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とりあえず、みんなのところに戻ろうと踵を返したルークに軽快な声が降ってきた。
「やぁーっと見つけたーー!」
「!!?」
バッと声のした方を見ると、家の屋根に少女が座って足をぶらぶらさせていた。
年端のいかないと思われる少女は、ルークと目が合うとにっこりと笑いふわりと音も立てずに地面に降り立つ。
ルークは、少女の動きを目で追いながら警戒を強める。
屋根の上にいて且つ軽々と地面に下りるなんて芸当は普通の人間には出来ない。
警戒心を一気に高めながら、ルークたちは目の前の少女を見やる。
やけに軽装な服を着ている。裾の部分はフリルがついているワンピースだ。人間にしては珍しい桃色の髪は高く左右で結ってある。
少女は、嬉しそうにルークたちに笑顔を向ける。
「ねぇね、ここの人たちってどこに行ったのかな?みーんないなくてベルつまらなくて仕方がないの」
「・・・・知らない」
「んん?君たちここの人でしょ?どーこに隠れてるの?」
可愛らしく首を傾けながら問いかけてくるが、二人ともこの少女が普通と違うということは分かっている。
しかし、どう違うかは上手く説明できないが彼女から醸し出される気は、味方のものではない。
ルークは、少女から目を離すことなく隣にいるサイラスに小声で話しかける。
「サイラス」
「何だ」
サイラスの声音からは緊張が伝わってくる。
無理もない、得体のしれないものと対峙しているのだから。
ルークは、とりあえずどちらかが仲間を呼びに行った方がいいと考える。
少女を引き付け、気を逸らせた間に抜け出す。
それが、最善の策だろうとルークは考えた。
「俺が、あの子の相手をする。その間に先輩たちの所に行け」
「!ルーク!」
「俺の方が、お前よりまだ立ち回れる。そうだろう?」
普段、養父の稽古を受けているルークの方が、まだ動ける。
そして、ルーク自身もやれるだろうと自信があった。
サイラスは、不満そうにルークを横目に見やるが、彼の言っていることは正論であるので、不承不承で頷く。こういう時に物わかりがいい友人でルークは助かる。
「ねぇね、なに話しているのー?」
少女は不満そうに頬をふくらます。
ルークは、腰に差していた剣を取り、刀身を抜いた。
すると、少女は目の色を変えて興奮したようにその場で飛び上がる。
「えっもしかして君たちが遊んでくれるのー?!うれしーっ」
「・・・・」
「どっち?どっちから?あっ二人一緒でもいいよ?」
少女はくるくると飛びながら回っている。
まるで子ども同士の幼い遊びのような軽さだ。
(こいつ、狂っているな・・・)
出来るなら相手にしたくないタイプだ。
でも、やるしかない。
ルークは、一歩前に出る。
「・・・俺が相手だ」
「!ふーん」
少女は、飛ぶことをやめ、ジッとルークを凝視する。
頭の上から足の先までをくまなく眺めて、へにゃっと頬を緩める。
「よしっあそぼっ。ね、君名前は?ベルは、ベルっていうの!」
敵なのに自己紹介が必要なのか?と心底思うが、彼女はきっと自己紹介をしなければ先に進まないだろう。
それもいいかもしれないが、高い声でギャンギャン言われるのは敵わない。
「・・・・ルーク」
「!ルークっていうんだ?んー、じゃあルーって呼ぶね!」
「・・・・勝手に」
「なんか素っ気ないなー・・・・ま、いっか!」
ニッとベルは頭上に手を翳すと、その手のひらにバリバリっと暗雲もないのに雷が集まりだした。
それはみるみる内に剣を象り、ベルの手に納まっていく。
「!・・・お前は・・・」
「?私はベルよ?リミュエル様から雷獣の力をもらったんだー」
「リミュエル、様?」
雷、獣だと?獣人界にはそんな力を持つ獣も存在するというのか。
それに、ベルの言うリミュエルというのは一体誰だ?
「むーーーー変なこと、考えてる?」
「っルーク!」
「!!」
ハッと我に返って身を屈めば、頭上をバリバリっと音を立てながら剣が一閃される。
瞬時に体制を変えてベルと距離を取る。
「アホ!何やってるんだ!」
「うるさい!」
サイラスに罵倒されながら、ルークは剣を構えなおす。
ベルは一撃で仕留められなかったことに不満顔を見せながらも嬉しそうにしている。
(相手が悪いな・・・・)
相手は雷、自分は炎。
あまりいい相性ではない。
(さて、どうするか・・・)
魔力を使うことは、まだしない方がいいか。
とりあえず、剣ひとつでどうにかできたらいいんだが。
「次行くよー」
態々宣言してベルはルークに切りかかってきた。
ルークは今度は避けることはせず、雷の刀身を剣で受け止めた。刹那、バリバリバリ!と雷の音が派手に鳴り響く。
思わず眩しさに片目を瞑ってしまうが、すかさずルークはベルの腹部をめがけて蹴りを入れた。
「うぐっ」
予想していなかったのかベルは思いっきり後方に飛ぶ。
地面に倒れる寸前に体勢を整えたベルは大きく目を見開いている。




