心配
まるで引っ付き虫かのごとく腰に抱きついて駄々っ子のようにしている男がガタガタと震えているが知った事では無い。わたしはこれから起きる目の前に釘づけである。何が楽しくて父親の浮気現場を目撃せねばならんのだ。おかしい。これは理不尽だ。
それにしてもあの野郎(父のこと)、それなりに可愛い容姿をしている母を他所になにをしてやがる。早く母を見つけて落ちを勝手に作り上げろ。そもそも王子と結婚するだけが幸せではない。王子じゃなくてもあの地獄のような家庭環境から脱すれば主役の人間は大喜びなんだよ。だったら早く母を見つけて結婚でもしてこい。そしてわたしを早くこの場から切り離して欲しい。全くどうしてもうすぐ中学になるわたしが御伽噺の実演を見なくてはいけない。それも王子が見知らぬ女で主役の灰かぶりが実の父親。こんなに酷いキャスティングなど見たことが無い。
なんとしてでも野郎を家来より先に見つけ、早くこの場から脱しなければ。最悪の展開など夢にまで見たくない。ならば行こう。重い荷物を持っているが慣れてしまえば苦ではない。さあ、走れ。目の前に野郎らしき人物が突っ立っている!
ああ、この姿が見えれば一発殴ってやれたのに。そもそも下着姿で王城にやってくるな変態野郎。
……溢れ返る木々を目の前にわたしは猛突進で向かうも、ときどき木の陰に隠れ様子を窺った。見ればあの野郎の隣には光り輝く女性が立っていたからである。しかしベールで顔が隠れてしまい誰なのかが見当もつかない。それに何より何を離しているのか皆目見当がつかない。ええい、どうせキャストには見えぬ身ならば、間近まで行き確かめよう! 恐れるものは今のところ無い!!




