番外 薄幸の少年リード(第二部)
「母さん、帰ったよ。」リードが扉を開けた瞬間、彼は凍りついた。
三、四人のギャング団員が母のベッドに座り込み、母は床に叩きつけられていた。
「母さん!」リードは恐怖に駆られ、母を起こそうとした。だが、団員の一人、屈強な大男がリードの顎に一蹴りを入れ、彼を目眩くほど蹴り飛ばした。
「お前のクズ親父が俺たちに借金を山ほど作って、どこに逃げたか知らねえ。」大男はリードの前にしゃがみ、黄ばんだ歯を剥き出しに言った。「だから、利子込みでキリよく四閃金幣。さっさと出せ。」
「そんな金、ないよ! 許してくれ、ほんとになんて!」リードは泣き叫んだ。
「お? なら容赦しねえぞ。」大男は笑った。彼はリードがそんな金を持てないと知っていた。ただ脅して遊ぶつもりだった。
「お前の母貴を娼館に売るぜ。病弱でも、まあそこそこ美人だし、こういうのが好きな奴もいるかもな。」大男が言い終えると、周りのギャングたちが猥褻な笑い声を上げた。
「やめてくれ、頼むからやめて!」リードは声が嗄れるまで泣き叫び、ひたすら跪き、最も卑屈な姿勢で懇願した。
「それはお前が決められねえ。」大男はにやりと笑い、母の髪を掴んで言った。「奥さん、最後に息子の間抜け面をよく見ておきな。」
母を引きずり上げた瞬間、大男は訝しげな表情を浮かべ、母の鼻孔に触れ、叫んだ。「くそ、死んでやがる!」
「母さん!」リードは呆然とした。頭が真っ白になり、ただ「うああ」と嗚咽するだけだった。彼は泣き死にしそうだった。顔は痛苦に歪み、ただ苦痛だけが残った。
「ウェイン、お前のせいだ! なんであんな力で投げた!」傍のチンピラが罵った。
「こんな簡単に死ぬなんて知るかよ!」非難されたチンピラは自分も困惑していると示し、皆一斉にリードを睨んだ。
「今残ってるのは、この汚ねえチビの貧乏ガキだけだ。」一人の大男が怒り、泣き昏れる寸前のリードのボサボサ頭を掴み、吊り上げた。
「連れてけ。いくらで売れるか見てやる。」
リードはその後のことを覚えていない。気絶していたからだ。目覚めた時、彼は灰色の檻の中に裸で横たわっていた。何も残っていなかった。
「目ぇ覚めたか?」門外の看守が言った。
リードが何事かと尋ねようとしたが、嗚咽しか出せず、声は嗄れていた。
「ここは地下闘獣場だ。」看守はリードの問いを待たず答えた。紫以外の色で建てられた違法建築は、闘獣場だけだ。
「ガキ、ほんと不運だな。」看守は言った。「お前、開幕一番で、巨犬の群れと戦うんだ。」
看守は声を低くし、続けた。「あの巨犬は凶暴だ。四肢を噛み、腹を裂き、最後に喉を噛みちぎる。お前が勝つ見込みはねえ。惨めに死んで、観客を盛り上げるための生贄だ。」
看守はリードの反応を期待したが、恐怖や叫び声はなく、ただ麻木と沈黙だけだった。
彼はつまらなそうに顔を背け、リードを見なかった。このガキが惨めに叫ばなかったら、親分が損するかもしれないと思ったが、それは自分の知ったことじゃない。
リードは天井を見つめた。やがて、水と食事が届けられた。一会叫ぶ力を付けるためだ。
彼は少し食べ、また天井を見つめた。
リードは死を待っていた。自分が世界で最も不運で、最も不当に扱われた人間だと感じていた。
だが、彼は不平を言わず、祈りもせず、ただ天井を見つめ続けた。
夜が近づき、看守はリードを見て、職務で最も奇妙な人間だと感じた。だが、闘獣が始まる時間だ。
鍵を取り出し、檻を開けようとした瞬間、彼は暑さを感じた。換気は悪いが、こんな暑さは異常だ。
看守は自分の服が燃えているのに気づいた。
いや、紫のものはすべて燃えていた。
リードがついに反応した。彼は驚きと恐怖で、看守が突然燃え上がるのを見た。看守は叫び、服を脱ごうとしたが、簡単な服なのに、焦って脱ぐと身体に貼りついたようだった。焼死するまで脱げなかった。
リードは爪先立ちで狭い換気口から外を見た。彼が見たのは地獄だった。燃える地獄。
紫都全体が紫火と叫び声、絶望に満ちていた。
リードはようやく怖くなった。光明教の三角架は持っていなかったが、彼は祈り始めた。
どれほど経ったか、リードの短い人生より長い時間が過ぎたようだった。
外は静かになった。
リードは祈りを止め、勇気を振り絞り、焼け灰になった看守の落とした鍵を拾い、扉を開けた。
彼は自由だった。信じられない自由だった。
リードは手探りで、闘獣場の牢から這い出た。
彼は外の世界に出た。
廃墟だらけの、静かな世界。
リードは茫然とし、呆然とした。
だが、すぐに解釈を見つけた。
これは神の試練だった。
罪深いこの都市は、神の紫火で滅ぼされた。だが、神はリードを守った。入信してわずか二日の信徒を。
リードは即座に跪き、天に向けて祈った。
母の死は悲しかったが、彼女は天国にいると信じた。
この都市に彼の未練はなかった。ほんの一部の善人を除いて。
例えば、サム(ルクス)。
「サムと彼の妹も試練を乗り越えたらいいな。」リードは祈った。
そして立ち上がり、服すらなかったが、身体に力がみなぎるのを感じた。
「神よ、感謝します。あなたを敬愛します!」リードは大声で叫んだ。今、彼は神聖曙光帝国へ向かう。
だが、最初の歩みを踏み出した瞬間、リードは胸に黄金色の刀が刺さっているのに気づいた。
「ちっ、ただの凡人か。」意識が消える前、遠くから声が聞こえた。「藍銀貨10枚の神力を無駄にしたぜ。」
リードは身体を支えきれず、倒れた。
倒れると同時に、最後の力を振り絞り、彼はこの人生初めての汚い言葉を吐いた。
「くそくらえな世界だ。」
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