閑話 組織の今
「何故だ、何故上手くいかない!」
組織のトップはいらついていた。
とある大陸に対する作戦は遅々として進んでいない。
全く成果があげられないわけではないのが、かえって悩ましかった。
「聖国ではそれなりに成果をあげられました。【都市】を作ることまではいけたのですから」
「西方でも異名持ちの鬼を作り出すところまではいけました」
組織の部下たちがおそるおそる報告する。
彼らの言うことに嘘はない。
途中までは上手くいっていたのである。
いいところで何者かが彼らの成果を台無しにしまっているのが問題だった。
「調べてみたところ、【都市】は八神輝のギーゼルヘールなる者につぶされたようです。まさか【都市】と戦える者がいるとは。ギーゼルヘールこそ八神輝最強なのでしょう」
帝国の関係者が聞けば笑い出しそうな報告がされる。
「帝国とやらが大国だというのは嘘ではないわけか。【都市】を倒せるほどの猛者がいるのだから」
他のメンツがもっともらしいことを言う。
彼らは元帥も倒されたことを覚えていないようだった。
「そうだな。【都市】以上の戦力をぶつければ帝国を倒せるだろう」
「帝国は後回しにしてもよいのではないか?」
別の幹部が言う。
「他の国を攻め落とし、戦力を増大させた方がいいのでは?」
「最強の国家を叩き潰せば後は余裕だろう。最初に最強を潰すべきだ」
意見が分かれてしまったのをリーダーは手を叩いてそれを止める。
「帝国は後回しにしよう。元帥様すら倒した戦力がいるのだ」
彼だけは覚えていたのだ。
「他国から切り崩しですか……つけこみやすそうなのはやはり王国か聖国でしょうか」
「同感ですな。どちらも動きが悪く、戦力は大したことなさそうです。将軍様でも呼べたら一気に攻め落とせそうです」
「うむ……将軍様をお呼びするのが先決だな。聖国は帝国と近い。何かあれば対処されてしまう可能性がある。狙うなら王国がいいだろうな」
「商国が近くにありますが」
「あそこの国力は大したことはない。財力はあるがな。むしろ気にすべきなのは連邦だ」
「連邦は確かによく分からないな。国力で言えば帝国、王国、聖国、商国より下だと思うが……」
「都市国家群と似ているようで違うな。各個撃破も難しそうだ」
「まず王国の切り崩しを狙い、将軍様をお招きするべきだろう」
とトップが改めて言う。
「ぐずぐずしていると我々は見捨てられてしまうかもしれん。それだけならまだいいが……」
彼がわざと言葉を区切ったことで、組織のメンバーの想像力が恐ろしい報告に刺激される。
全員が真っ青になっていた。
「心して任務に当たれ」
「はっ」
彼らは威勢よく返事をした。




