し安心した表情を浮かべる。
男は少し罰の悪そうな顔でわたしを見てくるも、目尻を抑えている事からなんとなく想像は出来た。
「落ち込む暇は無いわよ」
わたしは徐に口を開き、そんな事を言っていた。特に意味は無い。それに何より、きっとコレから先の展開の方が地獄なのだ。すると男はハッとしたような顔と同時に、クシャリと顔を歪めては俯いてすすり泣くのであった。




