ep0.黎明
「…………ですから、世界を再興するためには貴方様のお力が不可欠で」
「ふん、この世界にはもう……いや、最初から期待なんてしていない」
「そこをなんとか」
声。
誰かの、話し声。
「せめて、選んでくださるだけでも……ほら、ここに並ぶのは我々の最高傑作でございます。ね、お願いですから、選んでくださいませ。貴方様が選ぶことに価値がある」
「……はぁ」
光。音。
誰かが近づいてくる。見ている。
「……」
手を伸ばす。行かないで。見捨てないで。
小さく弱い手が、大きく悲しい手に触れた。
「…………ふうん。じゃあ、君でいいや」
それは気まぐれ。あるいは、運命。
この古い記憶が、彼という世界の夜明けだった。
☆☆☆
――世界は、一度終わった。
五度にわたる世界大戦。そのきっかけが何だったのか、もう誰も覚えていない。宗教戦争だったのか、世界不況だったのか。とにかく戦争が終わればまた新たな問題が起こり、再び戦争が起こり、どこかの国が参戦して、世界を巻き込んで。最後には少なくなった食糧と土地を奪い合う生存戦争になった。
どの国も、自分の国を守りたかった。民を守りたかった。最初は中立を保っていた国も食糧と土地を奪われるようになると徹底的に抗戦して、また他の中立国から奪い、それの繰り返し。世界には、荒れ果てて汚染された土地と数千の人間、それから兵器やシェルターの残骸しか残らなかった。
これではいけない。世界を再出発させなくては。
生き残った人間たちは、協力して世界を再興することにした。国籍も、宗教も、関係のない。ただ人間という共通項だけを頼りに。
そうしてできたのが世界政府であった。
そして。
「イヴ、時間だ」
イヴ・ウェステリア、十五歳。
彼こそが、その世界政府の最高指揮官であった。
世界政府ができた時、一番最初に問題になったのが「誰が指揮権を握るか」ということであった。
国籍も宗教も関係ない、と言いながらも……いや、そう言うからこそ、特定の国籍や宗教を持つ個人が指揮官になることは許されなかった。所詮は人間だ。権限を持てば自分の故郷の復興を優先してしまう。自分と同じ国籍の人間を優先してしまう。あるいは、他者からそう見られてしまう。
ゆえに、世界政府は画期的な結論にたどり着いた。
生き残った全ての人間の、全ての国籍や人種の遺伝子を持った人間を作れば良い。
計画を担った科学チーム「エデン」は見事な結果を出した。条件を満たした赤ん坊が何人もできたのだ。イヴはその中の一人に過ぎなかった。が、こうして最高指揮官として君臨することになった理由はただ一つ。
「今日の謁見で観測神様に気に入られてこい」
観測神に、選ばれた赤ん坊だったから。
読んでくださってありがとうございます! タラノリオと申します。
この作品は未完結ですので更新が遅めかもしれませんが、ゆっくりお付き合いいただけると幸いです。
なお、別作品『Juwel Hexe』は完結保証の作品です。こちらもどうぞよろしくお願いいたします!




