表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恐竜王レクス 〜三万年後に目覚めた最強王族、人類の世界で冒険者になる〜  作者: Saaaya


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
1/28

第一話 王の目覚め


 闇だった。


 どれほどの時が流れたのか分からない。


 永遠にも思える静寂の中で、一つの意識がゆっくりと浮上していく。


 最初に感じたのは違和感だった。


 身体が重い。


 いや、違う。


 軽い。


 あまりにも軽い。


 かつて大地を震わせた巨体の感覚がない。


 まるで別の生き物になったようだった。


 ゆっくりと瞼を開く。


 視界に映ったのは薄暗い岩壁。


 天井には青白く発光する鉱石が埋め込まれている。


 見覚えのない場所だった。


 最後に覚えているのは、あの日。


 神々。


 光。


 怒号。


 そして――封印。


「神ども……」


 掠れた声が漏れた。


 その瞬間、彼は固まった。


 声。


 今、自分は声を出したのか。


 しかも。


「なぜ……人語を……?」


 理解できる。


 言葉の意味が。


 頭の中には知らないはずの単語や知識まで浮かんでくる。


 意味が分からない。


 なぜ人類の言葉を理解している。


 なぜ自分が話せる。


 混乱しながら立ち上がろうとして――再び動きを止めた。


 視界に入った腕。


 長い指。


 鋭い爪。


 だが。


 小さい。


 あまりにも小さい。


「……何だ、これは」


 腕を見つめる。


 前脚ではない。


 人間のような腕だった。


 巨大な顎もない。


 長大な尾もない。


 山のような身体もない。


 代わりにあるのは、人類によく似た身体。


 だが完全な人間ではなかった。


 指先には黒い爪。


 首筋には薄く鱗が残っている。


 瞳は爬虫類のように縦長だった。


「ふざけるな」


 低い声が響く。


「ふざけるな……!」


 怒りが込み上げる。


 拳を握った。


 その瞬間。


 轟音と共に目の前の岩壁が吹き飛んだ。


 ズドォォォォン!!


 洞窟全体が揺れる。


 土砂が崩れ落ち、眩しい光が差し込んだ。


「……」


 砕け散った岩壁を見つめる。


 力は残っている。


 身体は変わった。


 だが力そのものは失われていない。


 むしろ以前よりも凝縮されているような感覚があった。


 彼はゆっくりと洞窟の外へ歩き出す。


 そして。


 久しぶりの風を感じた。


 木々が揺れる。


 草の匂いが鼻をくすぐる。


 空は青く澄んでいた。


 だが。


「……何だ、あれは」


 視線の先に異様なものがあった。


 空に浮かぶ巨大な建造物。


 島のような大きさ。


 塔や城壁のようなものまで見える。


 人工物だった。


 どう見ても自然のものではない。


「人類の……建築物か?」


 理解できなかった。


 かつての人類に、あんなものを造る力はなかった。


 そもそも空を飛ぶなどあり得ない。


 嫌な予感がした。


 周囲を見渡す。


 遠方には巨大な都市が見えた。


 高い城壁。


 無数の建物。


 光る塔。


 そして空を横切る光の筋。


 どれも彼の知る世界には存在しないものだった。


「どれだけの時が流れた……」


 呟く。


 答える者はいない。


 だが確実に分かる。


 世界は変わっている。


 自分の想像を超えるほどに。


 その時だった。


「いたぞー!!」


 遠くから声が響いた。


 複数の人影が駆けてくる。


 人間だった。


 武器を持っている。


 だが兵士ではない。


 研究者のような服装をしていた。


「本当にいた!」


「封印反応の発生源だ!」


「急げ!」


 興奮した声が飛び交う。


 彼は無言で見下ろした。


 人類。


 かつての獲物。


 だが妙な感覚があった。


 懐かしさにも似た違和感。


 説明できない感情が胸の奥を掠める。


 その中から、一人の少女が前へ出た。


 栗色の髪。


 年齢は十六、七ほど。


 震えながらも真っ直ぐこちらを見ている。


「あなた……」


 少女は息を呑んだ。


「本当に……」


 そして恐る恐る口を開く。


「恐竜、なの……?」


 その言葉に、彼は目を細めた。


 恐竜。


 久しく聞いていなかった呼び名だった。


「……ほう」


 低い声が響く。


 少女の顔が強張った。


 目の前の存在が人語を話したからだ。


 彼は少女を見下ろしながら口を開く。


「まずは一つ聞こう」


 その場の全員が息を呑む。


 圧倒的な存在感。


 ただ立っているだけで空気が重い。


「今は何年だ?」


 誰も答えられない。


 答えようともしない。


 だが少女だけは違った。


 恐怖に震えながらも、彼女は一歩前へ出る。


 そしてゆっくりと口を開いた。


 この答えが、目の前の存在の運命を大きく変えるとも知らずに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ