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凡人と神様  作者: 遺志又ハ魂
第二部 【詰むまでの物語】
39/72

第38話 『効果抜群な秘策』

「は〜い! とうちゃ〜く!」


ダルっ子の寝ぼけた声が里に着いたことを知らせる。痛い子におぶされて、寝ていたようだ。

念力飛行を終え、ゆっくりと降下して、着地。


「あの大木の根元がエルフの里だったのか」


里には天を突き破る巨木が生えていた。

その幹や根にエルフは居を構えているらしい。

丸い形の扉が窓が、いくつも視認できた。

その幻想的な風景に、驚嘆の溜息を漏らすと。


「やっと帰ってきた! どこ行ってたの!?」


1人のエルフが虚空より現れ、大声をあげた。

間違いなく、空間魔法。ならば、この子は。

痛いエルフとダルそうなエルフに駆け寄る。

そのまま抱擁して再会の喜びを分かち合う3人。


「本当に心配したんだからぁー!」

「くっくっくっ……心配かけて、ごめんね」

「なんかドワーフに攫われたっぽいんだよ〜」

「はあっ!? ドワーフに!? なんで!?」


仰天するエルフに転生した気さくな女子。

俺は会長エルフを背中から下ろしつつ、説明。

いや、もう面倒臭いから直接記憶を見せよう。


「ほい! だーれだ?」

「ふぁっ!? えっ? なになに!?」


背後から視界を塞ぎ、目隠し。悪戯心である。

そのまま先程の顛末を盗み見させる。そして。

記憶の閲覧に夢中になってる彼女の胸を揉む。


「ぎゃっ!? な、なに!? なんなの!?」

「ワハハ。やっぱり隠れ巨乳なんだな」

「ど、どうしてそれを知ってるの!?」


ゆったりした服装で誤魔化しているが無駄だ。

俺には前世の記憶がある。気さくな子は巨乳。

慌てて胸を庇いながら、魔の手から逃れる。

そして、顔を真っ赤にして振り向く、直前に。


「ほら、お前の大好きなショタでちゅよ〜」

「ッ!? か、かわいい! 誰この子!?」


スライムの変身能力で、ショタへと変貌。

イメージしたのは、スライム姫のショタ姿。

受付嬢のお姉さんを骨抜きにした愛くるしさ。

あの綺麗な水色髪ではなく敢えて地毛の黒髪。

俺的に黒髪ショタの方が親しみを持てるから。

同じショタ愛好家ならば、気に入っただろう。


「こんばんは、お姉ちゃん」

「こ、こんばんは……じゃなくて!」

「どうしたの?」

「い、いきなり胸を揉んだら駄目じゃない!」

「駄目なの?」

「だ、駄目じゃないけど……うぅ〜」


素晴らしい。俺の秘策は、完璧だ。

この変身はショタコンに効果抜群だ。

しどろもどろになった気さくなエルフ。

このまま揶揄いたいのは山々だけれど。

そろそろ他のエルフっ子達の視線が痛い。


あとが怖いので、変身を解いて、ネタバラシ。


「残念。ショタではないのでした!」

「ぶっふぉ!? 何よこの冴えない人間!?」


あ、酷い。冴えないとか言われた。ショック。


「くっくっくっ……この者は我の下僕……」

「私達を助けてくれたんだよ〜」


すかさず、ダルっ子エルフが紹介してくれた。

痛いエルフはどうしても俺を下僕にしたがる。

気さくなエルフは2人の言葉とさっきみた記憶が繋がったらしく、ふむふむと納得した様子。


「そう。ありがと。じゃあ、消えて」

「酷くないっ!?」


素っ気なく感謝を告げ、しっしっと追い払う。

そのあんまりな態度に憤慨すると。

気さくなエルフは俺を指差して、指摘した。


「エルフの里は部外者は立ち入り禁止なの」

「部外者って?」

「あんたは耳が短いでしょ? だから部外者」


ああ、なるほど。よくわかった。それならば。


「ほら、これで俺もエルフの仲間入りだ」

「ちょっ!? 変身で耳を伸ばすとか卑怯よ!」


スライムの変身能力で、エルフ耳を形成。

これでどこからどうみても俺はエルフだ。

胸を張って威張っていると、彼女は怒って。


「だいたいこの里に何しに来たのよ!?」

「ん〜そうだな。観光みたいな?」

「だったらドワーフの村に行きなさいよ!」

「毛むくじゃらは好きじゃないからな」

「とにかく、駄目なものは駄目!!」


ぷくっと頬を膨らませる、気さくなエルフ。

もはや全然気さくじゃないな。意地悪女だ。

もっとも原因は出会いがしらに胸を揉んだ俺の落ち度であるが、さりとてドワーフの村は嫌だ。

毛むくじゃら塗れなんて、死んでも御免被る。


こうなったら、仕方ない。最終手段だ。


「お姉ちゃん……意地悪、しないでよぅ」

「ッ!?」


俺は泣き真似をして、説得を試みる。

無論、ショタ姿で。しくしく、ポロポロ。

年上を相手するのは慣れているからな。

俺はずっと年齢不詳の姉ちゃんと同居してた。

それによって培った経験をもとに、涙を流す。


「な、泣かないで!? ほら、鼻かんで!」

「ふぐっ……もう、怒ってない?」

「怒ってないから、もとの姿に戻ってよ!」

「ふん。ショタコンはこれだから……」

「ぶっ殺されたいのかあんたは!?」


もとの姿に戻ってやれやれとジェスチャー。

するとまたもや激昂する気さくな女子。

面倒臭いなと半目を向けると、相手が折れた。


「もう、わかったわよ。好きにすれば!」

「ありがとー! お姉ちゃん大好き!!」

「もとの姿で飛びつくな! 胸を揉むな!?」


とりあえず、一件落着。滞在の許可を得た。


「それで、どうする〜? もう夜も遅いし」

「ふははっ! 我はもう疲れたぞ!」

「それじゃあ、それぞれ家に帰って休もう」


茶番を眺めていたダルっ子エルフが大欠伸。

痛い子も眠そうだ。会長エルフが帰宅を促す。

となると、俺は置いてけぼりかと思いきや。


「君もおいで〜お礼に泊めてあげるよ〜」

「んなっ!? 我らの家に招くのか!?」

「そうだよ〜彼には負い目があるからね〜」


負い目とはなんのことだろう? それよりも。

ダルっ子は痛い子と同居しているらしい。

どうしたもんかと思ってると会長エルフが。


「なんなら、ボクの家でもいいよ〜」

「い、いいの?」

「うん。迷惑かけたし、それに……」

「どうかしたのか?」

「さっきの熱も、まだ冷めないしね?」


ドキンとした。魔性の囁き。酷く官能的。

このまま会長エルフの自宅に突撃が最善。

そんなことはわかってる。だけど、それでも!


童貞の俺は……チキンだった。


「あの、遠慮しときます」

「えぇ〜? なんでさ、おいでよ〜」

「いや、もっとお互いをよく知ってから……」

「そんなの身体に教えてあげるよ〜」


ぐいぐい迫る会長エルフに困りつつ、質問。


「あの、会長」

「ん? なんだい?」

「俺のこと、好き?」


極めて阿呆らしい質問。けれど大事なことだ。

すると、会長エルフはポカンとしてから。

くすくす面白そうにひとしきり笑い、返答。


「嫌いじゃないけど、好きでもないかな」

「なにそれ、結局どっちだよ!?」

「ん〜異性って感じがしないんだよね」

「ぐはっ!?」

「女顔だし、髪も長いし、女友達的な?」

「がはっ!?」


強烈なボディブローで、ノックアウト。

真っ白に燃え尽きて項垂れる。二度目の失恋。

失恋? そうか。俺はまた、失恋したのか。

というか、初恋も同じような理由だったな。

異性として見られない。悲しすぎる理由。


そんな俺に、ダルっ子の救いの声が。


「ほらほら〜下僕くんが取られちゃうよ〜」

「くっ! やむを得んか……おい、下僕!」

「いや、下僕じゃないからね?」


げんなりしつつ応答。失恋男には優しくして。


「家畜の世話は主人の務め、我が家に来い!」

「いや、だから家畜でもないからね?」

「つべこべ言わずに来るんだっ!」


誰か助けてと思ったら、気さくなエルフが。


「ショタ姿なら別に私の家に来てもいいけど」

「俺はありのままの自分でいたいんだ」

「なら却下。下僕にでも家畜にでもなれば?」


ばっさりきっぱりさっぱり、見捨てられた。

なんとも冷たすぎる。これで家畜決定か。

と、思ったら。


「本当にありがとね。友達を助けてくれて」

「お、おう……?」

「ショタ姿なら、また胸を触らせてあげる」


小声でお礼を言いつつ、魅力的なお誘い。

しかし、騙されるな。ただのショタコンだ。

こんなものは真実の愛ではない。まがい物だ。


だが、まあ、それでも、やっぱり。


「本当に、お前はショタコンの鏡だよ」

「ショタコン言うなっ!? まったく、もぅ」


気さくな女子もまた、転生しても変わらない。

それが無性に嬉しくて、頬がほころぶ。

すると、彼女も呆れたように、にかっと笑う。


その愛嬌のある笑みが、懐かしくて、嬉しい。


「それじゃ、お家に帰ろ〜」

「早くしろ! 下僕!!」

「ぐえっ!? ね、念力はやめて……!」


痛い子の念力で強制連行。

首根っこを引っ張られる感覚。

ずるずると引きずられて、彼女達の家へ。


「ふははっ! ここが我が家だ!」

「ほら、入って入って〜」

「お、お邪魔します……」


女子の匂いが充満する室内に、俺は入った。

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