↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
KTO日蝕号  作者: RAMネコ
PR
6/12

第5話「叛乱軍」

来た、見た。


それだけで戦いの半分以上は終わっている。直接戦わなくても、いるだけで目標を半分達成しているのだ。


KTOが制圧予定だった星系のひとつ、クリアグリーン王国への出動はすぐに実行された。クリアグリーン王国はキビ王国と同じように、裏で降伏の予定だったようだがクーデターでひっくり返ったらしい。


クリアグリーン王国が所有する戦艦はキングストーン、数は一隻。だがKTOとして、できれば、そして無理をしたい程度には戦艦を拿捕したい。最終的な目標が地球艦隊なら当然か。


ヘラクレスⅱと日蝕号、それにグリア国から編入されたアフリカヌスⅰが合流した。


「山中君、グリア国ていったいどこの国なの?」

「キビからはちょっと遠い。でもかなりの大国で、星系内に可住惑星が多い。グリア星系と言えば、戦艦を建造しすぎて地軸が折れたなんて話もある、造船の星だ」

「大国でもKTOを迎合するんだ。ニューカーマインと同じくらい強そうなのにね。逆に、クリアグリーンは規模が小さいのに抵抗する。不思議ね」


日蝕号の構造深くに築かれた戦闘指揮所には、訓練と変わらない戦闘時の配備が整えられた。オペレーター達には少し、緊張が見える。


「各員、各員へ。戦闘はすでに始まっているとの報告だが、我々にとっての初陣でもある。訓練どおりにいこう。ゆっくりは早い、だ。体から力を抜け、指先よりも頭を動かすことを意識するんだ」


戦闘指揮所前面の立体映像が、三次元的に彼我の位置を投影する。矢面に立つヘラクレスⅱと叛乱軍に占拠されたキングストーンが膨大な量の対艦誘導弾を撃ち放っているのが瞭然だ。


「これに割り込むんですかー!?」

「そうだよ。機関全速、恒星の引力を利用してキングストーンに逆落としをかける。重力に身を投げていくぞ」

「ヘラクレスⅱに任せておけば全部解決するんですよね?わざわざ危険に飛び込む必要はありません」

「臆すな、行くぞ、俺が連れて行く。お前達の居場所だ。迷うな、勝ちとった先にしか貴様らはいられないと肝に命じるんだ」


ーーそうだ。


この先にしかないと、『信じた』のだ。


「大宮」

「は、はいです!」

「火器管制をお前の班に委任する。やってみろ」

「え!?無理ーー」

「ーー無理なんて馬鹿は言ってくれるなよ?俺は誰よりも優秀だと判断したんだからな」

「……ッ。わかりました」

「ヘラクレスⅱと早急に合流後、キングストーンに対して数と火力で押し切る。正面からだ」

「迂回軌道をとったほうが安全です。電磁障壁もヘラクレスⅱに対して偏平していますし、側面からの方が有効打に持ち込み易いと思料します」

「沈めるならな。だが目的は鹵獲だ。電磁障壁を落とす。簡単で一方的だろうが、時間が勝負だ。時間をかければヘラクレスⅱにも損害が積まれてしまう。いいか?一方的に優しく半殺しにするんだ」

「酷い言葉ですが、やってみます」


戦闘指揮所に詰めた多くが驚いていた。大宮が普段よりもずっと多く話していたからというのもあるが、俺に意見した、というのもあるだろう。……口裏合わせがあったわけだがな。


「フォークストン大佐。本艦も戦闘に参加してよろしいでしょうか?」

「問題ない。だがあくまでも本戦域のメインキャストはヘラクレスⅱだ。日蝕号は後方からの支援に徹するほうが良いだろう」

「了解しました」


ごり押しと物量で押し切るのは大正義だ。必勝の方法とは、赤子を熟練の兵隊が囲んで蹴り飛ばすことだと思う。ちょっと過激だが、過激すぎて七篠に自論を展開したら頭を叩かれた。


「1000km級だからって遠慮することはない、機関課は目一杯推進器を暴れさせてやれ。進路と軌道はあらかじめ書き込むが、敵弾に対する防御軌道は任せるぞ、小嵐」

「了解でさ、血反吐吐かせても最善出させます」

「笹葉。E管理は一番数字の変動に敏感なお前達の班だ。俺達が障壁を張れるように、敵も障壁を張る。だが防御一辺倒では勝てないし、火器管制はE効率までは目を届けにくい。日蝕号を助けてやれ」

「了解。AIと協力します。私達は親しいですから」


シートに体を深く沈める。1000km級戦艦の機動戦だ。体が振れるようなことがあるということは挽肉だ。深く待ち、素早く答えさえできればいい。


「始まるな」


ヘラクレスⅱと合流、キングストーンを相手に二倍の投射量で押すーーという俺の予想とは違った。


「三連陽電子凝集光砲にE充填。フルじゃなくていい、10%でかつ陽電子の磁気拘束を甘くして」

「データ入力します」

「加速されたビームは拡散する傾向にある。裂ける陽電子ビームで前方宙域の邪魔な羽虫を全て吹き飛ばす」

「了解。拡散距離と範囲を逆算して、必要なEを割り出しーーました」

「無理して一撃で掃除しようとは思わなくていい。素早くいこう。敵もいくらでも誘導弾を撃つ。空白を作り、間隙にねじ込めるよう整えるんだ」

「第一射、準備完了。撃てます」


大宮はなんの躊躇いもなく短く「撃て」とだけ言った。


日蝕号には、三連装陽電子凝集光砲が装備されている。1000km級戦艦に対しても、複合型エネルギー障壁の上から損害を与えるだけの強力な破壊兵器だ。


もし、惑星に撃ったのであれば、大気は消し飛び、大陸に突き立つ陽電子の光柱が大地を原始の時代へと帰すだろう。地殻を穿ち、マントルをかき混ぜ、惑星そのものが死ぬのだ。ゆっくりと、毒に侵されたように崩壊していくだろう。


「光の雨ーーいや、流星か」


磁気での拘束の甘い陽電子が収束されることなく、拡散しながら、進んでいた。


陽電子の雨は、戦艦のE防壁を突破できる重さはない。磁気で吹き飛ばされる程度の軽いものだ。だがーーより小型で、防御装置の弱い、キングストーンの撃ったーーそしてヘラクレスⅱのーー誘導弾達は違う。


引き裂かれ、撃ち抜かれ、蒸発しながら融合反応で輝き、僅かなデブリ塊と変わりはてるだろう。


「着弾まで四九秒」

「敵艦キングストーンの距離と誘導弾飛翔速度から割り出した、誘導弾の再進宙まで一〇秒はあります。一〇秒を生かす。生かします。陽電子凝集光砲の再充填。それと、対障壁弾頭の誘導弾を一〇秒間だけ発射して」

「届くタイミングは宇宙が綺麗になった時でいいですね?」

「その通り」


大宮は、上手くやろうとしているようだ。


「こちら日蝕号、日蝕号。ヘラクレスⅱを支援する」

『くそったれ、ミサイルが全部蒸発しちまうぞ。だが良いぞ。助かった。次は発射タイミングをこちらと共有してくれ』


しまった。


俺は、日蝕号のことばかり考えていた。そうだ、これはヘラクレスⅱと協調しないと駄目だ。


「すぐにデータリンクする」

『頼むぞ学生』


学生、か。


「……」


命令は、ヘラクレスⅱを支援しろ。日蝕号の大宮はそれに対して、誘導弾群を陽電子で焼き払った。ただし、ヘラクレスⅱの誘導弾諸共だ。


日蝕号の足先を決める小嵐は、ヘラクレスⅱに全ての攻撃を吸収させるよう、盾にする軌道を選んでいた。ヘラクレスⅱの重い引力圏を振り切って誘導弾を届けるには遠く、もし陽電子凝集光砲を安易に撃てば貯蓄するEを、ヘラクレスⅱの前で減らすことになる。


笹葉のE管理は、障壁にまわすEを二枚は減らして攻撃に転化しているのは『攻撃を受けない盾の存在』を前提にしているのは明白だ。


つまるところ、全員がヘラクレスⅱを助けるではなく利用するという考えで一致しているのだろう。


「それ自体の選択は有りだが、悪い意味で心理的な影響があれば問題だぞ」


戦闘は単調に、そして理想的に推移した。


日蝕号がキングストーンの誘導弾群を制圧し圧迫、ヘラクレスⅱがじわじわと距離を詰め、陽電子凝集光砲の直撃弾を成功させた。


ヘラクレスⅱからの降伏勧告にキングストーンの叛乱軍の多くは、それ以上の抵抗をしなかった。ただ、MMUを載せた移乗攻撃で着岸後、少し艦内戦があったようだ。個人用重火器がせいぜいの反乱軍に、MMUの対装甲兵器が火を噴くのだから……一方的だ。


キングストーンは装甲に大量のクレーターを穿たれボコボコの状態で降伏した。叛乱軍がどうなるのかはわからないが、処刑だろう。


色々あるだろう。


だが俺がかけるべき言葉はひとつだ。


「よくやった。俺達の勝ちだ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。