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けなげな王子に愛を  作者: 春野セイ
第一部 中学生編
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自由とは


 授業中、宏人の心は上の空でずっと祥太のことばかり考えていた。

 ぼんやり黒板を眺めていると、日直の生徒が号令をかける声に我に返った。

 宏人は遅れてすぐに立ち上がった。いつの間にか授業が終わっている。みんなは掃除をするために椅子や机を動かし始めた。


 あ、もう掃除の時間か。

 宏人も同じように椅子と机を床掃除がしやすいようにと動かした。机を少し浮かせて動かしていると、ふいに、ツンと鼻が痛くなった。やだな、どうしてこんな時に……。


 感傷的になっているのは、祥太がいないせいだ。

 自分の割り当てられた掃除場所へ急いで移動する。そして、今日も一日が終わっていく。


 家に帰る道も一人だ。いや、違った。今、宏人の腕にしがみついているのは瑞穂だ。


 ホームルームが終わって、放課後、一緒に帰ろうとやって来て、教室を出て校門を出てもずーっと一緒にいる。

 瑞穂は朝から元気いっぱいだ。


「君は元気だね……」

「え? なんか言ったあ?」


 瑞穂の底抜けの明るさに、宏人はため息をついた。瑞穂がゲーっという顔をする。


「くっらー、何そのじめじめした顔。かっこいい顔が台無しじゃん」


 瑞穂にけらけらと笑われてムッとした。

 言ってしまおうか。

 祥太のことを知っているのは、瑞穂だけだし、聞いてくれそうな気がした。


「……夕べと今朝、祥太がうちに来なかったんだ」

「へ? あ? ああ、そうなの?」


 瑞穂はいきなり語り出した宏人にちょっと驚いた。


「へー、風邪でも引いたのかな。お見舞いに行ったら?」

「え? か、風邪?」


 そうか。その考えはなかった。

 宏人の心に少し希望の光がさした。よかった。僕を無視しているわけじゃないんだ。


「そうだな、ありがとう、瑞穂」

「んあ?」

「僕、祥太に無視されたのかと思って……」


 無視していたのは、宏人の方だったがその点は棚に上がっている。


「はあ、宏人って、本当に子どもっぽいよね。そんなに大きな体してんのにさあ」

「どういう意味だよ」

「もう、高校生なんだよ。もっと自由に考えていこうよ」

「自由にって……」


 瑞穂の言っている自由って何だろう。

 宏人は家に向かって歩きながら考えてみたが、大雑把すぎてその自由の意味はよく分からなかった。



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