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けなげな王子に愛を  作者: 春野セイ
第一部 中学生編
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眠れない


 春希の家に泊まっていた祥太は、もう寝ようよ、と明かりを消してもらい、ベッドに横になって天井を眺めていた。

 隣で寝ている春希はもう眠っただろうか。


 二人とも体が小柄なので、一緒にベッドで寝ることにした。

 季節は春先で、温かい日と少し寒い日を繰り返している。

 今日はまだ温かい日だ。


 春希の顔をこっそりと見た。目を閉じた顔は静かに呼吸を繰り返している。

 彼の唇は薄く、少しだけ開いて浅い呼吸だ。

 

 中学生だった時、宏人にいきなりキスをされた。忘れた日は一日もない。

 祥太はぎゅっと目を閉じた。

 何で宏人はあんなことをしたんだろう。


「眠れないの?」


 春希の声がする。起きていたのか、祥太はドキッとした。


「ああ、ごめん……」

「僕の顔じっと見て、なんなの?」

「いや、あの、俺……。ずっと前に無理やりキスされてさ」

「え?」


 春希が急に起き上がった。


「な、何? その話」


 他人に興味のなさそうな春希が食いつくのは意外な気がした。


「そいつ、男でさ、俺、びっくりして突き飛ばしちゃって……」

「えーっ。そ、そうなんだ……。あっ、もしかして、さっきのスマホがその相手?」

「うん……」

「ストーカーなの?」

「ち、違うよっ。幼なじみ」

「関係ないよ。ストーカーだよ」

「宏人はそんなんじゃないよっ」

「ふーん」


 春希はそこまで聞くと、急に興味が失せたのか、息を吐いた。


「もう、寝ようよ。明日は帰るんでしょ?」

「うん」

「今日はありがとう。たくさん描けて嬉しかった。また、描かせてくれる?」


 祥太が頷くと、春希はほっとした顔になった。


「誰かがいるのも悪くないね。おやすみ」


 春希はそう言ってサッと布団に横になり目を閉じた。そして、眠ってしまった。

 祥太は、考えるのをやめたくて、同じように目を閉じた。今度はすぐに眠ることができた。

 翌朝、朝食を食べさせてもらうと、家に帰った。



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