眠れない
春希の家に泊まっていた祥太は、もう寝ようよ、と明かりを消してもらい、ベッドに横になって天井を眺めていた。
隣で寝ている春希はもう眠っただろうか。
二人とも体が小柄なので、一緒にベッドで寝ることにした。
季節は春先で、温かい日と少し寒い日を繰り返している。
今日はまだ温かい日だ。
春希の顔をこっそりと見た。目を閉じた顔は静かに呼吸を繰り返している。
彼の唇は薄く、少しだけ開いて浅い呼吸だ。
中学生だった時、宏人にいきなりキスをされた。忘れた日は一日もない。
祥太はぎゅっと目を閉じた。
何で宏人はあんなことをしたんだろう。
「眠れないの?」
春希の声がする。起きていたのか、祥太はドキッとした。
「ああ、ごめん……」
「僕の顔じっと見て、なんなの?」
「いや、あの、俺……。ずっと前に無理やりキスされてさ」
「え?」
春希が急に起き上がった。
「な、何? その話」
他人に興味のなさそうな春希が食いつくのは意外な気がした。
「そいつ、男でさ、俺、びっくりして突き飛ばしちゃって……」
「えーっ。そ、そうなんだ……。あっ、もしかして、さっきのスマホがその相手?」
「うん……」
「ストーカーなの?」
「ち、違うよっ。幼なじみ」
「関係ないよ。ストーカーだよ」
「宏人はそんなんじゃないよっ」
「ふーん」
春希はそこまで聞くと、急に興味が失せたのか、息を吐いた。
「もう、寝ようよ。明日は帰るんでしょ?」
「うん」
「今日はありがとう。たくさん描けて嬉しかった。また、描かせてくれる?」
祥太が頷くと、春希はほっとした顔になった。
「誰かがいるのも悪くないね。おやすみ」
春希はそう言ってサッと布団に横になり目を閉じた。そして、眠ってしまった。
祥太は、考えるのをやめたくて、同じように目を閉じた。今度はすぐに眠ることができた。
翌朝、朝食を食べさせてもらうと、家に帰った。




