第5話 「異変の始まり」
レオニダスたちは川沿いまで歩みを進めた。
ダンジョン内に漂う緊張感を感じながら進んでいると、不意に複数の気配を捉えた。
「待て」
手を挙げて静止させつつ、気配を探っていく。
「…やたら多いな」
「群体系のモンスターです…?」
「そんなのいる…?」
「それぞれの魔力の強さに、差がありすぎる…生態系的にあり得ないが…」
目配せしながら息を殺して忍び寄る。
「──で……よ」
喋っている内容を聞こうとしても遠いためあまりわからないが、女というのはわかった。
「人だな。でも、こんなにバラバラの魔力…?」
「どうします…?また引き返しますか…?」
「最悪人数不利でもランク差とかで…」
「その差がある状態で対抗戦負けたんだが?」
そう聞いた瞬間青ざめた表情をして戸惑う男子生徒に「まぁそんな細かい所は良い」といいつつ本題に入る。
「とりあえず偵察だ。相手次第にはなるが…」
──。
「えーと、階層を上がるごとにボスがいるんですね…?」
「えぇ。知っての通りこのダンジョンは塔。階層別にボスが点在し、上がる場所は複数存在していますわね」
歩いている中、ミィは顎に手を当てていた。
(…ずっと違和感。階層が下ならⅠランクばかりのはず)
ミィはここまで見て来たモンスターの危険度を整理していた。
(階層を跨いでいない…でもⅡの清流の水晶蟹もいた)
本来ならあり得ない事だが…いや、ダンジョンそのものの理解が違う…?
スンスンっとシルヴァンが鼻を鳴らし、一点を見つめる。
「っ…誰ですの。そこにいるのは」
振り返ると両手を上げつつ出てくるレオニダスさんたちがいた。
「安心しろ、強奪とかしに来たわけじゃない」
「あっ、レオニダスさん。お疲れ様です」
お辞儀するとその光景を見て笑い出すレオニダスさんに首を傾げる。
「いや、悪い。だが、奪われるかもしれないのに相手に普通に挨拶するのはお前くらいのもんだよ」
キナコが頭の上に乗りつつ、私の腕の中で子狐が首を傾げる。
「ん?あれ、なんかまた一匹増えてないか?」
「…そっちに関係はない。それで、何の用?」
スッと割り込むようにミィさんが口を開く。
「お、おう…?アレなら共闘でもどうかと思ってな?」
「共闘?それなら良さそ─」
「結構ですわ?」
ルーテリアさんが割り込む形で前に出る。
「そっちとしても利点はあるはずだが?」
「えぇ利点は御座いますわね。けれど、それ以上にリスクもございますわ?」
「へぇ…?”30階層”、それなりに強いのも出ると思うが?」
「「「……?」」」
私以外の全員が首を傾げる。
「…──え、えぇ。30階層ですわね?」
少しの疑問が生まれつつあった。
(…階段を見ていない。なのに30階層…。歩いてたのはずっと平坦な道なのに)
レオニダスさんは私が何か言う前に子狐が「ふぁんッ!」とイカ耳になりながら鳴くと肩をすくめる。
「あぁあぁはいはい。大人しく戻りますよ。だが、ヴァルザードがこの階層にいる。少なくとも巻き込まれないようにな?」
踵を返してレオニダスが歩き出すと周りの3人もそれに続いて追いかけていく。
「──30階層…って言っていましたわね」
「うちら階層一回も上がってなかったよな…?」
「し、知らないうちに上がる…なんて転移罠くらいしかないですもんね…」
「というか、この感じだと誰も気が付いていないの…?」
クローディアさんの言葉に全員がそれぞれを見る。
「確かに階段は見ていないですね?」
そういいつつ子狐を両手で持って首を傾げると不思議そうに首を傾げなが尻尾をふりふりとしている。
「…転移門をくぐった可能性がある。場所はわからないけど」
「転移門って上位のダンジョンにあるんやなかったっけ?」
私は導いてきたフラワとアシスとメロデ目線を合わせつつ聞いてみる。
「どこで階層が変わったかわかりますか?」
それぞれ首を傾げつつ「ぴぴっ」とメロデが鳴いてぱたぱたと軽く羽ばたいて座りなおす。
「ん-…わからなさそうですね?」
「となれば、少しまずいかも知れませんわ…」
「こ、ここが30階層だとしたら…あの…」
「連れて来た本人ですら気が付かないうちに移動させられる存在がいるという事になりますわね」
皆さんが不安そうな顔をする中、私はふと思い立つ。
「なら、導かれてるのかもしれないですね?こう、神様とかに」
「神官みたいなこと言うやん?」
「…セリアは巫女出身」
それを聞いて「そういえば神官寄りやったわ…」と苦笑する。
──その頃、外では。
クラウスが構想を巡らせつつやっていると、転移陣が輝き、生徒たちが転がり込むように飛び出してきた。
「!?速くない…かって──ってなんだその怪我は」
腕の所を見るとBランク2名、Cランク1名。そのうちBランク一人に裂傷がある状態で苦しそうという形でおり、ズタボロになっていた。
「で、出られた…!」
「っ…!クラウス先生、助けてください…!」
「まだ二日目だろ。何があった」
「それが…中に危険度Ⅳの変異種が…!」
「変異種…?」
そういいつつクラウスはヴェインに連絡通知を入れて、詳しく聞いていく。
「Aランクの二人が、俺たちを逃がすために殿を……!」
「状況的にはどうだったんだい。」
「通常種ならまだしも…異様に強く、自分らがいると邪魔だって転移用のを使われて…」
クラウスは抱えられているBの一人の容態を見る。
毒に侵されたような雰囲気のソレはあまりにも痛手になっており、まともに戦えない様子だったのが伺える。
「…わかった。それと変異種である相手は何のだ?」
「森林の暴君熊みたいな感じで…!」
──程なくしてすぐにヴェインが駆け付け状況を説明して解毒してもらい安静状態にした。
「…毒を持つ個体か。森林の暴君熊では聞いた事がないが」
「これは内部相当やばい事になってんじゃないすかねぇ…」
「だが、すでにダンジョンには多数入っている。もちろん、Sランクも…だが」
「口ぶりからして、Aランクでも怪しいって感じっすよね…。ってなると…」
互いに頷き、マテリアルプレートで教師用グループに連絡を入れた。
(内部でいったいなにが…?)




