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「いたいけな少女に蹴りをいれるなんてっ」
ゲホゲホとせき込むベルにルークは、半目になる。
「いたいけ?ウソだろ」
「ははっルーって面白いね!」
ベルは、腹部の痛みがすぐになくなったのかすぐに雷剣をルークに向ける。
楽しそうなその笑みは、本当に遊びを楽しむ子どもの目だ。
長引けば状況が悪くなる。
瞬時に思考を巡らせたルークは、何か良い手がないかを考える。
『ルーク、我を使え』
チカチカと、腕輪が光る。
ルークの頭の中に、ファルヴァンの声が伝わってくる。
その間にもベルからの攻撃はやまない。紙一重で避けながら、ルークは念を返す。
『それは、出来ない』
『迷う理由などないだろう?このままでは、怪我は避けられない』
『それくらい』
『それを、この我が許すとでも?』
低い声にルークは、小さく息を吐く。
つまりだ、ルークが許可しようがしまいがこの召喚獣は、出てきて戦うぞ、と言っているようなものだ。しかし一応主の意見も聞いてやろうと。
全く、従うつもりなのか否なのか。
ファルヴァンとしては、自分と言う存在を有効に使おうとせずに怪我をしてまで戦おうとする主に頭が痛い。なんのための召喚獣なのか。この自分が唯一認めたのだ。血の一滴も流すことは許さない。
先に折れたのはもちろんルークだ。
面倒なことになった、と深く息を吐いてから、ファルヴァンに命令する。
『わかった。許可する。ファルヴァン、敵を排除しろ』
『----了解した』
刹那、ルークの腕輪が光った。
「なに!?」
ベルは、突然光ったルークに驚き、怯んだかと思えばその小さな体が吹っ飛ぶ。バキバキと音を立てながらベルは、近くの家に突っ込んでいた。
一瞬なにが起きたのか分からなかったベルは、痛みに耐えながら前を見る。
そこには、今までいなかったはずの青年が立っていた。
今まで戦っていたのはルークとだけ。いつ伏兵が現れたのか全く感知できなかった。
「あんた、何・・・」
ゲホッと咳と共に血の塊を吐き出す。どうやら内臓がやられたようだ。
「ふむ、今の一撃で死なないとは、しぶとい奴」
「むっあんた何よ!ルーと私の遊びの邪魔をしないで!」
ベルは、痛みに耐えながら立ち上がると、剣に雷を纏わせる。
「ファルヴァン」
「分かっておる」
ルークが呼ぶと、ファルヴァンは嬉しそうにベルに手を翳す。
すると、一瞬でベルに風圧がかかり、今度は地面に叩きつけられた。
「かっは・・・っ」
「なんだ。体が頑丈なだけか・・・こんな小娘、この姿で十分だ」
「あ・・・なに、あんた・・・」
この力、人とは思えない。
ベルは、こんな存在知らない。
このままだと、負ける。
その確信があったベルは、唇を噛みしめると、剣を地面に突き刺した。
次いで雷を呼び、避雷針のように剣の上に落とした。
バリバリっと音と共に地面が割れる。
「うわっ」
地面が崩れ始め、ルークの足場も崩れる。すかさずファルヴァンはルークの元に戻ってその体を小脇に抱えると軽く跳躍してその場から離れる。
「覚えてなさい!この借りはいつか返してやるんだから!」
ベルは、捨て台詞を放つと、悔しげに身を翻し姿を消した。
「なんだったんだ・・・?」
安全と思われる場所に避難したルークたちは首を傾げる。地面に下ろされたルークは、周りの惨状に頭を掻く。
ファルヴァンは、自分のやるべきことが終わったので、すぐに腕輪に戻ってルークの腕に巻き付いた。
「ルーク!!!」
「サイラス」
そこで、サイラスが先輩たちを連れて戻ってくる。
「大丈夫か!?」
サイラスは、ルークの肩を掴み、頭の上から足先まで怪我がないかを確かめる。怪我一つないことに安堵の息を零した。
「良かった」
「割とよくない」
「?」
「おい、ルーク、これはどういうことだ?」
ネツァベルは、目の前に広がっている惨状に動揺を隠せない。それはそうだろう、地面は割れ、家屋は破壊され見るからに激しい戦闘後だ。
ルークは、内心で溜息ばかりだ。
「知らない女が襲ってきたので」
「女?」
「確か、ベル、と名乗りました。そして、雷獣だとかなんとか」
あまりはっきりとは覚えていなかったが、魔法の類を使ったようではなかった。
ネツァベルは、ルークから一通り話を聞くと、蒼白になる。
その時、ガタガタっと物音が響く。バッと腰に差してある剣に手を掛け、注意深く周りを見渡すと。気配を殺しながら村人と思われる人が出てきた。
「!あなたは・・・」
「!?騎士様!よかった、あいつらをやっつけてくれたんですね!」
村人は、安堵しそして今自分が出てきた方に向かって叫ぶ。
「おおーいっ騎士様たちだ!獣人どもはいない!」
その声に、やがてわらわらと村人が出てきた。どうやら、敵から身を守るために避難していたらしい。
あいつらが捜していたのは逃げたこの人たちだったってわけか。
ルークは、納得する。




