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大鴉の恩返しは傍迷惑  作者: noll
日常編
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風呂


 猫のゲージに入れられた鴉など見たことも聞いた事も無い。きっと人生初だろう。気を失っている鴉を見つめ、わたしはこれからどうするかと一人考えた。そこでわたしが行きついたのは何故かは知らないがこの鴉を丸洗いする事だった。きっと洗えば何かが変わる。何が変わるかなど思いつかないが。

 となれば話は一気に飛んで風呂場へと変る。ゲージに入れグースカ寝ている鴉を静かに取り出すとわたしは遠慮なくそいつの頭から水を流す。その出来ごとに一気に覚醒を果たした鴉だったが、カアカア鳴くだけだった。わたしは耳に耳栓をつけて鴉の頭から猫用のシャンプーを浴びせかけた。

 鴉の黒とは油まみれの汚れである。そういう噂をどこからともなく聞いた事がある。噂なので出所は不明だ。知りたくも無い。しかし、洗えば洗う程、この鴉から薄汚いを通り越した汚れが現れる。正直ここまで酷いとは思わず手を止めてマジマジと見つめてしまった。泡だらけだがその泡も真っ白ではなく真っ黒だ。本当に汚い。だから鴉は嫌いなのだ。沸々と湧き上がるあの頃の苦い思い出。わたしは忘れていない。


「はーい、流しますよー」


 棒読みとなった言葉だが通じたのだろう、鴉の身体がピクリと動いた。わたしはそれを合図と思いながら再び遠慮なしの水を浴びせかけてやった。すると大鳴きするので嘲笑ってやった。そして見せた姿は綺麗な黒である。うん、上出来である。良い仕事をした。

 鴉は目をパチクリしながらわたしを見つめ、周囲をキョロキョロみた。そして再びわたしへ目線を持って行くとなぜか嬉しそうに一鳴きした。

 …………嫌な予感がした。


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