第1話 節分祭(2685年)
2685年二月三日、節分。吹き付ける北風の中、神社の境内……長い参道には見物客が詰めかけていた。
中央に設けられた一筋の土の小道を囲み、皆が同じ方向を見つめている。白い息を吐きながら、これから起きる出来事だけを楽しみに。
馬が走るのに適した柔らかさに整えられた道を、一頭の葦毛が疾走してくる。
近づくほど馬蹄の音は大きくなり、白い息を吐く観客の興奮も高まっていった。
そして視線は自然に、馬上の弓を抱えた武者へ吸い寄せられる。
視線の先には、大鎧を着込んだ平安武将めいた武者が一人。右手に弓、左手に二本の矢を握り、冷静に馬を操っていた。
兵は鈴なりの観衆にも一切動じることなく間合いを計って矢を番え、弓を引き絞った。
それも一瞬だった。番えた矢が放たれる。
一の矢が木の板に命中し、間を置かず二の矢が隣の板を貫いた。
まるで当たるのは当たり前というように神業ともいえる技を見せた馬上の兵は、振り向きもせずにすぐ背の靭から矢を二本取った。
観衆の熱に気を良くした武者は、さらに二本の矢を番える。少し離して置かれた二つの板……それも見事に射抜いてみせた。
それまでただ息を飲んで馬上の鎧武者に目をやっていた観客がその光景を見てどっと沸きあがり、場は歓声に包まれた。
東和の西豊川八幡神社の奥の広場までたどり着いた馬上の兵は速度を緩め、境内に集まった観客がどっと沸くのに手を振って見せた。
その武者が誰か、誠は見ているうちに気づいてしまった。
普段は隊長室でタバコをくゆらせ、風俗情報誌を読んでいる『駄目人間』……嵯峨惟基特務大佐だ。
そう理解してなお、司法局実働部隊機動部隊第一小隊三番機担当の神前誠曹長の脳は目の前の弓の名手が同一人物だと認めたがらなかった。
いつもならこんな寒いところでは背中を丸めて少しでも日向を探して歩き回っている嵯峨が、源平合戦の名将のような姿に見えることは誠にとっては意外であると同時にある意味誇らしく感じていた。
ただ、今の嵯峨と『いつもの嵯峨』が同一人物だと説明しても、この場の誰も信じないだろう……誠自身の脳が、まず理解を拒んでいる。
嵯峨の剣の腕は誠も聞いていた。時々、嵯峨の剣の師である母の西園寺康子について誠の上官である司法局実働部隊機動部隊第一小隊二番機担当の西園寺かなめ大尉やその妹で第二小隊小隊長の日野かえで少佐からも嵯峨の剣の腕がまさに神の領域だとは聞かされていたので剣については強いのは理解できた。
しかし、誠が今見ているのは剣ではなく弓である。しかも馬に乗っての速射という流鏑馬まで出来るなどという話は神社のメインイベントを嵯峨が務めるという話を聞くまで知らなかった。ただ、嵯峨が甲武では多くの殿上貴族がその顔を見ると震えあがるような権謀術数に長け、数々の敵対する殿上貴族達を破滅に追いやって来たやり口から『悪内府』と呼ばれる高貴な殿上貴族であることは誠も知っていたので、誠にしても嵯峨がこれくらいの芸当は簡単にやってのけるだろうとは想像は付いていた。
伝統を重視する貴族制国家の上流貴族である嵯峨やかなめやかえでにとっては乗馬などは出来て当たり前のことなのかもしれなかったが、かなめはサイボーグの身体ゆえに同じことをやったら馬が持たないと言い、かえでは出来ることはできるが嵯峨のように百発百中とは行かないという。
康子は西園寺家の養子に入った時には歩くこともできなかった嵯峨に剣を教える前に多くの体術を学ばせたというが、その中で一番嵯峨が得意としたのが乗馬と弓だと聞いて誠は嵯峨の意外な一面を知って驚くことしかできなかった。
『普段は……それは腹が立つほど駄目な人間なのに。こういう時だけ、隊長は『格好いい』んだよな。しかも、弁護士で隊では特務大佐ってことは特務とついていることは二階級上だから陸将ということで軍の高官と同格。それに日野少佐にその地位は譲ったとは言えあの貴族制国家の『甲武国』の全権を握る四大公家末席の公爵でもあった……確かに月島屋の女将さんが思いを寄せるのも無理はないような気がするけど……あの人も純血の『モテない宇宙人』の遼州人のはずだぞ……これはかなり不公平だ』
誠は嵯峨の見事な弓と乗馬の腕前に感嘆すると同時に、その『モテない宇宙人』にしては美熟女に思いを寄せられるなどと言う遼州人としては許しがたい所業を成している嵯峨に呆れていた。
「ああ、本当に隊長は何でもできるんですね……日常生活の役に立たないことは。お茶にお華。書道もあの人は個展をやるくらいの腕前なんでしょ?なんで日常生活にそのスキルを実生活に活かせないのかな……まあ月3万円で生活してるってことは自炊は出来るし、服が匂わないってことは洗濯もできるんだろうけど……あの隊長室が滅茶苦茶なのは人間としてどうかと思いますよ?それにオートレースで当たるとすぐに安い風俗に行ってその度にインフルエンザとかベルルカン風邪とか……この前は風疹まで持ち込んで来たじゃないですか……そっちの方はどうにかならないんですか?」
平安末期の徒歩侍を思わせる胴丸を着込み、頭には烏帽子、手には薙刀を持たされて、足に履いている草鞋に霜で汚れた土のにおいを感じている誠は観客に見送られて本殿の裏へと馬を進ませる司法局実働部隊隊長、嵯峨惟基特務大佐を見ながらそんな不謹慎なことを考えていた。
誠も誠の属する通称『特殊な部隊』の同僚達も遠い源平絵巻の鎧兜の姿で、警備の警察官などが観衆を見回るのをぼんやりと眺めていた。
今こうして、誠が見ている景色は『昭和日本』の光景としか地球圏の人間には見えないはずだが、ここは地球ではない。
それが27世紀の地球を遠く離れた植民惑星での光景だなどとは今の地球圏の人々が見ても思いもつかないものだろう。地球の20世紀末日本をそっくり真似してこの400年間の時間を何一つ変わらずに過ごしてきた国である『東和共和国』である。
見守っている観客たちもかつての日本人と顔も着ている服も話している言葉も同じだというのに彼等は日本人ではなく全員が遼州人と地球人が呼び自らも認める『宇宙人』である。
そう言う誠自身も純血の遼州人で地球の遺伝子は一切継いでいなかった。
ここ、『東和共和国』は20世紀末の日本国が完全に再現された地球人とは違う異星人である遼州人の国だった。
「ああ、流鏑馬は嵯峨家の家芸だからな。ああ見えて茜も同じことが出来るんだぜ。まあ、叔父貴は百発百中で矢を当てるが、茜の腕ではそこまでは行かねえ。それでも見世物になるくらいの腕前は有るんだ。まったく嵯峨家の人間は底知れねえよ。かえでも流鏑馬の腕は茜とどっこい。見世物にするほどじゃねえから市役所の連中に頭を下げられたら叔父貴も嫌でもこれをやらなきゃいけないわけだ」
そう言って笑うのは紺糸縅の大鎧に大きな鍬形のついた兜の女武者だった。平安武将を思わせる姿の遼州同盟司法局実働部隊第二小隊の二番機担当、西園寺かなめ大尉はそう言いながら口にくわえたタバコをくゆらせた。
「西園寺さん、ここ禁煙ですよ。……今も警官が見回ってるんですから、せめて境内では我慢してください。それにしてもさすが貴族には家芸なんて言う物があるんですね……ちなみに西園寺家の家芸は何なんですか?」
誠は寒さで垂れそうになる鼻汁を気にしながらちょっとした好奇心からガサツで生活感の感じさせないサイボーグであるかなめに尋ねてみた。
「アタシの家の家芸は『琵琶』だ。でもなあ、親父はまるでその素質がねえからな。爺さんも教えるのを諦めて叔父貴にその芸のすべてを教えたんだ。その叔父貴からアタシは琵琶の何たるかを教わって家芸にしている。だからアタシは弦楽器なら何でも弾けるんだぜ。お琴もバイオリンもどんとこいだ。オメエも知ってるだろ?正月にテレビやラジオで嫌でもアタシの15の時に弾いた『春の海』が流れるんだから。今年も良い金になった。それでもアタシには半年分の酒代にすらならない程度だがな。まあ、アタシが自分から好きで弾くのはフォークギターだけなんだ。日本の昭和のフォークギターの曲にはいい曲が多い。アタシもほとんどの曲が弾けるんだぜ。今度、一晩かけて名曲選でも弾いてやろうか?オメエの部屋で……できれば二人っきりで。雰囲気あるだろ?そのまま『許婚』のかえでの先を越して男女の一線とやらを超えてみねえか?」
かなめがギターが好きで暇ができると千要駅前のロータリー付近で路上ライブをするので何度か見物に出かけたことがあった。しかし、バイオリンや琵琶やガサツなかなめのイメージからほど遠いお琴まで弾けるとはとても信じられなかった。
「凄いですね、西園寺さん。その時はよろしくお願いします……でも、一線は超えません。……想像しただけで胃が縮むんで。それはクバルカ中佐から『漢』になるまでは駄目だと強く言われているので。あの『人外魔法少女』の『ファイアーボール』で消し炭になる……可能性があります。この前中佐に聞いてファンタジーの黒魔術師の定番の『ファイアーボール』を使えるかと聞いたら力強く『似たようなものなら使える!』と言ってたんで」
誠とかなめの鎧姿が珍しいようで、観光客が携帯端末で二人を写真に収めているのが誠には少し恥ずかしかった。
誠が社会人になってからもう二年が経とうとしていた。誠も相手を立てるぐらいの世渡り上手は身に着けていた。そんな事よりも雑兵役である誠の胴丸でも体力に自信のある誠ですらこうして5時間近くその姿でいると鎧が重く感じられた。誠の胴丸よりはるかに重い見事な大鎧を身につけているかなめだが、戦闘用の義体を持つサイボーグであるかなめにとってはこの程度は重さのうちにも入らないというように平然とした顔をして誠を見つめていた。
そして同時に機動部隊隊長にして実働部隊副隊長のクバルカ・ラン中佐から『恋愛禁止』の命令を強い調子で言われていた。しかし、それ以前に『モテない宇宙人』と地球人から揶揄されている誠達遼州人にとって、男女の一線を越えると言うのは並大抵のものでは無かった。
「何真面目な顔して答えてんだよ。まったく冗談の分からねえ奴だな。そういう時は『ぜひお願いします!』と言うのが礼儀ってもんだぜ……純血の遼州人はこれだから困るんだよ……モテないコンプレックスのおかげでよりモテなくなってる。だからこの遼州人の国、東和の生涯未婚率80%の法則は崩れねえんだ」
かなめは笑いながら流鏑馬の余韻に浸る観客達を眺めていた。そんな中、ぽつりと取り残された様に緑の飾り糸が印象的な大鎧を着込んだ武者が嵯峨が消えていった社殿裏を眺めて立ち尽くしている武者に目をやった。
「しかし、カウラさんは本当に馬と相性が悪いんですね。近づいただけで馬が威嚇して来るなんて……馬ってそんなに獰猛な動物でしたっけ?」
誠は鼻をすすり、草鞋の底から冷えが骨に上がってくるのを感じた。こんな日に暴れる馬に近づく気には、正直なれない。誠はそう言うと武者が静かに源平絵巻風の派手な鍬形の目立つ兜を脱いでエメラルドグリーンのポニーテールの髪をなびかせる様に目をやった。先ほどから鼻水が気になって仕方がない誠と違って寒風吹きすさぶ中でもカウラは微動だにせず白い息を吐きながら凛とした気配で立ち尽くしている。
「なんだよ……て、あれか?オメエが気にしているのは。アイツはしょうがねえや。うちでは将校は馬に乗るのが必須科目だってのにそんなこともできやしねえ。乗馬?簡単だぞ?アタシはサイボーグの130キロ近い身体だっていうのにごく普通に昔から乗れた。馬に乗るのに苦労した記憶もねえし、落馬も一度もしたことがねえ。それが、カウラの場合はそもそも馬に近づくと馬の方が嫌がって逃げようとして暴れやがる。乗馬以前に馬に嫌われてるんだよ、アイツは。いっそのことパチンコ依存症を止めて競馬依存症になれば改善するんじゃねえのか?そんな奴が小隊長とは、第一小隊も終わりだな」
タレ目のかなめの目じりがさらに下がった。
二人の視線の先には緑色の紐でつづられた盾が目立つ大鎧に鉢巻を巻いたエメラルドグリーンの髪をなびかせている第二小隊隊長、カウラ・ベルガー大尉はそのまま時代行列を終えた女子士官達が休んでいる一角の椅子に座ると白い髪のこちらも赤い色の紐でつづられた盾が目立つ運用艦『ふさ』の操舵手ルカ・ヘス中尉から湯気の上がる甘酒を受け取って飲んでいた。すぐにかなめは優越感に浸りきったような表情でカウラに向かって歩み寄っていった。
「そんな格好で馬にも乗らずに時代祭りの行列か?もう少し空気読めよ。乗馬ぐらい簡単だろ?普段は人型機動兵器シュツルム・パンツァーなんていう、ずぶの素人が乗ったら歩かせるのさえ難しい兵器に乗ってるパイロット様が馬の一つも乗れねえなんて笑いもんだな。いつもは偉そうな顔してアタシに説教垂れてるのに今日は逆に笑われる身か?どんな気分だ?立場が逆転した感想は」
誠の所属する遼州同盟の司法局実働部隊は、豊川八幡神社の節分の時代行列、市のパンフレットによると時代祭りのイベントに狩りだされていた。士官は基本的には馬に乗り、嵯峨の屋敷にあるという色とりどりの大鎧を着こんで源平合戦絵巻を演出していた。
伝統を重んじる遼州星系第二惑星のコロニー国家の甲武国出身で上流貴族出身の嵯峨やかなめにとっては乗馬など余技に過ぎないものだが、カウラ達東和出身組には乗馬は難関であった。それはカウラに甘酒を運んで来たルカも同じで、彼女も東和国民ということで乗馬を嗜むなら出来て当然と言う顔をしているかなめにいつもの決して外されることが無いのではないかと誠が思っている口を覆う医療用マスクの上の二つの銀色の目はかなめを恨めしそうに見つめていた。
「でも、乗馬が簡単かどうかはという以前に本当にカウラちゃんは馬と相性が悪いわね。私だって馬に乗るだけだったら轡を取ってくれたら初めてだって簡単に乗れたわよ。それが、カウラちゃんが乗るとなると馬が暴れだしちゃってどうしようもなくなる……馬ってパチンコが嫌いなのかしら?同じギャンブルとして競馬馬を応援したい馬の魂がそうさせるのかも」
そう言って近づいてきたのは司法局実働部隊運用艦、『ふさ』の艦長代理、アメリア・クラウゼ中佐だった。しかし、彼女の鎧姿には他の隊員のそれとは違って明らかに違和感があった。かなめはアメリアの頭の先からつま先までに視線を走らせた後大きなため息をついた。
源平合戦の武将を髣髴とさせる大鎧や胴丸、烏帽子を着込んだ隊員達の中、一人で戦国末期の名将真田幸村が着用したとされる赤備えの当世具足に十文字槍という姿は明らかに違和感があった。さらにその桃成兜の前面には六文銭の細工が際立って見えているのがさらに場の空気とは隔絶したものに誠からも見えた。
そんな格好をアメリアがしている理由はわかっていた。誠は確信した。……アメリアは『間違えた』んじゃない。『狙って外した』のだ。
遼州星系の第四惑星の国家ゲルパルト連邦共和国出身で日本文化に憧れて女流落語家になるべく最初はその本家ともいえる甲武に行こうとしたが、甲武が女の落語家を認めていないと聞いて女流落語家が多くいる東和にやって来たという元落語家の経歴のあるアメリアにそう言う知識が無いわけがない。
誠は年末のコミケで彼女が原作を書いた源平絵巻物のBL漫画の絵を描かされていたのでよくわかっていた。彼女が運航部部長の権威にモノを言わせて部下の女子隊員達を総動員させて作っているアダルト美少女ゲームでも何度も戦国モノや酒呑童子をテーマにした作品などの没ネタがあり、その度に鎧姿の美少女を絵描かされる誠としてはその度に細かい注文を付けて来るアメリアにはうんざりさせられていた。
自分の作品となれば小道具や歴史監修にすさまじいこだわりを見せるアメリアである。そのアメリアのエロゲにかける情熱とその情熱によりいつも何度とない原画の修正作業に追われる作業が目の前の源平合戦絵巻のを見ている誠の脳裏をフラッシュバックした。
特にかなり具体的な製作プランまで行ったもののアメリアの気が変わったので没になった平安中期を舞台にした妖怪退治物の成人男性向け美少女アドベンチャーゲームについてはそこに登場する鎧美少女の絵を描けと言われて教えられた平安武具のサイトで平安初期と中期、そして平安末期の源平合戦時の鎧兜の微妙な製造方法による外見の違いまで綿密に再現しろとアメリアに言われた時はそのあまりに詳細なアメリアのこだわりで頭がとろけそうになったことも、今の違和感しかない格好がわざとであることを証明していた。
アメリアはわざとこんな目立つ格好をしているのは誰の目にも明らかだった。要するに目立ちたいのである。場の雰囲気をぶち壊しにして大笑いしたいのである。日常生活からアメリアのそんな傍迷惑な性格は誠達『特殊な部隊』と揶揄される司法局実働部隊の隊員達を振り回してきた。
現在も、アメリアは有るきっかけからあまりにマニアックな第二小隊小隊長日野かえで少佐の日常生活をほぼ再現したエロゲームの原画を描くことを誠に強要していた。
階級がすべての軍隊や警察と言う世界である。誠はアメリアの指示には逆らえなかった。誠や同じく『特殊な部隊』では数少ない常識人の運用艦『ふさ』の副長であるパーラ・ラビロフ大尉もそんな汚いエロはコアな層にしか売れないと反論した。しかし、アメリアの『コアな層狙いなら値段を高く設定すればいいじゃないの』とまるでマリー・アントワネットの言いそうなセリフでアメリアはその企画を強引に推し進めてしまっている。
その『特殊な部隊』の中にあってさらに『特殊な』趣味のある実在の隊員というかかえでとかえでの副官で第二小隊二番機担当の渡辺リン大尉をモデルにした、あまりにも汚物表現の多いエロゲームの内容に誠とパーラはそんなゲームを誰が買うんだとアメリアに言ったが、その汚物表現の多いプレイを実践している本人達から取材したのだから確実に売れるし、入隊当初は何かというと乗り物酔いで吐いていた誠が言っても何の説得力も無いと言って一歩も譲らなかった。
仕方なく誠はこのところ汚物をペンタブで描くのが休日の日課となっていた。そして、最近では隊で金曜日に必ず出る寮の特製カレーを食べるのが苦痛になるような日々を過ごしていた。……と、ここまで考えて、誠は自分がいま節分祭の最中にいることを思い出した。最悪だ。




