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危険運転の末路  作者: リンダ


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9/10

特別講話

 特別編① 爆笑通信・緊急特番「道路は、みんなの命の通り道」

 収録場所:地域センターの小ホール


 ステージ前方にテーブルが並び、マイクが置かれている。客席には保護者、学生、町の人たち。

 舞台袖には「ミライマート音大前店」から差し入れのペットボトルが積まれている。


 司会:海野ひより(即興ツッコミの天才)

 ゲスト:青柳光子/柳川優子(M&Y)/美香/アキラ

 特別ゲスト:湯田温也/湯田泉/郷子/大船徹&大船柚月夫妻/上川雪/野田恵梨&野田朋美(母)


 ひより

「今夜は“爆笑”ってタイトルなのに、内容はガチです。テーマは煽り運転。笑えるところは笑って、でも命のところは、ちゃんと止まって聞こう」


 光子

「おっけー!“止まる”言うたらうちら得意たい。赤信号でボケ止まらんけど!」


 優子

「そこ止まれや!!!」


 客席がクスッと笑う。空気が少し緩む。


 ひより

「はい、今の一撃で会場の緊張が3%減りました。ありがとうM&Y。まずは、物語を読んだ率直な感想から。美香さん」


 美香

「“事故が起きてないから大丈夫”って考えが、どれだけ危ないか…胸に刺さりました。事故は、起きてからじゃ遅い」


 アキラ

「被害者が“回避”して成立してただけ、っていう視点がね。あれが一番怖い。加害者が無自覚に“周りの命を使って”走ってる」


 優子

「運転の上手い下手やなくて、“人の命をどう扱うか”たい。そこ履き違えたら終わり」


 光子

「車って、移動の道具やけど、いっちゃん簡単に“凶器”にもなるっちゃけんね」


 ひよりが頷き、マイクを温也に向ける。


 ひより

「温也くん。大切な人を亡くした経験があるって聞いてます。こういう話を読むの、しんどくなかった?」


 温也

「…正直、しんどいっす。

 “もしも”って言葉が、俺にはもう“想像”じゃないから。

 だから余計に思う。危険運転って、事故が起きた瞬間だけじゃなくて、周りの人に“もしも”を強制するんだなって」


 客席が静まる。

 隣に座る泉が、ぎゅっとペットボトルを握る。


 泉

「私も…。怖い運転を見ると、心臓がきゅってなる。

 “今日、無事に帰れる?”って思っちゃう。

 …それを人にやるのって、ひどい」


 郷子(丁寧な口調で)

「恐怖は、目に見えません。でも残ります。

 残った恐怖は、人の優しさを削ることもある。だから、私たちは“恐怖を増やす行為”を軽く扱ってはいけないと思います」


 ここで光子が、少しだけ笑いを足すように言う。


 光子

「恐怖を増やす前に、笑いを増やさんね、ほんと」


 優子

「笑いは増税なし!心の消費税ゼロ!」


 会場がふっと笑い、呼吸が戻る。


 ひよりが次のゲストに振る。


 ひより

「大船徹さん、柚月さん。おふたりも“喪失”を知ってる立場として…」


 徹

「失うって、突然で、取り返しがつかない。

 だから“危ないことをしない”って、技術じゃなくて誠意なんだよね」


 柚月

「加害者が“事故起こしてない”と言うたびに思うんです。

 “起きなかった”のは、周りが必死に守ったから。

 守った側が震えてる現実を、見ないふりしないでほしい」


 ひよりが上川雪へ。


 ひより

「雪さんは…」


 雪

「私は…“取り返せない瞬間”を見てしまった人間なので。

 怖さって、経験すると“身体の癖”になります。

 道を歩く時、車の音がすると肩が上がる。

 それを誰かに植え付ける運転は、暴力と同じです」


 最後に、客席の前列に座る小さな女の子へマイクが向く。

 左手首から先が欠損している、野田恵梨。隣に母の朋美。


 ひより

「恵梨ちゃん、無理に話さなくて大丈夫。話せそうなら、少しだけ」


 恵梨

「……車、こわい。

 でも、やさしい運転の車もある。

 だから、“こわい車”がなくなったらいい」


 母の朋美が、静かに続ける。


 朋美

「子どもは、道路で大人を信じてます。

 “止まってくれる”“譲ってくれる”って。

 その信頼を壊す運転は、親として本当に恐ろしいです」


 ひよりが締める。


 ひより

「今日の結論、シンプルです。

 “煽り運転は、事故の前から人を壊す”。

 そして、壊した分だけ、自分の人生も壊れる。

 ここからは、子どもたちに渡す回へ続きます」


 特別編② 博多南小学校「安全教室スペシャル:M&Yの“命守り漫才”」

 場所:体育館


 児童がずらっと座り、先生たちが後ろに立つ。

 ホワイトボードに大きく書かれている。

『道路はみんなの場所』


 登壇:青柳光子/柳川優子(M&Y)

 参加:吉田瑛一/五十嵐聡美/青柳陽翔/柳川結音/野田恵梨(子ども枠)

 見守り:美香/アキラ/郷子/泉


 光子

「みんなー!今日は“道路の使い方”ば教えに来たとよ!」


 優子

「まず最初に言う!うちらは道路でボケたらいかん!体育館でボケる!」


 光子

「いやそれ最初から体育館でボケ倒しとるやろがい!」


 子どもたちが笑う。

 先生たちも少し笑う。

 空気が柔らかくなったところで、優子がすっと声色を変える。


 優子

「でもね。笑いながら言うけど、本気の話。

 “怖い運転”は、事故が起きてなくても、人の心を傷つける」


 ホワイトボードに光子が大きく書く。


 光子

『こわい=からだが勝手に固まる』


 光子

「これ、経験ある人は分かる。

 “車が近い”“音が大きい”だけで、体が固まるっちゃけん」


 聡美

「…私、急に怒鳴られるとビクってなる。体が勝手に」


 光子

「それそれ!それが“体の防御”たい」


 瑛一

「ぼく、車のライトが後ろに見えると、急にこわくなる時ある」


 優子

「それはね、君が弱いんじゃない。危ないのが悪い」


 先生が頷く。

 泉が小さく拍手する。


 優子

「じゃあ実践!“安全の合言葉”いくよ!」


 光子&優子(声を揃えて)

「ストップ! みて! まって!」


 児童たちが復唱する。


 光子

「自転車も歩きも、止まって見る。急がん。勝たんでいい」


 優子

「そして大人にお願い。

 もし“怖い車”見たら、子どもだけで戦わんでいい。

 先生、保護者、交番、ちゃんと頼る!記録は安全な場所で!」


 結音

「撮るのってこわい…」


 アキラ(後方から補足するように)

「無理して撮らなくていい。まず避ける。命が先」


 恵梨

「…こわいとき、言っていい?」


 郷子

「もちろんです。怖いは、守るための大切な感覚です」


 ここで光子が、最後に子ども向けの短い約束を提案する。


 光子

「みんな、今日のお約束。

 “道路で偉くならない”。

 大人になって車運転しても、道路で王様ごっこはしない!」


 優子

「王様は城でしろ!道路はみんなの教室たい!」


 体育館が笑いと拍手で包まれる。

 でも、子どもたちの目は真剣だった。


 特別編③ 講話「白衣の言葉」—相田真理恵、地域講演会

 場所:市民病院の研修室(一般公開)


 前列に保護者、後列に高校生。

 関係者席に、恭一、梨花、M&Y、温也と泉、徹と柚月、雪、恵梨親子。


 真理恵は白衣ではなく、黒に近い紺の服で立つ。

 声は震えていない。震えさせないように、何度も練習してきた声だ。


 真理恵

「私は看護師です。外科病棟で、交通事故の患者さんを受け持ちます。

 今日は、医療者として、そして一人の人間として話します」


 会場が静かになる。


 真理恵

「事故は、ニュースの中だけにありません。

 病院のベッドの上にあります。

 骨折、内臓損傷、脳損傷…。

 意識が戻らない方もいます」


 真理恵は一度、目を伏せる。

 呼吸を整える。言葉を続ける。


 真理恵

「そして、ときどき…救えません。

 救えないとき、遺族の方と向き合います。

 “助けられませんでした”と伝える瞬間、胸の中が空っぽになります。

 自分が無力だと思い知らされます」


 その言葉に、温也が小さく目を閉じる。

 泉がそっと手を握る。


 真理恵

「だからこそ、私は言いたい。

 “事故が起きてない”は、免罪符じゃありません。

 事故の手前に、すでに恐怖と回避があって、心の傷があります」


 真理恵は、視線をまっすぐ前に向ける。


 真理恵

「私は、法廷で言いました。

 “あなたは人の命を軽く考えているのでは”と。

 これは怒りではなく、問いです」


 会場の空気が張る。


 真理恵

「私は、彼の車のドラレコ映像も、被害者の映像も見ました。

 駅前で自転車がふらつく瞬間、歩行者が足を止める瞬間。

 それを見た私の気持ちは…言葉にできません」


 涙がにじむ。

 でも真理恵は声を崩さない。


 真理恵

「——あんたには一生わからない。

 そう言った自分を、私は否定しません。

 なぜなら、命の重さを“自分のスリル”に換算する人に、説明し続けることは、被害者をもう一度傷つけるからです」


 そして、最後の言葉は冷たい刃ではなく、境界線だった。


 真理恵

「だから私は言いました。

 “私の前に、二度と現れるな”と。

 それは復讐ではなく、私の未来を守る言葉です」


 会場の沈黙が、ゆっくりと拍手に変わる。

 派手じゃない拍手。

 でも、芯がある拍手。


 そして、対談の“締め”として(合同ラスト)


 講話の後、ロビーで小さな輪ができる。

 恭一、梨花、真理恵、M&Y、温也、泉、郷子、徹と柚月、雪、恵梨親子。


 恭一

「記録して、通報して…正直、怖かった。でも、守れた朝があるなら、やってよかった」


 梨花

「私も…撮るの怖かった。でも、あれで“続かない”って思えた」


 温也

「怖い思いをした人が、声を上げられる空気が必要っすね」


 郷子

「恐怖に沈黙を強制しない社会が、優しさだと思います」


 光子

「道路は、勝ち負けの場所やなか」


 優子

「命を“譲り合う”場所たい。ほんとそれ」


 恵梨

「こわい車、なくなる?」


 雪

「なくすために、大人がすることがある。あなたの“こわい”は、守られるべきものだよ」


 恵梨が小さく頷く。

 朋美が娘の肩に手を置く。




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