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籠の鳥王女は愛されたいので好きにすることにした  作者: 狭山ひびき
籠の鳥王女と魔法使い

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12/21

浮気の一報が届きました 1

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 季節が巡って、春。

 シャルルを北の国境の砦の防衛強化の任務に見送って、十か月が経つ。

 春生まれのわたしは一つ年を取り十九歳になった。

 シャルルが賜った王都のサティ侯爵家のタウンハウスは真新しく、シャルルからわたしが好きにしていいと言われていたので、内装とか庭とかに口出しさせてもらった。


 ……だって、お引越ししたばっかりのときは、家具も最低限だけだし、庭も芝が敷いてある以外は四阿がポツンとあるだけで、とっても寂しかったんだもの。


 侯爵の身分をもらったばかりのシャルルは忙しくて、王都の邸は最低限の使用人を置くだけであとは放置していたみたいよ。

 お引越ししたら邸からシャルルの匂いがするのかしら~なんて妄想していたわたしはがっかりしたわ。だって、シャルルってばこのお邸で三日くらいしかすごしていなかったらしいもの。そんなんじゃどこからもシャルルの匂いはしないわよ。


 ……それに、すんごいたくさんの薔薇があったから、たとえほんの少しシャルルの匂いが残っていても全部薔薇にかき消されたわ。


 シャルルが北に旅立った翌日にお引越ししたわたしは、玄関をくぐって唖然とした。

 もらった花束と同じ薔薇が玄関ホールにたくさん飾られていたからだ。


 しかもそれだけではない。

 ダイニングやサロン、わたしの部屋にも同じ薔薇がたくさん飾られていた。

 感激のあまり目を潤ませたわたしの横でレーヌは「うわー」と引いていたけど、すっごく嬉しかったわ!


 だからすぐさまダヴィドおじいちゃんに出張をお願いして、邸中の薔薇に永久保存の魔法をかけてもらったの。

 ダヴィドおじいちゃんは……。


『ほっほ~! あんの小僧はまたまた。よしよし、くだらん魔法はわしが消し去って、永久保存の魔法をかけてやろう』


 とよくわからないことを言って、邸中の薔薇を永久保存してくれたわ。

 だからあのたくさんの薔薇はまだ全部綺麗なまま残っているんだけど、レーヌがさすがにこれはドン引きものだからといって、玄関やダイニング、サロンとわたしの部屋にあった薔薇は小分けにして全部の部屋に少しずつ移動した。


 その後、シャルルの代わりに邸を管理していた執事のデリクと他の使用人たち、レーヌ、そしてジェラルドと共に、わたしはお邸に少しずつ手を加えて、華やかだけど落ち着きのある雰囲気に変えて見たの。

 庭にも木を植えて季節の花を植えて、ダヴィドおじいちゃんに頼んで魔道具を組み込んだ永久循環式の噴水も作ってもらったわ。

 わたしが手を加えるたびにダヴィドおじいちゃんってば「あの陰湿小僧がこんなキラキラしい邸に住むんかぃ! わっはっは!」なんて笑っていたわね。まさか、陰湿小僧ってシャルルのことじゃあないわよね、おじいちゃん?


「ねえレーヌ、あと二か月もすればシャルルは帰って来るわよね?」


 今日は日差しが心地いいので、わたしは庭の四阿でレーヌとジェラルドとともにティータイムを楽しんでいる。


「ええ、その予定です。今のところ北が攻めて来る気配はなさそうですからね。……帰ってきたら絶対文句を言ってやりますよあの陰険シャルル・サティ……!」

「またその話?」


 邸の中にはシャルルがたくさんの魔道具を準備してくれていてとっても快適だ。だけど一つだけ、わたしは気にならないけれどレーヌにはものすごく許せないらしい「不便」があった。

 レーヌが忌々しそうに舌打ちする横で、ジェラルドも厳しい顔をしている。彼も彼でこの「不便」が許せないらしい。


「もう、別にわたしは不便に感じてないわよ? お父様たちも会いに来てくれるし、ちょっと邸の外に出られないことくらい、別に……」

「いーえ、エドウィージュ様! これは軟禁ですよ。軟禁‼」

「軟禁じゃないわよ。お父様たちにもちゃんと会えるじゃないの」

「そういう問題じゃないんですよっ! だって、敷地内からエドウィージュ様を出られなくする魔法がかかっているなんて、常軌を逸しています‼」


 そうなのである。

 実はシャルル、この邸全体に魔法をかけていたみたいで、わたしは邸と庭は自由に歩き回れるのだけど、そこから外へは出られないのだ。

 ダヴィドおじいちゃんも「またあの小僧は」とぶつぶつ言っていたけれど、わたしが「気にしないし愛されているみたいでいい気分だわ」なんて言ったものだから、魔法はそのままになっている。

 レーヌなんかは今すぐダヴィドおじいちゃんに頼んで解いてもらえって言うんだけど、不便じゃないし、おじいちゃんにも言ったように愛されている感じがするからこのままでいいと思うの。あと二か月だし。


 ……お父様たちも「ふざけるなー!」って怒っていたけど、何も部屋の中に監禁されているわけじゃないんだからいいと思うの。


 わたしは王女であんまり自由に外出もできなかったから、外に遊びに行けないのは今にはじまったことではないもの。お城暮らしと変わらないわ。


 ……なのに、みんな怒って、アデライドお姉様なんてまた「決闘だっ!」て騒ぎ出すし。そのたびに止めるお義兄様がとっても大変そうだわ。


 アデライドお姉様は現在第二子を妊娠中だ。そんな状態で剣を振り回そうとしたものだから、お姉様の夫のラウルお義兄様が真っ青になっていたものね。


「レーヌもみんなも、これはシャルルの愛の形なんだから怒らないでほしいわ。男性って好きな女性を囲いたいものでしょう?」

「失礼ながらエドウィージュ様。俺は女性を閉じ込める趣味はありません」

「ジェラルドまで! 別に閉じ込められているわけじゃないわよ」


 なんとかシャルルへの怒りを解いてもらおうと頑張っていると、執事のデリクが来客を告げに来た。


「エドウィージュ様。魔法師団の一部の魔法使いが本日王都に帰還したようで、ティファニー様とおっしゃる魔法使いが旦那様のお手紙をお持ちになっています」

「すぐにサロンへお通ししてちょうだい‼」


 なんてこと! 一部の魔法使いたちが先に帰るなんて知らなかったわ!

 手紙ってことはシャルルはまだなんでしょうけど、一足先にお手紙が得られるなんてこんな幸運があっていいのかしら⁉

 デリクが一礼して去っていくと、わたしは二人ににっこりと微笑んだ。


「ね? 愛されているわ‼」


 だけど、二人から返って来たのは深いため息。


 どうしてかしら?





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