表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/64

獣王国『奴隷?』

 一つ目の街は周辺の中心であったのも納得の大きさで最大の特徴は街の中心に大木があり、その上にも建物が広がっている所だろう。

 その大木の下には広場があり、その周りを取り囲む様に街が広がっている。

 「あれはなんだろう?」

 広場に馬車が集まっている。

 「旅の人かい?あれは市だよ。」

 歩きながら呟いたのに通りすがりのおばちゃんが教えてくれた。

 「市ですか?お店も多いのに。」

 「領主の一族がへまをして交代するようなのだけど、次の領主様が来るまで商人の仕入れも安定しない様だし、それに領主の一族が処分して行った物なんかを買い集めているのも居る様だよ。覗いてみたら珍しい物があるかもよ。」

 「教えていただいてありがとうございます。」

 「気にしなくて良いさ。あえて言うなら私はそこの宿屋の女将なのだけど・・・。」

 「折角なのですが、今日中に次の街に行こうかと思っています。」

 「まぁまだ日も登りきっていないしね。機会があったらよろしくね。」

 「はい。」

 どうせ街の反対側に抜けるには広場を通る必要があるし、市を覗きながら街を抜けよう。途中お弁当を食べて昼過ぎに街を出れば良いだろう。

 市は規模の大きいバザーの様な感じで、野菜の横で武器が売っていたり、屋台が出ていたりするし、同じ商人が野菜と武器を売っていたりもする。何でも有りらしい。

 スープの屋台があったので聞いてみると、スープを買うならばテーブルと椅子を貸してくれるらしいので注文して弁当を広げる。そもそも屋台で食べ物を買った客相手に考えた商売との事。サンドウィッチと果物なので歩きながらも食べられる様になっているけれど座って食べられるならこしたことがない。

 トマトのスープでサンドウィッチを食べていると目の前の店から人が出ていた。

 「前の店はなんでしょうか?」

 昼前の所為か、他に客が居なくて暇そうな店員に聞いてみる。

 「あー。」

 「怪しい物でも売っているのですか?」

 何処か言いにくそうだし、他の店と違って布で囲われていて何が売っているのかもわからない。

 「店だけど物は売ってない。」

 謎掛けか?

 「別に方に触れる物がある訳じゃないし、気になったらな覗いてみてくれ。」

 自分の目で確認しろという事らしい。

 スープを飲み干して食器を返す。ゴミも捨ててくれるらしいので助かる。

 「まいどありー。」

 声に見送られてそのまま目の前の店へ。

 布の隙間から覗き込むと直に店員らしき男に声をかけられた。

 初めて見るけど豚の獣人だろうか?耳には毛が無いし鼻にも特徴がある。

 「お客様は旅人でございますか?」

 「ああ。駄目ですか?」

 獣人でもないし旅装でもある。獣王国の人専用の店なのだろうか。でも先程の店員は覗いてみれ場よいと言っていたからそんな事は無いとは思うけど・・。

 一歩店の中に入ってもまだ何を取り扱っているかはわからない。内側にも布が張られている為にテーブルと椅子、それと目の前の獣人に似た店員が後二人居るだけだ。

 「そんな事はございません。ただ、契約上紹介できない商品もありますので。」

 「持ち出しが禁止でもされているのですか?」

 「ご理解がお早くて助かります。お客様の中には無茶を言うお方もおられまして。お気を悪くされたのでしたら申し訳ございません。」

 「そんなことはないですけど・・・。」

 獣王国で持ち出し禁止の禁制品が何かあっただろうか?麻薬のたぐいは持ち出しどころか所持も販売も禁止されているはずだし・・・・。

 「それではご案内致しましょう。私どもは一週間程ここに滞在する予定ですので、いつでもおいで下さい。」

 僕の疑問は解消されないままに店員の案内が始まる。

 それに見ても居ないのにもう一度来ることが前提とは謎過ぎる。

 一枚布を抜けると外から見るよりも大きな広場が確保されており、更に布で区切られている。その中の一幕に案内されると二つの馬車の荷台。

 その前には腕や足を鎖で繋がれた女の獣人。

 「これは?」

 「ここは若い女を集めております。勿論夜のお相手も大丈夫な物ばかりです。」

 「つまりここは娼館の様な所だと?」

 それにしては環境が悪い。

 「いえ、男性がよければあちらに・・・。」

 「ちょっと待って下さい。」

 「それとも処女をお望みですか?それならば少しお値段が上がりますがこちらでございます。」

 男の口調はまるで人身売買のようだ。

 「奴隷・・・・?」

 僕の口から出た言葉に新しい部屋に居た女の子のうち何人かがビクッと肩を動かした。

 「お客様、お言葉が悪い。単なる職業斡旋の場でございますよ。」

 そう奴隷は麻薬と同じくらいに各国で禁止されている。

 「職業斡旋?」

 「はい。ご存知でしょうが、様々な理由で身の保障がされない者達に職業を斡旋しているのですよ。一人一人契約の値段や必要となる労働条件が異なりますが、最短で一日から契約を行っております。勿論契約の魔法の値段もそこに含まれておりますし、こちらが発行する保証書をお持ちであれば同業者が引き取りに参ります。」

 男の口は良く回るが、聞けば聞く程奴隷との違いが曖昧になる。

 「初めて知ったのだけど、奴隷とは違うものなのですか?」

 「そうでございましたか。奴隷と違うのは、あくまでも物ではなく人である為、殺してしまうのは法度でございます。それに先程申し上げました各人の労働条件に違反した場合にも罰が与えられます。」

 身を落とした条件によってその待遇こそ変わるけど、あくまでも契約主に使える者であるとのことだけど、どうなのだろう?

 「また妊娠させてしまった場合はお客様の子という事になりますのであらかじめご了承下さい。まぁ一晩やそこいらでしたらこちらで処理させていただきますが。」

 つまり先程のまた来るというのは、一日だけ契約して夜のお供をしてもらったら翌日またここに連れて来るということで、実際は娼婦の役目ということだ。

 「処女の場合は落差が激しいですが、娘達は納得しているのでお客様次第でございますよ。」

 ニチャリと音が聞こえて来るその笑い顔は決して好感度があがらない。

 「納得なんかしていないもん!」

 声がした方を見ると三人程の女の子が繋がれている。

 「あの娘は?」

 声を挙げたのはその真ん中に居る娘。

 「あの娘達はその・・・。」

 「何か問題が?」

 「例の犯罪者の関係者でございます。」

 「例のとは領主の一件かな?」

 「ご存知でしたか。そうです。処罰により身寄りが無くなった者と金銭が必要でこちらに来た者、いずれも街の代表から保証を得てございます。」

 「お兄ちゃんは犯罪者じゃない!」

 「だまれ!」

 近くに居た店員が鞭を振るう。

 「止めさせてくれ。」

 「申し訳ございません。おい。」

 「すいません。お前も黙っておけよ。」

 一言で鞭は止んだけど目では何も言うなと睨んでいる。

 「あの娘達と話しがしたい。」

 「よろしいのですか?所詮小娘の戯言でございますが・・・。」

 「くどい。」

 「申し訳ございません。」

 こういう時は強く言うに限る。

 先程とは違う場所で待っていると女の子達がやって来た。

 「少し席を外してもらえるか?」

 「それは・・?」

 「僕が逃げるとでも?」

 「いえ・・・。」

 「心配ならこれを預けておきます。」

 財布を取り出して渡す。高額の貨幣を入れておいた方なので三人分払っても間に合うはずだ。

 「これはこれは。これほどのお気遣いされましてはこちらも席を外しましょう。それにこれは返しておきます。」

 僕が持っている金額を知って上客だと思ったのか店員は娘達を連れて来た男も連れて外へ出て行った。

 「お金持ちなのね。それで私達三人とも買い上げるつもりなの?」

 「いや、そんなつもりはないよ。」

 「それでは私達のうち誰か一人という事でしょうか?」

 「私はお料理とかも出来ます。」

 「胸は私が一番大きいですわ。」

 「あのそんなに僕に売り込まなくても・・・。」

 先程まで大人しかった二人が店員の居なくなった後に妙に売り込んで来る。

 「若くてお金持ちなご主人様にお使えしたいのです。」

 「ご主人様は貴族なのですわよね?」

 「誤解している様だから言っておくけど僕は貴族でもないただの学生だから。」

 「ただの学生があの様な金額を持っている訳がありませんわ。」

 「まぁ信じる信じないは自由だけど、僕が聞きたかったのは先程の事情。」

 特に先程、言葉をあげた女の子。見覚えのある姿をしている。

 「私は開拓地に送られるよりもこちらでチャンスを狙う事にしましたの。私の場合は一晩だけだととても高いですわよ。」

 つまり、一晩いくらの娼婦ではなく、従者なり愛人なりとして生活の面倒を見ろという事か。

 「私は前のご主人様達が連れて行ってはくれなかったので・・・。少しでも稼いだら何処かに落ち着いて仕事を探したいと思っています。」

 「私はお兄ちゃんが連れて行かれて途方に暮れていたらここに連れて来られたのよ。」

 やっぱりか。

 「お兄ちゃんは捕まったの?」

 「そうよ!でもお兄ちゃんは犯罪者なんかじゃないわ。だって私を助けてくれたもの!」

 「そうか・・・。」

 「そんな顔しなくても良いわ。どうせ誰も信じてくれないのだし・・・。」

 今まで話しても誰も信じてくれなかったのか。

 「信じるよ。」

 「嘘よ・・・。」

 「お兄さんの名前はドウ・オレイ。君と同じ白虎の獣人だ。」

 「そうだけど、学園で知り合いだったの?」

 「君を助けた場面に僕も居たんだけど・・。覚えていないか。」

 あの時は直に別れてしまったし、彼女はお兄さんしか見ていなかった気もする。

 「なに?知り合いだったの?なら私に目はないかぁー。」

 「シオちゃん良かったね。」

 二人は会話からして自分の出番は無いと察したらしい。それにしても妹さんの名前はウニちゃんね・・・。

 知りたかった事は確認できたので店員さんを呼ぶ。

 女の子達は連れて行かれて商談の時間だ。

 「それでいかがでしたでしょう。」

 「白虎の・・。」

 「シオでございますか。彼女の場合一晩ですと金貨二枚。一週間ですと金貨五枚でございます。また長期の場合は一週間ごとに本人に銀貨一枚を渡して下さい。その場合の契約期間は任意、衣食住の保障は主人であるお客様の責任になります。それと他の娘も同時にお引き取りの場合はイリアが一晩の場合金貨十枚・・・。」

 「ちょっと待って下さい。」

 凄い勢いで話し始められたので驚いて聞いてしまったのだけど、言いたい事はそうではない。

 「なんでしょう?」

 「シオの兄ですが犯罪者ではない恐れがあります。」

 「しかし、きちんと街からですね・・。」

 「僕は獣王にドウの罪についての事実確認するつもりですが、その際に別の人に受け渡されていたら色々と困りますよね?お互いに。」

 「しかしですね。」

 確かに街の証明は本物なのかもしれない。

 彼が言いよどむのはわかるけど、ここで引いたら何も始まらない。

 「もし無実の罪であり、その疑いが晴れたときに関わった人は当然処罰されるでしょう。そこに街の証明を発行していた人が居たらどうでしょう?」

 「つまり、シオの言っている事が本当だと?」

 「さぁ?それは獣王が判断する事ですが、もし無実であった場合困るのは街の役人だけでは無いでしょう?」

 「私共が悪事に加担していると?」

 「いえ。ただそれを判断するのは私達ではないという事です。」

 「ふぅ。」

 目の前に座った男が息を深く吐き、何か考える様に黙る。

 「えん罪の可能性があり、それを知りつつ彼女らを扱うのは王の覚えは良く無いでしょうな。」

 「そうかもしれません。」

 「王は我らの商いを疎んでおられるようです。」

 それは初めて聞いた。

 「この商売が奴隷商から始まった事もありますし、既に禁止している他の国からは批判サルル事もあります。その為、他国の様に娼婦は娼館に。労働契約は各種のギルドにと変わって行くでしょう。」

 「随分と確信を得ていますね。」

 「そうですね、国を回り新しくできるギルドの存在を考えるとそれくらいは考えます。直に全てが変わるとは思いませんが、十年は待たずに我らに何らかの命が下されるでしょう。」

 「営業停止とかでしょうか。」

 「それもありえますね。若しくは仕事変更命令ですか。今の獣王はお優しい方なのでこちらの方が可能性は高いと思いますよ。仕事を失った我らが路頭に迷って盗賊等に落ち、治安の悪化なんて可能性まで考える程には賢くもありますし。」

 「評価は良いのですね。」

 てっきり仕事を潰そうとする王を嫌っていると思ったけれど、そのような感じはしない。

 「今代の王になってから国は良くなっていると思いますしね。まぁ、そんな訳で王の覚えが悪いのということは私達にとって困る訳ですが、お客様は私達に何をお求めですか?」

 「王の確認が採れるまで、彼女を保護しておいていただきたい。」

 「やはりそうなりますか・・・・。」

 既に予想していたみたいだけど、承知はしてくれなさそうだ。

 「えん罪であったとしたらお金も戻って来るので問題は無いのでは?」

 「お金の問題ではないのです。彼女等を引き取った時のお金、生活費、日々過ぎて行くのにお金はかかりますが、それは信用に比べた場合対した事ではありません。」

 何が言いたいのだろう?

 「信用が大事であるならば問題ないのでは?」

 「ええ。お客様や国に対する信用であれば問題ありませんが、問題は他の商品達との関係です。多少の差こそあれ基本的には平等に取り扱い、それぞれの用途に応じた客を斡旋する。それがある意味私達と商品達の信頼関係なのです。」

 「シオを特別扱いするのはまずいと?」

 「はい。」

 「ここに来る理由が違ったのだからという事にはなりませんか?数日だけなのですし。」

 「そうは思ってくれないでしょうね。それに数日とおっしゃられますが、王都に行き、面会して帰って来るまでに私達は移動をしなければなりません。これは同業者内でも決まっている事ですし、街との取り決めでもあります。」

 シオちゃん一人の為にここに留まる訳にはいかないのか。

 「そこで私から提案がございます。」

 「なんですか?」

 「私共が引き取った金額でお客様に引き取っていただきたい。そうすれば一緒に首都に行くことが出来るでしょうし、金額云々については私が喋らなければ済みますから。」

 「それだと万が一えん罪でなかった場合に損をするのではないですか?」

 僕は確信しているけれど、彼は確信には至っていないはず。むしろ荒唐無稽な話しだと一笑だにしてもおかしく無いのに。

 「普通ならば疑ってかかるのでしょうけど、シオの兄の名前を知っていて、獣王との面会が可能であるという事を考えると信じた方が良さそうだと、商人の勘が言っているのですよ。」

 「全て嘘かもしれませんよ。」

 「だとしたら私の見る目が無かったという事ですよ。それでは手続きを済ませてしまいましょうか。」

 彼の中で話しは決まったらしい。

 外に声をかけると書類が運ばれて来る。

 「こちらが、街から引き取った時の書類。そしてこちらがお客様に引き渡す為の書類でございます。」

 確かめるとシオ達がここに来たのは5日前。

 引き渡しの金額も同じだ。

 「今まで過ごした金額を加算しなくて良いのですか?」

 「数日でしたし、大した額ではございませんし、同じ金額である方が問題も無いでしょう。」

 「ではお言葉に甘えます。」

 「いえいえ。」

 引き渡しの紙にサインをする。お金は引き取りと同時に払うらしい。

 「それにしても・・。」

 「なんでございましょう?」

 「この金額だと儲は少ないのではないですか?」

 「そうですね。彼女達が入ったばかりだという事も有りますが、あまり儲かる仕事ではないですね。」

 引き取りの金額は一人頭金貨二枚。長期雇用の際に店に払う金額が金貨五枚だったから儲は金貨三枚。毎日誰かが雇われて行くなんてことはないだろうし、生活費や移動費なんかを考えると割の良い仕事ではなさそうだ。

 「ならなんでこの仕事を?」

 「外の国の人から見れば奴隷商の様にうつるのかもしれませんが、私達も好き好んでこのような商売をしている訳では無いのです。この仕事が国の仕組みとして機能する必要があると思っているからできるのですよ。そうでなければ好んで鞭は打ちませんし、人が人として真っ当に生きられるならそれにこした事はないのですから。」

 そう言った男の顔は今日初めて見せる疲れた顔だった。

 「出来たら王にも伝えて起きます。」

 知っているかもしれないけれど、本人の言葉を届ける事が無意味だとは思わない。

 「いえ、思わぬ愚痴を聞かせてしまいました。同業者の中には娘達に手をつけ、生活費を過分に加算し、いつまでも離れさせない様な輩もいますし・・・。」

 「シオちゃんはここに引き取られて良かったのかもしれませんね。」

 「トラ様にもお会いする事が出来ましたしね。」

 書類にサインをしたので僕の名前がわかったのだろうけど、僕は男の名前を知らない。

 「こちらはモスター商会とうかがいましたが、貴方の名前を聞かせてもらっても構いませんか?」

 王に報告する際にも彼の名前は必要となるだろう。

 「勿論ですとも。私はモスター商会代表ウサワ・モスターと申します。またご縁がありました際には御贔屓にして下さい。」

 「こちらこそお願いします。」

 「それではこちらに。」

 今まで居た場所から移動して最初に入って来た場所に連れて行かれると、男は奥へと引っ込みしばらくしてシオちゃん達を連れてきた。

 「あれ?」

 「どうかいたしましたか?」

 「なんで二人居るのでしょうか?」

 「先程サインなさったではありませんか。彼女達は同じ街から引き取りの要請がありました。それに、もし不備があるとしたら一人だけとは限らないのでこうして二人共引き取っていただくのです。」

 「そうでしたか。」

 シオちゃんのことしか考えていなかったけど、もう一人の娘が一緒でも別に問題は無い。

 「そうなるともう一人の娘は良いのですか?」

 「イリアの場合は街こそ同じですが、自ら来た珍しいパターンですので問題は無いと思います。」

 服が引っ張られる。

 「ん?」

 そこには鎖が外されたシオちゃん。

 「でも彼女泣いていた。」

 「あー。」

 考えが甘かった。そりゃ自分で来たとはいえ、僕よりも小さい子供が体を売る覚悟をするってことはよっぽどのことだろう。泣くのも当然だ。

 そんな目で見ないで欲しい。

 「彼女も引き取りましょう。」

 「よろしいのですか?彼女の場合は・・。」

 イリアの場合は引き取り値というわけにはいかないのだろう。

 「構いません。契約解除の際に、独り立ちするのも構わないのですよね?」

 「勿論です。双方の話し合いで契約を解除する事も可能です。その際は契約書の破棄をお願いします。」

 結局三人分計金貨十五枚を支払い、お店を出た。

 自己紹介や今後の予定を話したい所だけど、先に宿を取ってしまおう。

 入ったのは先程のおばちゃんの宿。

 「いらっしゃい。泊まりにする事にしたのかい。」

 僕の後ろに居る三人に目をやるおばちゃん。

 「三人たぁ顔に似合わず剛毅だが、あいにくとそこまででかいベッドは無いよ。精々ダブルまでさ。」

 「おそらく考えていることとは違いますよ。三人部屋と一人部屋をお願いしたいのですがありますか?」

 「あら。違うのかい?あいにくと三人部屋はないね。四人部屋ならあるけどどうする?」

 一人分多いけど個室を四つ取るよりは安いだろう。

 「私達は大部屋でも構いませんが・・・。」

 シオちゃんはそう言うけれど、若い娘を大部屋に入れておくのは不安が残る。

 「では四人部屋でお願いします。お風呂はありますか?」

 「この時間だと個人風呂しか無いがそれでいいかい?」

 「はい。」

 「一時間銅貨二枚。今なら空いているから直に入れるよ。」

 「では三時間で。」

 「毎度有り。」

 まず彼女達をお風呂に案内してもらう。その間におばちゃんに頼んで女性者の下着やタオルも頼む。

 彼女達は替えの服は持っていないし、下着も二組しかないらしい。

 勝って来たらお風呂に運んでおいてもらう事にすると、部屋に戻ってチビ姉ちゃんに報告する。

 一日経っていないので通信できるか不安だったけれど、無事に出来た。

 今日あった事を報告する。話しを聞いたチビ姉ちゃんがライラさんに連絡を取ってくれるらしいので任せる。

 次の連絡は明日の朝。

 それだけ決めると、魔力の充電が間に合わないと困るので早々に通信を終えることにする。

 

 彼女達がお風呂から出て来ると僕も入る。彼女達は思ったよりも早く出て来たので、僕はゆっくりと。まだ二時間近くある。

 もう今日は移動もしないのでゆっくりと過ごせば良いだろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ