獣王国『一日目夜』
お風呂から出て部屋へと戻る。
一応ノックをすると返事があったので部屋の中へ。
「お待たせ。」
なんと声をかけて良いのか判らなかったので適当に言ってみた。
「いえ、私達にもお風呂を使わせていただきありがとうございます。それに下着やタオルまで・・。」
シオちゃんが代表してお礼を言うと残った二人もそれぞれお礼を言ってくる。
「服までは手が回らなかったけどね。」
「充分です。」
お風呂に入って少しはリラックスで来たのか三人とも店を出た時のような顔の固さは無い。
「それで私達はどうなるのでしょうか。」
尋ねて来たのはイリア。まだ若干固いかな。
「まずは自己紹介をしておこうか。僕はトラ・イグ。キクノ学園で学生をしている。今は休みを利用して旅行中。」
「私はイリア・ティックス。見ての通り虎の獣人よ。」
「私はノサキです。名字はありません。猫の獣人です。」
それにシオちゃん。三人の話しをそれぞれ聞く。というよりも勝手に喋り始めた。
まずはイリア。
ティックスと名前に聞き覚えがあったので予想しては居たが、学園で騒ぎを起こしたハスキールの親戚らしい。と言っても面識は略無いに等しく親族の集まりで「居たかも?」くらいの認識らしい。
ハスキールは本家でイリアは分家の分家も良い所で、権力にはほとんど縁がなかったが一族ではあるので処分は免れなかった。ただ、当主夫妻である両親以外はティックス家を捨てれば自由だったらしいのだけど両親とそれに付いて行く兄の為にお金を用意しようとイリアはこの道を選んだ。ティックスの姓を捨てなかったのは、貴族であった過去を出した方が高く売れると踏んだからという理由と、両親や兄弟との縁を残しておきたかったからなんだとか。
開拓にはお金が必要だけれど、家で蓄えて置いたお金など微々たるものであったし、そもそも家財道具等の処分は認められず国に差し押さえられた為に身一つで行き、与えられた領地を開拓しなくては行けないらしい。勿論多少の援助は出るがあくまでも多少である。
その為、彼女の金額は他の二人と比べて高かった。月々のお金も両親に送るつもりらしい。
次にノサキ。
彼女はとある老夫婦に使えていたが、その老夫婦も今回のあおりを食らって開拓地に。その原因は娘がティックス家に嫁いだ為。彼等に処分は下されなかったが、娘の為に行くことを決意したらしい。長年付き従っていた人達が共に行こうとする中で、ノサキは付いて行く事を認められなかった。同じ様な人は何人かいたらしいけどいずれも若い人達だったらしいので、若い子を巻き込む必要は無いと考えたのだと思う。
それでも実家がある人は実家に行くことになったけれど、天涯孤独のみであるノサキは行く当ても無く、グズグズとしているうちに仲間もいなくなり、いつの間にか街役に連れられてシオと一緒にモスター商会へ。
話しを聞く限り、街役が怪しすぎる。
最後にシオ。
彼女は今まで話していた事とかわりない。
国の命令で学園から一旦帰って来たので、昔住んでいた家で日々を過ごしていた所、ドウが王都に連れて行かれ、一人になったシオに街役がドウは犯罪者であり、その唯一の家族であるシオもまた同罪。その為、身柄を一時街役が預かると言う話しだったのだけど、やはりノサキと一緒にモスター商会に身柄を移されていた。
モスターには相手が街だろうがきちんと身柄を確認すべきだと絶対に言ってやろう。
三人がある程度話し終わる頃には夕焼けが始まったので、少し早いけれど夕食にする。
食事は宿の一階。外に出ても良かったのだけど、夜の主役である酒場に三人を連れて行きたくは無かったし、良い臭いが漂っていたので。
臭いに負けずに味もおいしかった。特に果物と一緒に煮込んだお肉が絶品だった。今度ロクサーヌさんに教えてあげようと思う。
恐らくサービスなのだろう。最後に出て来たお菓子に三人は喜んでいた。どうも「知り合いの妹を見つけたから引き取った」と口を滑らせた為におばちゃんからの好感度が急上昇したらしい。
後で知ったのだけど、手を出そうとしないのも好感度上昇のポイントでもあったみたいだ。
夕食を食べ終わって部屋に戻ると今後についての話し会いをする。
細かい事は別にしてまずは王都を目指す。行程はこの街から北へ、次の街からは西へ行く街道が出ているのでそれを行けば王都へと辿り着く。これは宿のおばちゃんに聞いた話しだし、シオちゃん達三人娘も証言してくれたのであっているはずだ。
王都でライラさんに会うつもりだという僕の言は信じられていなかったけどまぁ良い。
いつの間にかただのお喋りとなっていたので三人を部屋に残しておばちゃんの所へ。明日のお弁当を頼んでおくためである。ついでに明日からの馬車移動についても教えてもらった。
街間は基本的に駅馬車が出ているので各街で乗り継げばそう辛い行程にはならないとのこと。僕の場合は身体強化して走った方が早いけれど、三人を連れて移動するなら馬車の方が良さそうだ。駅馬車の他は、自分で買って馬車を用意するか、商人にお金を払って乗らせてもらう。若しくは客同士でお金を出し合って馬車を用意する方法があるらしい。
買うのにはちょっと興味があるけれど、直に買えるものでもないらしいので今回は見送りだ。最後にモスター商会への手紙をお願いして部屋に戻る。手紙の内容はさっき思った忠告と僕達の今後の予定。
戻るとお喋りは終わりらしい。静かになっている。それでもノックしてから部屋に入る。
「お帰りなさいませ。」
「はい?」
口調が変わり過ぎだろう。
「どういうつもり?」
「どうもこうも覚悟は出来ていますわ。」
イリアは自分のベッドではなく僕のベッドに座っている。所謂三つ指ついてで迎えている状態だ。
「私達は止めたのですけど・・・。」
「私が雇われた理由は聞きましたわ。そしていかような理由にせよ雇われたからには仕事をしますわ。」
イリアの服装は下着。
その仕事の内容は言わなくてもわかる。
「とりあえず服を着て下さい。」
「よろしいですの?私家事については自信ありませんけど、この中では一番成長した体をもっていると思います・・・。」
「いいから。そう言う気はないから。」
子供を性の対象には見ることはできないし、そもそも二人の目があるここでそのような行為をするつもりだったのだろうか・・・。
「明日からは移動の日々だし疲れを残さない様にさっさと寝る事。仕事については考えておくからさ。」
今夜の所は大人しく寝てもらう。
なんか最後にどっと疲れた。一杯だけ下でお酒をもらって寝よう。
再び部屋に戻った時には皆大人しくベッドに入っていた。
言う事は聞いてくれる様だ。
明日からの事を考えつつ僕もベッドに横になると、徐々に夢の世界が近づいて来た。




