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エピローグ

「――失敗した?」


 私の立てた計画が、またしても失敗に終わるとはどうにも納得がいかない。

 一体どこで予定が狂ったというのか……。


「も、申し訳ございません。アジク様の予測通り王子候補と従者が現れたので、その者たちは捕らえ、ご指示の通りに作戦を進めていたのですが……」

「ですが?」

「王女と侍女までもが加勢に入り、形勢を逆転されて……」

「みんなまとめて界門を渡っていった、と」

「は、はい。その通りです……」


 頬杖をつくと、自然とため息まで漏れる。

 社務所で午後六時に、国王派の全体会議が開かれることが調査で判明した。

 なので、その会場ごと国王派の人員を閉じ込めてしまい、そのまま催眠ガスとやらを流し込む。完全に無力化したところで、反国王派が警護隊に成りすまして、のこのことやってくるはずの王子とその従者を待つ。

 そんな作戦だったからこそ王女たちの助太刀は有効だったが、私たちが何も行動を起こしていなければ、自ら国王派に身柄を拘束されに行くようなものだったはずだ。王女は界門を通すなとのお達しは、国王派にも出ているのだから。

 わざわざ身の危険を冒してまで、王女たちがやってきたことが信じられない……。

 そう、王子たちが危険な目に遭っていると、わかっていなければ取れない行動だ。


「やれやれ、おかしなことだらけですねえ……。相手は四人、お前たちはその三倍以上の人数がいたはずなのに、どうして形勢を逆転されますか。ヒーズルなら、魔法で一発逆転も可能でしょう。でもここは外界ですよ?」

「それが……閉じ込めておいたはずの本来の警護隊が、何者かによって解放されたらしく……」

「まさに、本来の警護隊に警護されてしまった、と」

「誠に申し訳ございません」


 再度、頬杖と共にため息が漏れる。

 一体誰が国王派の警護隊を解放したというのか。やはり眠らせておくなんていう穏便な手段を取らずに、始末してしまうべきだったか。

 いや、当初の予定では今回始末するのは王子と従者。王女と侍女はまた日を改めるはずだった。社務所から多数の死体が発見なんていうことになれば、この国の警察とやらが全力を挙げて捜査に乗り出すのは必然。

 王女の王位継承の可能性もまだ残されている以上、その始末が叶わぬうちに活動停止となっては何の意味もない。信じることはできないが、王女がロニス様を魔法で吹っ飛ばしたという証言もあるのだから。


 報告に来た第一期、そして第二期の隊長はそれぞれ怯えながら跪き、頭を上げられずにさっきから畏まっている。ロニス様ご意向の王子の始末の絶好の機会、さらには王女までついでに始末できたところをしくじったのだから、忠実な下僕とあらば自害したいぐらいの自責感に苛まれてもおかしくないだろう。

 まあ放っておくか。その姿勢が反省だというなら気が済むまでやっているがいい。


 しかし、ことごとく作戦が失敗に終わったのはなぜか、自問自答してみる。

 やはり、この世界は勝手が違いすぎて行動の制約が大きすぎた。

 今日は人目に付かないよう配慮したので帯刀させたが、普段は刀すら自由に持ち歩けないとは……。ユウノスケの助言により救われたが、『そんなはずがない』と逆らって刀を持ち出して捜索していた二名は、きっと警察に捕らえられたのだろう、未だに戻ってこない。

 あの隠れ家を襲撃した時もそうだ。

 近隣住人の『警察を呼ぶ』という言葉に作戦の変更を余儀なくされた。普段なら作戦の立案の時点で、影響を及ぼしそうな要素は加味するはずなのに、考えが及ばなかったのは私の失策だ。


 クリスマス・イヴとかいう祭りの時は、折角腕の立つ護衛とはぐれてくれたというのに、人波に阻まれて近寄ることができなかった。初詣も同様だ、強引に人を掻き分けたら痴漢扱いされる始末。目立った失敗だけでもこれだけある。細かいことを言い出したらきりがないほどだ。

 警察に捕まれば活動停止という思考が行動を委縮させた。もっと大胆に動くべきだったのだろうか。

 まあ、王子、王女共にヒーズルへと渡ってしまった今、それを悔いても仕方がない。


「それにしても、やっと新たな潜伏場所も突き止めて、今回王子を始末したら次は王女と、計画は順調に見えたんですが、いやはや……」

「それにしてもアジクさん。王子、王女を取り逃がしたわりには意外と穏やかじゃねえっスか? それに『後を追う必要はない』なんて指示まで」

「この世界は、どうにも私とは相性が悪いような気がしましてね。決着なら向こうでつけますから、どうということはありませんよ。今はこちらの世界で、来たる時のために着々と準備を進めるだけです」


 王子、王女ともに始末できる機会はあった。

 その機会を活かせなかったのは残念だが、私の計画には何の支障もない。忌々しいあの侍女にはまた苦汁を飲まされたが、それもまとめてケリをつけてやる。

 そのために必要な物も着々と手に入りつつある。




「――切り札も手に入れましたし、次に会うのが楽しみです。キシシシシ……」



第二部 完


ご高覧ありがとうございました。

ひとまずここまでで、第2部完結となります。

第3部も当作品に追記していく形式を取らせていただきますので、ブックマーク等そのままでお待ちください。

また再開まで、しばらくお時間をいただきますことをご了承ください。


それでは引き続き当作品をよろしくお願いいたします。

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