エピローグ(SIDEシャルル)
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最終話です!
「おい、そこのくそ猫」
俺、シャルル・サティが王都に戻って来て十日。
我が家の庭の木の枝で呑気に昼寝をしているエドウィージュの愛猫マノンは、俺の呼びかけに片目をあけ、じろりと見下ろして来た。
「てめえ、よくもエドウィージュを奪ってくれたな。降りて来やがれ、このエセ猫」
「にゃー」
「ふざけんな、今更猫の真似なんてすんじゃねーよ!」
一見ただのでかい猫に見えるマノンがただの猫ではないことくらい、俺もとっくに気づいている。
……ただの猫に、エドウィージュを奪われてたまるかよ。
前からおかしいとは思っていたが、こいつは猫じゃなくて妖精猫だ。
ジェラルドから聞き出したから間違いない。
能天気なエドウィージュは、まだマノンのことをただの変な鳴き方をする猫だと思っているようだが。
マノンはゆらゆらとふわふわな尻尾を揺らして「けっ」と笑う。
「エジュはもともとオレんだこの陰険魔法使い。それを横からかっさらったのはテメェだ。順番が逆だろうがくそったれ」
……口わりぃ!
まあ、俺も人のことは言えないんだが。
「いいか陰険魔法使い。エジュがお前のことを気に入ってるからひとまずは目をつむってやる。だが間違えんな。エジュの一番は未来永劫オレ様だ。テメェは永遠に二番手なんだけっけっけっ」
「おいこら降りて来い燃やしてやる」
本気でイラっとして魔法を使いかけた時「マノンー?」と邸からエドウィージュの声がした。
とてとてと小走りで玄関から飛び出してくると、俺の姿を見てぱっと笑う。
「シャルル、マノン見なかった?」
「あんのくそ猫ならあそこだ」
「まあマノン! そんなところにいたの? 昔と違って簡単に降りられるんでしょうけど、危ないから高すぎるところに上ったらだめよ?」
「昔だって降りようと思えば降りられたぜ?」
……ちょっと待て、どういうことだ。
つまりあれか?
子猫の頃に木のてっぺんで震えて降りられないふりをしていたのは、エドウィージュの気を惹くためにわざとやってたってことか?
俺は本気でマノンを燃やしてやろうかと考えたが、エドウィージュは相変わらずマノンをただの猫だと思っているらしく、「マノンってば日に日に変な鳴き方をするようになるわ」なんて頓珍漢なことを言っている。
……落ち着け。この猫を燃やすのは簡単だが、そんなことをしたらエドウィージュに嫌われる。
このふてぶてしい妖精猫を、どういうわけかエドウィージュはいたく可愛がっているのだ。
何せ、結婚式のベールまで猫柄にするくらいである。
それを知った時、それとなくベールは他の柄にしたらどうかと訊いてみた。
だが、エドウィージュが悲しそうな顔をするからつい許してしまったんだ。くそっ、エドウィージュとの結婚は嬉しいが、あのベールをかぶったエドウィージュとドヤ顔をするこのくそ猫の姿を想像するともやっとする。
エドウィージュとの結婚は、ドレスやなんやと準備があるため、来年の春に決まった。
予定より一年遅れでの結婚式だ。
もう式なんてすっ飛ばしてとっとと夫婦になりたかったが、国王夫妻以下がやかましいので強行突破ができない。
……まあ、エドウィージュがここで生活しているだけましか。
国王夫妻たちは俺が王都に戻ったのをいいことに、エドウィージュの生活拠点を城に戻そうとしてきた。
だが、エドウィージュがもう引っ越したし俺の側にいたいと言ってくれたから、一応は現状維持になっている。
……隙あらば城に連れ帰ろうとしているみたいだから油断はならないがな。
俺とエドウィージュは相思相愛なはずなのに、周りに邪魔者が大勢いて気が休まらない。
エドウィージュをどこか遠くに攫って二人きりで生活できないだろうかと、俺は最近、本気で考えていた。
……エドウィージュは家族が好きみたいだから、我慢しているんだがな。
エドウィージュが俺から逃げようとするなら問答無用でかっさらうが、俺の側でにこにこしているから、多少の不自由は諦めているんだ。
ああ、そう言えば。
俺が浮気をしたなんて嘘をエドウィージュに吹き込んだティファニーとかいう女魔法使いは、魔法師団から追い出してやった。
ついでに、王女に虚言を吐いて泣かせたって国王に告げ口して、一年ほど修道院での下働きの刑に処してやった。
エドウィージュはあきれていたが、消し炭にしなかっただけ手加減してやったってものだ。
国王の告げ口の際にはレーヌも加勢したせいで、修道院送りにするのにはさほど手間もかからなかった。というかびっくりするほどあっさりだ。国王夫妻以下は、本当にエドウィージュを溺愛している。
……ま、王族への虚言は充分に罪だからな。別に、無理矢理罪を捏造したわけじゃない。
ティファニーは泣いて謝ったが、もちろんそんなことで許す俺でも国王夫妻以下でもなかった。
エドウィージュに会わせて直接謝罪させようかとも思ったんだが、会った時にティファニーが泣き落としをはじめたら優しい彼女があっさり許しそうな気がしたのでやめた。
そうそう、ダヴィド爺が俺の薔薇の監視機能を無効化した件について文句を言いに行ったら、爺のやつ「そういうのをストーカーって言うんじゃ」なんて言いやがった。
さすがにちょっとショックを受けたから、薔薇の監視機能については今後考えよう。
「シャルルシャルル」
つんつんと袖を引っ張られたから見下ろせば、エドウィージュがにこにこと笑っている。
「あのね、シャルルの作ったマドレーヌが、とっても美味しいから食べたいの。今日お休みでしょ? 作ってくれる?」
……あーくそ、可愛いなぁ。
こんな可愛い顔で可愛いことを言われて、ダメだなんて言えるだろうか。
我慢できなくなってちんまい体をぎゅーっと抱きしめると、エドウィージュがくすくすと楽しそうに笑う。
そんな俺たちに生意気な妖精猫が。
「けっ!」
不貞腐れたような声で、鳴いた。
お読みいただきありがとうございました!
また続きや番外編を書きたい気持ちはありますが…ひとまず、これにて完結となります。
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