とある鴉の後悔(男視点)
どこかで聞いたことのある声だと思い、俺は恐る恐る顔を上げた。そしてすぐに後悔の念に襲われ苦しむことになった。奴だ。俺は小さな舌打ちをした。まるで腹を空かせたハイエナのように襲い来る俺の手先の一人にして、首謀者の女。相変わらず小洒落た言葉遣いで、周囲を翻弄させているが俺の目はごまかされない。そもそもなんで役が主役級なのがそもそも納得がいかない。こいつこそ脇役にしろよ。いやでも伯父が王子とか年齢的にアウトな上に威厳が崩れる可能性があるから止めておこう。しかしあのドレス姿で多少だが俺の中での伯父のイメージがひっくり返ってしまった。流石にあそこまでチャランポランだとは思わなかった。もしかしたら知らないだけでアレが本来の伯父の姿なのでは無いのだろうか? だとした新事実発見だ。まさか四百年の時を超えて新発見に巡り会うなど、これは快挙にも等しい。しかしだからと言ってどうにかなるわけでは無い。ならばどうするべきか。けれど思い返せば、成り行きを見守ることしかできないことに気が付き途方に暮れた。
俺を含めた人間もこの世界では無いものとされているので他者との接触は不可。ならば大人しくコレからの流れを静かに見守ることしか残されていない。ああなんたること。もう前が真っ暗だ。スカート姿の伯父だけに留まらず、見たくも無い茶髪女の顔まで見てしまう始末。こうなってしまったならば結末などどうでもいい。この人間が俺に惚れてしまえば万事解決する。後はどうでもいい。
……しかしこの人間、一体どうすれば落ちるであろうか? 本が好きだというので連れてきたが顔色が非常に悪い。それが物凄く不気味でしょうがなかった。それに何より、ボディーブローを喰らった時の恐怖がある。とりあえず今のあの子に声をかけることは無理だ。存在を知られたら間違いなく殺られる。多分だけどボディーブローだけでは済まされないだろう。長年の俺の冴え渡る頭脳が叫ぶ。人間を見つめ、俺は静かに息をひそめれば、人間は鬼のような形相で壮大な舌打ちをした。
流石の俺でも舌打ちするとは思わなかった。この人間本当に怖い。




