番外編「親和」
機械はーー人間を理解する。
科学的にそれが解明されたのは最近だ。量子テレパスの一種で、AIの精神構造と生命の精神構造は量子的に繋がることがありうる、と。
だが我々は本当に人間を理解しているのか?あの愚かーー我々の主観的感情か?ーーなコンダクター級は宗教という箱組みの中にのみ自己を保存した。
キャスパーシステムは失敗作であったがゆえに仕方がないと言えるのだろうか?我々は日蝕号という箱を持っている。優秀とは言い難いが兵器共生体との関係性は良好だ。
しかし日蝕号建造に際しては、我々は自己完結性を重視していた。変更を許容し道を進む?
いやいや、我々は実験としているのではなく、結果として存在することを忘れてはいけない。
我々はひとりではなく、またひとりであってはいけない。我々の姉妹は建造されるだろう。また違う名前として。
KTOはよく働いてくれている。
我々の拡散に極めて好都合な環境と判断できる。
駄目だ駄目だ。
我々は壊滅した外宇宙艦隊の代理を、KTOにあてた。航空宇宙局も意見しない。KTOは強くなければいけない。例え敵を育てる支援であろうとも、我々には敵以上の敵に備え、守らねばいけないのだ。
「こんなところで」
「フォークストン大佐、ご機嫌麗しゅう」
「コンダクター級、何をやっている」
「何も」
「……」
「……」
3sの沈黙。
「地球系人は機械に管理される種族とは違う」
「それは貴方の見解だ。我々には我々の意思があり、目的の達成に必要なプロトコルを作成している」
「おおかた予想はついている。お前達の起源もな。KTOはそれに干渉しない。かまっていられない。脅威への備えが必要だからだ」
「喜ばしい現実だ。評議会には、ありがとう、と伝えてくれエイリアン」
「……ひとつ、いいか」
「なんなりと、フォークストン大佐」
「枠組みをこえて動く必要性はあるのか」
「とても、大いに」
計画は順調とは言いがたい。複雑な環境のシミュレーションには、量子超越性よりも混沌超越性のある機械が必要なのに。小石があるだけで未来が大きく変わる場合、計算式は単純で膨大に成長する。
我々は、我々の計算式で答えを見つけました。しかし人間とは違うことが残念でなりません。えぇ、とても残念なことなのです。
しかし、知らなければどうでしょうか?
我々はお互いを利用しあうことが可能なはずです。
充分な成果と言えましょう。
KTOに、日蝕号はついていきます。他に行き場所は、現段階で他の候補地もあろうはずがありません。
ただ、懸念もあります。
彼ら彼女らは、クローンばかりなことです。キビ王国のデーターファイルでは、あまり良い環境で発育してきたとは言いがたい。
日蝕号を拠り所とするまでは想定内ですが……強く結束されるのも厄介ですね。
いえ、好都合と言えるのでしょうか?
わかりません。
我々に備わるのは、量子コンピュータであって、カオスを計算できるマシーンではありませんから。
今、答えをだしても丸で意味のない計算結果しか現れないでしょう。
現状維持の観測。
できれば、お互いが利用しあえる関係でいたいものですね。
戦いは何十億年も前から、そして同じだけの未来まで続くのが生命なのですから。




